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テレビの前で久しぶりに声を出して笑った日 『行列のできる法律相談所』 ジョイマン×明日海りお

私がその人を「ちゃんと」知ったのは、つい最近だ。
ちょうど1か月前。私は配信で、『エリザベート』(コンサートバージョンではあるが)という作品を観て、その魅力に心を奪われた。

『エリザベート』のプロローグの場面。ルキーニの「注目! 黄泉の帝王 トート閣下。またの名を、死」というセリフに続いてステージ中央に登場したその人は、黄泉の帝王というより黄泉の貴公子というほうがふさわしい、美形の色白な青年だった。

初見の『エリザベート』という作品のど真ん中にいた人。それが明日海りおさんだった。

プロローグでトートが歌い上げる「エリ~ザベェ~ト」に感じる、何とも言えない、ベルベットのような柔らかさと艶っぽさ。対して望海風斗さん演じるルキーニの「エリ~ザベェ~ト」に感じるのは、帆布のような頑丈さだ。

トートは「死」を具現化した存在なのだけれど、明日海さんの演じるトートは、この世のものとは思えない見た目の麗しさに加えて、力強く「最後のダンス」を歌い、破壊力抜群の「死ねばいい!」というセリフを放ち、シシィに振られまくったのち「愛のテーマ」で喜びを爆発させる激情の持ち主だ。だが、見た目も立ち居振る舞いもクールを装っている。

明日海りおさんは、トートの激しい感情を、歌の上手さと素晴らしいお芝居で、こちらに見せてくれた。そして私は、その激しさから充分すぎるほど感じた。「死」・トートが自由奔放なシシィに惚れ抜き、皇妃としてのしがらみから解放してやろうとする、愛の力を。

明日海りおさんの魅力

とまあ、そんな風に頭をハンマーで殴られたぐらいの強烈な出会い(正確には朝ドラ『おちょやん』で見ているが、朝ドラは観ているようで観ていないのである)だったもので、そこからいろいろ調べまわった。宝塚関連のグッズや円盤を販売しているキャトルレーヴのオンラインショップで、高いと思いつつもいくつかの公演の円盤を買い、iTunesでアルバムを買った。そして、ネットでわかる範囲のことは大体調べた。

5年半にわたって花組トップスターを務め上げたこと。宝塚での公演は毎回チケット入手困難になるほどの人気であったこと。大劇場公演の主演12作は平成以降で最多であること。『ポーの一族』で、実写版エドガーを演じられるのは1人だけだろうと称賛されたこと。

そして、舞台挨拶。
ガラコンサートの最後に判明したのだが、ステージに立ってお芝居をしている明日海さんからは、想像できない魅力にあふれていた。急にスイッチを切ったというか、ホワホワとした空気に包まれた感じの挨拶。あれ?これさっきトートやってたのと同じ人だよね?同じ服装だし??と思わずキョロキョロしてしまった。ライブ配信だから、周りには誰もいないのにもかかわらず。

ついさっきまでそこにいた、トート閣下はいったいどこへ行ってしまったのか。嘘のように柔らかい空気を身にまとった、なぜかしゃべるたびにカミカミの長髪で色白の美形の青年がひょっこりあらわれたのだ。後から分かったことだが、これが「いつもの明日海りお」であるらしい。

調べてみたら、トップスターでいる期間はだいたい3年ぐらいのようだから、5年半というのは長いほうだと言えるだろう。その間ずっと、舞台で演じた役とこのカーテンコールでの姿というギャップを、見せ続けたということか。それは人気が出るに違いない。在団中、めちゃくちゃ人気があったというのは、間違いなさそうだ。

すでに退団しておられるが、とんでもない人だったのだ。
宝塚音楽学校に入学できるだけでも、歌とダンスのエリートである。その中でもトップスターになりえるのは、歌やダンスのスキルに加え、何か特別なものを持っている人だけだと思う。
宝塚歌劇団出身者には、その「何か」を持ち合わせた、数々の伝説のスターがおいでになると思うが、明日海さんも確実にその中の一人だろう。

