さて。まさかのビザは不要という事実に拍子抜けしたまま、入国審査に臨んだため、正直何を聞かれたかさっぱり覚えていない。しかし、スムーズに終えられたのは間違いない。

入国審査を終えると、大きなエスカレーターを下り、バゲージクレームエリアがある地上階へ降りる。

エスカレーターを降りながら、天井が高く、大きく吹き抜けたバゲージクレームエリアを見渡すことができた。うん、やはり清潔さがにじみ出ている空港だなと感じる。

我々は常に低予算で旅行する貧乏トラベラーのため、スーツケース等預けなくてはいけないサイズの荷物は、一切持たない。LCC航空会社は、預け荷物に高い追加料金を上乗せしてくるからだ。その為、今回も6日間という日数の旅行でありながら、2人とも荷物は今も背負っているリュックだけである。

というわけで、用もないバゲージクレームエリアは足早に通り過ぎる。バゲージクレームエリアを出る直前、ATMを見つけたため、現金ヨルダン・ディナールを引き出しておく。ヨルダンは、基本的に現金主義とのこと。
（今回宿泊するアンマン、ペトラ、ワディラムのホテルはすべて現地払いで且つ現金払いとのことだった。）
アンマン市内でもATMは見つけられるとは思うが、まずは空港から市内への足に必要だった。

現金を引き出し、アライバルエリアへ抜ける。

私は、人々がそれぞれ自身の愛する相手の到着を今か今かと待ち構えているこのエリアが好きだ。（まぁ業務でお迎えにきているドライバーさんもいるけど…。）花束を持つ人、手作りのボードを掲げている人。今回我々をわざわざ迎えに来てくれる人はいないことは知っているのに、何だかこの人達に温かく迎えられているような幸せな勘違いをしてしまうのだ。

ふと左手をみると、見慣れたカフェが見えた。スターバックスである。

見慣れた大手コーヒーチェーンを見つけたことからの安心感からか、ついアイスラテでも飲もうかと欲が出たが、いやいやお金の無駄遣いはよそうと我に返る。しかし"You Are Here Mugs"シリーズのヨルダンverは抜け目なくチェックしておく。ヨルダン・ディナールが奇跡的に余ったら買っちゃおうかなと、パートナーのSには内緒でほくそ笑む。さぁ、その結果はいかに。

空港の建物を出ると、目の前にチケットカウンターのようなものが二つ、見えた。一つは『TAXI』、もう一つは『AIRPORT SHUTTLE』と書いてあり、大変分かりやすく、有り難い。

我々は、空港から市内へはエアポートシャトルを使おうと事前に決めていた。というのも、エアポートシャトルの停留所の一つである「7th Circle」から、徒歩15分ほどで宿泊地にたどり着けそうだったからである。

迷わず、エアポートシャトルの方のチケットカウンターに赴き、おじさんに2名分をお願いする。疲れているのか、眠いのか、あまり覇気のないおじさん。しかし、プカプカと煙草を吸っている。大分煙そうだけど、大丈夫だろうかという我々の心配をよそに、おじさんはエアポートシャトルバスのチケットをくれた。
(因みにチケットは二人で6.6JOD/約1200円)
次のバスは30分後だそうで、出発10分前にまた来てくれとのことだった。空港建物内に戻り、ベンチで休憩する。先ほどのスターバックス横にあるトイレに入ると、清掃員の女性の方がとてもフレンドリーだった。こういう接し方をされると、やはり嬉しいし、安心する。

さて。バスの出発15分前。

こういったバス・電車の出発時刻系に対し、大ッ変心配性である私は、もう少し休みたいであろうSに、もう戻ってみようと説得する。

先ほどのチケットカウンターには3組ほど列ができていた。視線を少し先に移す。大きな長距離観光バスが見えた。「あ、あれに乗るんかね〜。」なんて話をしてる内に、そのバスは一瞬で去って行った。「あらら。」と笑いながら、周りを見渡すと、なんだか小さいバンが目に入った。

そのバンはあまりにも小さく、エアポートシャトルというよりは、幼稚園の送迎バスのようなこぢんまりさを感じた。

「え…まさか…？」と思っていると、旅行者らしき人たちがそのバンの前で待っているのが見えたので、きっとその幼稚園バス…じゃなくて、そのバンがエアポートシャトルなのであろうと察した。

近づいて、「これがエアポートシャトル？」と確認したいが、誰もドライバーもしくはスタッフと分かる様なチョッキ等を身につけておらず、躊躇う。二、三歩ぐらい下がって様子を伺っている我々に、「エアポートシャトルだよ」と教えてくれたのは、赤いポロシャツを着た青年だった。全く同じポロシャツを着た女性がすぐ隣にいた為、「ペアルックで旅行かな？」と思ったが、そのポロシャツが飲食店の制服なのだと気づいた。つまり彼らはこのバンに乗って通勤しているというわけだ。

空港スタッフと談笑していたオジチャンが、思い出したように「乗っていいよ」と皆を促す。特に"チョッキ"等は着ていない普通のオジチャンに見えるが、皆従う。小さいバンはあっという間に満席になった。スーツケースは、助手席の後の小さいスペースにかろうじて積み重ねてゆく。

チケット確認が車内で行われている最中、更に二人の女性(旅行者と思われる)がバンに入ろうとやって来た。運転手と思われる人物が満席だと伝えると、二人組の内の一人が、「WHAT!?」と怒り心頭。

「私たちは一番最初にチケットを買ったのよ！30分待った挙げ句、乗れないなんてありえない！！更に30分待てというの！？」

と訴えていた。
確かに、チケットを見ると番号らしきものがふられており、また、空港内で我々のすぐ側で彼女たちもベンチに座って待っている様子を目にしたため、彼女たちが最初に買ったというのは嘘ではないのだろう。

彼女たちの背中に燃え上がる炎が見えたのか、運転手（仮）が慌てて席をどうにかしようと模索する。「僕の席に乗りなよ」と申し出た紳士がいたが、最後列の長椅子にかろうじてスペースがあった為、彼女たちも乗り込むことができた。

やはり海外は、引き下がらず、主張することが大事。

ヨルダン旅行記1日目③に続きます。