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短歌

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「滄」同人季刊誌用短歌
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我が犬の飼ひならさるる哀しさよ

放たれてなほ 人のあとをつく

内視鏡(endoscopy)の単語出づをり大学にわずか2週を教えし後に

我が家の階段に満つタマネギの香りのありて日曜日過ぐ

あなたのこと「人間じゃない」と言ったとき異界にいるという意味だった…

地下の駅寄るべなくいる人々に神よ今送りたまえせめて心慰む楽曲を

火炎瓶の英訳を知る 平時ならカクテルの名と思ひしものを

平和なる朝のリレーの突然に絶たるる地球の右肩あたり

「平和な朝のリレー」by 谷川俊太郎



溶けゆきし雪のはかなさ 足裏のあの冷たさが早や懐かしき

雪の日に「しろたえ」の珈琲飲みしこと歌に詠まんと外に出でたり

春よりのシラバス組みつ「しろたえ」にケーキを食す雪の午後かな

雪積もる傘を持ちつつ並ぶ人今日もなほあり白きケーキに

赤目人に今よりならんか坂登りゆるりと過ぐる医院への道

白目なら誰もが白だ差別なく そうだ作ろう!白目協会

待合室少女漫画を読み耽る名が呼ばるるまで「ちょっと江戸まで」

滑らかに白き顎を伸ばしをり三和土の隅に死にたるトカゲ

真っ直ぐに四肢を伸ばして息絶ゆるトカゲの孤独胸をつきたり

閉店の間際の書店に「日蝕」を求めて今日のすくいとしたる

岩の名の如く響けりゼラニウム夫が英語で発音をすれば

午前二時働きたる人今をらん
コンビニまでの三十秒の距離