キャリアをスタートできない人たち #センセイを捨ててみる。
私の関心事は「教師のキャリア」ですが、今回の記事は「キャリア以前」の問題です。キャリアをスタートできない教師たちは、どんな現状にあるんでしょうか。
教師が「現在だけに視野を限定して」働かざるを得ない状況に置かれていると感じるケースを、東畑氏は2つ挙げています。
ひとつは、東京都のスクールカウンセラー(SC)の雇い止め。
ふたつめは、私立学校教師の多くが1年任期で働いているという現状。
彼らは「キャリアをスタートできない人たち」と言えます。
公立高校の教員として採用された私にとって、このような問題は「問題」として扱われたことがありませんでした。
私は3回目の受験でようやく新採用になりました。1回目の不合格の際には塾の室長を、2回目の不合格時には定時制高校の常勤講師を務め、「そのうちなんとかなるだろう」くらいに考えていました。
簡単に言うと、「何度も受ければそのうち拾ってもらえるだろう」という気持ちでいたんです。それくらい、「制度」を信じていられました。
ところが、今はそうなってはいません。
「つながりの確かさは、触れ合おうと苦慮した時間の総量と比例する」。私も、この言葉を信じてきた人間の一人です。「苦慮した時間」が少なくてもうまくやれる人はいるでしょうが、私は違います。悩み続けた挙句、「教師は向いていないかもしれない」と思ったことが、何度もあります。
もし生徒たちとつながりを持つ期間が1年しかなかった場合、私を含めた多くの教員が途方に暮れることでしょう。
1年で「結果」を出さなくちゃならない
1年しかないなら、ミスは許されない
短期間での「わかりやすい」目標達成と、チャレンジを恐れ、当たり障りなく仕事を進める姿勢。教師たちは翼を折られてしまいます。
今までの教員経験を振り返ってみても、いくつか思い当たることがあります。かつてプライベートで大きな悩みを抱えていて、誰にも相談できない時がありました。私は電源を入れっぱなしの携帯電話を胸ポケットに入れて、笑顔を作って教壇に立ちました。
たぶん、少なくない教師たちが、同じような状況に置かれた経験を持つと思います。「今、私は教師として生徒の前に立っている」。それが当時の私を何とか奮い立たせているすべてでした。
教師は不安を抱えていても、生徒の前では教師です。
そして、不安要素が少なければ、人は本来の力を発揮できます。
教師が常に不安を抱えていれば、生徒の不安に寄り添うことは不可能です。
生徒に授業をしていて、いつも思うことがあります。
(彼らが心の底から「何とかしたい」と思っていることは何だろう)
教員を20年くらい続けてきて、思ったことがあります。それは、「個々の生徒の根本的な悩みが解決に向かえば、その他の問題は容易に収束するだろう」ということです。
「懸案」は、さまざまでしょう。虐待、ヤングケアラー、いじめ、依存症、進路、成績、容姿など、思春期特有のあらゆる問題が想像されます。
生徒にとって、勉強や部活動、ルールの順守は、すべて「その他の問題」です。だからこそ、一人一人の生徒が「どうしても何とかしたい」と願う課題が改善方向に向かえば、「その他の問題」は必然的に収束の対象になるということです。
子どもは、未来が現在と陸続きであると信じられるとき、初めて「そのこと」について考えてみようと思うわけです。
では、教師は?
もちろん、子どもと同じです。今年と同様に来年、その次と雇用が見込めるからこそ、経済的心理的に安定し、心に平安がもたらされる。
ちょっと想像してみてください。リスク回避や現実逃避をしている教師たちの姿を。その時、学校は未来を見せる場ではなく、ひたすら現実に甘んじることを強いる場になり果ててしまいます。もちろん、教師たちは自ら望んでそうしているわけではありません。
そして、教師も生徒も、未来を描けない中で笑顔のないまま生きていく。
これが基本です。
教師の不安を払拭しなければ、生徒は学校教育の恩恵を受け取ることはできません。この点をきちんと理解しないまま、新たな教育政策を打ち出したり、働き方改革を叫んだりしても無意味です。
「自分の持てる力をめいっぱい使って、生徒の成長に貢献しよう」
教師たちがそう思えるのは、「最低限のすべて」が整った、その先です。
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思いつきと勢いだけで書いている私ですが、 あなたが読んでくれて、とっても嬉しいです!