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わたしの推し

澤田拓人は、笑顔でペルソナを作る。
本郷恵は、笑顔でこころの欠片を見せる。
ふたりの笑顔が画面のむこうに届けるものは、
真逆。

「会わなきゃいけない人には、ぜったい会えるんじゃない?」

そう。澤田拓人と本郷恵は、「会わなきゃいけない人」。拓人の奥に触れられるのは、恵だけ。

2014年に放送されたドラマ『僕のいた時間』の主人公でALS患者の澤田拓人を演じたのは、三浦春馬さん。ヒロインで介護職員の本郷恵を演じたのは、多部未華子さん。オリンピックと同じ頻度で共演し、3作でカップル役を務めたふたりは仕事上のベストパートナー。繊細で丁寧な仕事ぶりは共演者も制作陣も巻き込んで、作品の純度を押し上げた。およそ1時間の芸術を11話ぶんも味わえる至福をまた、10年後のいま追体験している。

三浦春馬さんが演じると、どの役も職人さんが手仕事で何日もかけて作る伝統工芸品のよう。余計なものは削ぎ落とされてるのに独特の輝きを放ち、ひとつとして同じではない。そんな春馬さんの演じる拓人を、多部未華子さんはきっちり受け止める。

拓人は、全身の筋肉が動かせなくなる難病にかかる。左手だけ力が入らない状態から、徐々に麻痺が広がっていくのを春馬さんは持ち前の身体性で見事に表現し、大きくなるばかりの不安は仮面の奥にしまい込む。そんな拓人に向き合う恵は、どこまでも健やかで、あったかい。

いつしか、ふたりの笑顔からわたしに同じものが伝わってくる。大好きな人といられる幸せと感謝。

『君に届け』の風早くんと爽子。『僕のいた時間』の澤田拓人と本郷恵。『アイネクライネナハトムジーク』の佐藤と紗季。3組とも全然違うカップルだけれど、三浦春馬という俳優の純度にはじめて気付かされた作品は、やはり忘れられない。

放送から10年経っても色褪せないドラマ、『僕のいた時間』。わたしにとって拓人と恵は永遠の推しカップルで、三浦春馬さんと多部未華子さんは永遠の推しバディだ。

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