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スペインと宮崎で経験を積んだ、2年目のワイン造り

東京・福岡でリリースイベントを実施

前回の投稿(6月19日)の前後に、東京と福岡でワインのリリースイベントを開催しました。

6月4日は、東京で人気のイタリア料理店「o/sio」さんでコラボイベントをさせていただきました。
初めてのイベントなのに、あのo/sioさんで開催させていただけるとは、どれほど恵まれているのか!

SHINDO WINESはまだ種類が少ないため、私たちと縁のある醸造家仲間にそれぞれのワインを持ってきてもらいました。

ニュージーランドからは、SHINDO WINESのアドバイザーであるアレックス・クレイグヘッドさん、「ハーミット・ラム」のテオ・コールズさん、そして山形から「グレープリパブリック」の矢野陽之さんにご参加いただきました。

左から矢野さん、テオさん、アレックスさん

当日は20名を超えるお客様と一緒に、o/sioさんのお料理とワインを楽しみました。
このようなイベントは初めてだったため、いろいろと足りないことがあったと思いますが、みなさんからは「楽しかった、また来たい!」とのコメントを頂き、ホッとしました。

その後、東京から福岡に戻って6月13日に筑後市のアジアン料理レストラン「AROI」さんでもイベントを行わせていただきました。
アドバイザーのアレックスさんは、イベントに合わせて福岡に来てくださいました。

筑後市の業務用酒販店「株式会社蔵人」の早川正祐さんによるワインセレクションのもと、SHINDO WINESからは発売中の3種とイベント限定ワイン「EXPT.02 Pione」を出品。
アレックスさんがニュージーランドから持参した新作や、彼の仲間のワインなど、30本以上ものワインが集まるイベントになりました。

AROIのJoshさんが作るお料理がどれもSHINDO WINESとマッチしており、私たちのコンセプトである「夏に最適なワイン」と、常夏のタイ料理の相性が抜群だったのがとてもうれしかったです。
改めて、九州・福岡で造るワインのユニークさを実感できました。

平日の夜にもかかわらず、30名様以上の方にご参加をいただき、言葉にならないほどの盛り上がりをみせた楽しい一晩になりました。

今回、東京・福岡でのイベントを企画していただいた酒販店様、素敵な料理を作ってサービスしてくださったお店のスタッフ様、その他ご協力を頂いた方々、本当にありがとうございました。
また次回のイベントが決まりましたら告知しますので、ぜひお越しください!


集中豪雨に見舞われた、自社園地の現在

すでに報道などでご存知の方もいらっしゃると思いますが、この7月に九州北部を襲った記録的な豪雨により、自社の園地がある福岡県うきは市にも甚大な被害が生じました。
被害に遭われた皆様には心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早く回復なさいますようお祈りいたします。

当社の園地も2度にわたる豪雨で浸かってしまいましたが、ブドウは無事に育っています。

連日の気温が30度を超え、最近は園地で蛇を見ることが多くなりました。
園地でのエコシステムがうまく形成されているのかなと思い、うれしくなります。
ただ、ブドウの房に蛇が巻き付いている姿は、腰を抜かすほどビビりますが……。

また、昨年からピオーネを育てはじめました。
今年は有機での栽培を目指しており、現在のところ農薬なども有機認定されたもののみ使用しております。
昨年はビニールのカバーを付けるタイミングが遅く、黒とう病やベト病が発生してしまいましたが、今年は春先に対応したことで、比較的うまくコントロールできております。

ブドウもたわわに実ってきており(すこし実をつけすぎですが……)このまま無事に果実が色づくヴェレゾン期を迎えることを願っています。

ヴェレゾン期を迎えたブドウ

ワインのリリースと園地での作業の両立は、想像のはるか上を行くハードな仕事量ですが、一日の終わりに園地から見える夕焼けは息を飲む美しさです。


宮崎とスペイン、2カ国での経験

さて、前回の投稿では初年度(2021年)のワイン造りについてお伝えしました。

初めてのワイン造りを終えた後、次年度の収穫を迎えるまでの間に多くの方とお会いして、栽培や醸造について深く学ばせていただきました。

特に、宮崎県の「香月ワインズ」の香月克公さんと、アドバイザーをお願いしているアレックスさんには栽培や醸造のテクニックのみならず、ワイン醸造家としての生き方や考え方を学びました。

同じ九州で無農薬ブドウを栽培し、ナチュラルワインを造っている香月さんのワイナリーには毎月のように通わせていただき、九州で無農薬・有機でブドウを育てる難しさとやりがいを肌で感じました。

