いつもの道を一本外れる勇気

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先日、行きつけのカフェから帰る時に、いつもと違う道から帰ってみた。

というのも、少しでも坂道を避けたいという僕の怠惰さを背景として、行きと帰りで少し違うルートを通ることが定番となっているのだ。カフェに行くときには「いつもの道」なのだが、帰りに同じ道を通ったことはなかった。

すると、何度も通っている道のはずなのに、僕の目には全く違う景色に映った。振り返ると何度も通った「いつもの道」が広がっているのに、だ。

夜薄暗かったこともあり、「同じなのになにか違う」感覚が強く残り、まるで不思議の国に迷い込んだような奇妙な気分になった。

同時に、こんな変わらない日常にすら新鮮な気持ちにさせてくれる何かがあるんだ、と嬉しくもあった。

そこで、どうすれば今日のような気持ちをまた味わえるのだろう、と考えてみた。

同じことの繰り返し

社会人になると、日々の生活は同じことの繰り返しになりがちだ。

同じ時間に同じ場所に行き、同じ道を通って帰ってくる。

変わらない日常。それはそれで味わい深いと思うし、その中で起こる、もしくは起こってしまう変化でも十分に人生は豊かだと思う。

繰り返される予測できる未来を過ごせるというのは、本当に幸せなことだ。イレギュラーな出来事を心配せずに暮らせるのは、何かに脅かされず安心して暮らせている証拠だ。

しかし、残念ながら僕は「いつもと違う」感を欲してしまう人間のようだ。変化を求める性質を持って生まれてきてしまったようだ。

そのくせ、なんとなく面倒で動かなかったが故に退屈してしまうこともある。そんなに変化を求めているなら動けばいいじゃないか、と思うのだが、時には「面倒」が勝つのだ。

なんて扱いにくい人間なんだ。

そこで冒頭の話を参考に考えてみると、僕のような人間にとっては、いつもの道を一本外れることこそが人生をより豊かにする第一歩だと思うのだ。

帰り道を一本外れてみよう

人間というのはよく出来ていて、泥酔状態ですら駅から家に帰ってくることができる。これは、何度も繰り返し歩いてきた道が長期記憶に定着しているからだ。

アルコールで海馬の活動がストップしてもなお、帰り道は忘れない。その分、いつもの道というのは刺激にならない。ただの背景ノイズでしかない。

でも、いつもより手前で曲がってみたらどうだろうか。

今まで気づかなかった素敵なカフェを見つけるかもしれない。タイプな見た目の人とすれ違うかもしれない。もちろん、なれない道でベンチに気づかずに躓くかもしれない。

いいことばかりでも、悪いことばかりでもない。しかし、どれも「いつもの道」から外れたことで起きることだ。

少しだけ勇気を出して一本外れてみる。寄り道してみる。ほんのちょっと変化が、僕らの日常に彩りを与えてくれる。

思えば僕の人生も、全然想定通りじゃない巡り合わせによって大きく変わって来た気がする。「とりあえず試してみるか」くらいの軽い気持ちで動いたことで出会えた人やものごとに救われてばかりだ。

予想外な出来事があったおかげでハリがある日々を過ごせているし、大きな分岐点になるような選択肢に出会えたように思うのだ。

イレギュラーさを人生に組み込むために

いつも通りから外れるというのは、どんなに些細なことでも意外と勇気がいるものだ。

しかし、イレギュラーな選択を選ぶことができれば、頭の中にある予測できる世界から飛び出すことができる。「いつもどおり」の外に出た瞬間、自分の世界は目まぐるしく変化し、広がっていく。

意識的にならないと、こういった変化を日々の中に取り込むことは難しい。だから、僕はイレギュラーな選択が取れるような仕組みを作ることが大切なのではないかと考えている。

例えば

金曜日は遠回りして家に帰ってみる
月に1回は知らないレストランに訪れてみる
一年にひとつは新しい趣味に手を付けてみる

といったマイルールをつくるのだ。仕組みとして組み込んでしまえば、偶然が起きることを待つだけの日々ではなくなる。少なくとも能動的に、自分から「知らないなにか」に出会いにいける。

不確実性を意図的に人生に組み込んでいくことで、予想だにしない何かを体験できるかもしれない。僕はその可能性に賭けてみたい。

まとめ

変わらない日々を過ごせること自体は特権だ。それはそれで素敵なことだ。そもそも変化がないというのは安定していることの裏返しで、とても幸せなことだとも思う。

そんな中で変化を求めることは怖いし面倒だ。こんなことを書いている僕だって、安心しきったいつもの道を変えるのが嫌な日のほうが多いだろう。刺激は多すぎてもしんどい。

ただ少なくとも、刺激を求めずにはいられない日が突然訪れてしまう僕のような人間にとっては、イレギュラーな出来事は人生を豊かにしてくれる大切な瞬間なのだ。

「いつもどおり」から外れたとき、頭の中で繰り返されていた無害なループは、他者と、そして見たことのない景色と繋がって、大きな大きな輪となる。

ちょっとした寄り道も、いつもと違う帰り道も、その小さな小さな第一歩だ。

今後の研究活動と美味しいご飯に使わせていただきます!