また、生産量が前年の3倍以上に増えた2022年の醸造をなんとかこなせたのも、アレックスさんが的確なアドバイスを下さったおかげです。
香月さんとアレックスさんがいなければ、昨年のワインは造れなかったといっても過言ではありません。

また、2022年の9月には、アレックスさんの厚意でスペインで一緒にワインを造らせていただきました。
日本とはまったく異なる環境でのワイン造りを通して、現場での応用力を学び、醸造についての知識の幅も広がりました。

また、アレックスさんや仲間の醸造家たちと日々ワインを飲み交わすことで、味覚や嗅覚の感知能力を鍛えられたのはもちろんのこと、今後目指すべきクオリティやチャレンジしたい醸造方法が見えてきました。

これらの経験は、自分にとって大きな自信につながりました。


ブドウの糖度と酸度の難しい関係

さて、ここからは2022年に製造した「UKIHA BUBBLES 2022」の話をします。

2022年は春から夏にかけて晴れの日が続き、比較的天候に恵まれたシーズンでしたが、暑さが際立つ1年でした。
そのため、昼夜の気温差が少ないとブドウの糖度が上がりづらく、理想的な糖度になるまで待つと、逆にワインに重要なブドウの酸度が落ちてしまいます。

ブドウの糖度を上げたいけど、酸度もしっかり欲しい……。
そんな、ワインメイカーの永遠のジレンマに直面しました。

2022年のキャンベルアーリーの収穫は、前年よりも数日遅い8月16日と23日に行いました。
天気予報は晴れだったものの、実際は昨年同様、2年連続で雨の中収穫を行いました。

肝心の糖度については、目標の16度以上には届かず、14度弱でした。もう少し欲しいところですが、酸度の落ち具合や病気・自然災害などでの減収を回避するために、全体の8割を8月16日に収穫し、1週間後に残りを収穫しました。

ちなみに、果実などに含まれる糖度の含有量を表す値を「BRIX」といいます。
BRIXの数値 X 0.55が、ワインのおおよそのアルコール度数になります。

概して、アルコール度数が10%以上あれば微生物的にも酒質が安定しやすいといわれるため、18度のBRIX値がブドウを収穫するタイミングの目安となります。
(キャンベルアーリーは糖度が高くないブドウのため、16度が目標でした)

キャンベルアーリーのほかにも、一部自社園地で収穫した減農薬の巨峰もブレンドしております。
巨峰はキャンベルアーリーと混醸をせず、別々のタンクで発酵を行いました。


2年目の取り組みで、きれいな微発砲ワインが完成!

この2種のブドウを冷蔵庫で一晩冷やし、翌日メンブレンプレス機で3時間をかけて、ゆっくりプレスをしました。

プレスしたての新鮮な果汁はチラー付きのタンクに入れて温度を下げ、翌日に滓引きを行い、スターターを入れて発酵を開始しました。

2021年の「UKIHA BUBBLES」との大きな違いは、発酵期間中の温度と発酵タンクの種類です。

2021年は「ホットクック」と呼ばれる自然まかせの発酵を進めたため、発酵温度が30度を超えていましたが、2022年はチラー付きのステンレスタンクで低温(13-18度)でコントロールしました。
発酵終了後には数週間ほど滓と一緒に静置し、その後滓引きを行いました。

最後に、キャンベルアーリーと巨峰をブレンドしたタンクに、別の発酵中の巨峰のもろみをブレンドして瓶詰を行いました。

発酵中のもろみを使用することで、瓶内二次発酵の際に、必要な糖度と元気な酵母菌が追加されます。
このテクニックを初めて用いることで、きれいな微発砲のワインに仕上がりました。


UKIHA BUBBLES 2022

  • アルコール分:8度

  • ブドウ:キャンベルアーリー、巨峰(ともに福岡県うきは市産、自社ブドウを一部使用)

  • 野生酵母使用、亜硫酸無添加、無濾過、無補糖、無補酸

UKIHA BUBBLES 2022は、2021年と比べてよりきれいな酸味を表現することができました。
いやらしい甘さもなく、泡も一粒が小さく繊細でとても心地よいです。
香りはキャンベルアーリーならではの「グレープ感」がしっかりとしており、よりフルーティーでフレッシュな仕上がりになりました。

前年のヴィンテージに比べて、より「夏に適した」ワインになった印象です。
ぜひこの夏、ぐびぐび飲んじゃってください。

長々とした文章になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の記事では「奇跡のワイン」と私が呼んでいる、ASAHA WHITEについてお伝えします。


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