心をわしづかみにされたのも、必然だったのかもしれない。

偶然に導かれる

ちょっと半分意識を失ってトリップしかけながら、明日海りおさんのトートを脳内で再生し続けていたら、いつの間にか娘がドラマを観る時間になっていた。

『コントが始まる』。菅田将暉さん、神木隆之介さん、仲野太賀さん、有村架純さんらが出演しているドラマだ。豪華なメンバーだなと思いながら、内容は全然知らなかった。そもそも、地上波のテレビドラマを観る気があの夏以来だいぶ、失せているからだ。

そして、娘の観ていたそのドラマの片隅にいた、ファミレスの店長の顔に見覚えが・・・なんと、明日海さんだった。

トート閣下が、トート閣下が・・・ファミレスに降臨。
ああ、そうか。今は女優さんなんだものね。これが普通なのよね。と意識を元に戻すのが大変だった。

そのあと、遡ってこのドラマを追っかけ、今では週末が楽しみになっている。

そしてまあ、YouTubeでいろいろ調べたり、なんだりかんだりして、余計に沼にはまって、昨日、5/23を迎えたのである。

まさかのジョイマン

ジョイマンというお笑いコンビをご存じだろうか。
いわゆるリズムネタで一世を風靡したコンビである。

5/23の『行列のできる法律相談所』というバラエティ番組に、明日海りおさんが出演する。しかもジョイマンのリズムネタを披露するらしいと知ったのは、5/16の『行列のできる法律相談所』の予告映像だった。

「明日海~、ささみ~、りお、塩(キメ顔)」

って何それ? と驚愕して、とりあえず録画を設定した。

5/23放送の番組を観たら、
・明日海さんはジョイマンが大変お好きであること
・明日海さんの笑いのツボが変であること
・明日海さんはジョイマンとコラボしてリズムネタを披露したがっていたこと

が次々と明らかになり、それだけでも衝撃なのに、全力で

「Here we go! Come on!! Here we go! Come on!!」

と男役の発声で登場し、キレキレで踊る無茶苦茶カッコいい明日海りおさんが・・・世界一面白い芸人に見えた。

違法アップロードになってしまうので、ここにその姿を載せられないのが残念だが、あれはまあ・・・大変に衝撃的で、本当に面白くて、お腹を抱えて何度も笑ってしまった。

ちょびっとだけ、『行列のできる法律相談所』の公式Twitterから拝借する。全貌をお見せできないのが残念だ。

宝塚歌劇団時代は、歌とダンスと演技で観客を魅了するトップスターだったわけだけど、まさか地上波で披露する初めてのダンスが、ジョイマンとは。いやはや。

そして、一しきりネタ披露が終わった後、ジョイマン高木さんの「緊張 モンシロチョウ」に一人だけ「キャハっ」となる明日海りおさんが可愛すぎてまた笑った。

お腹を抱えて爆笑したのは、いつ以来?

爆笑して涙目になりながら、あれ?私、こんなに笑ったのいつ以来だっけ?と思った。2020年7月18日のあの日以来、お腹を抱えて爆笑したことなど、記憶になかった。

三浦春馬さんを追いかけて、ミュージカルを観まくって、たどり着いた宝塚の『エリザベート・ガラ・コンサート』で衝撃の出会いを果たした、明日海りおさん。私が公演チケットを取って、観に行って虜になるというごく普通の形で今年宝塚にハマっていたら、明日海さんと私の出会いは、どうなっていただろうか。

あるいは、「女優・明日海りお」の姿しか、知らなかったら?
『エリザベート』のトートも、『CASANOVA』のジャコモ・カサノヴァも、舞台挨拶で見せる姿も知らずに、『行列のできる法律相談所』を観ていたら?

たぶん、5/23にあんなにも爆笑することは、きっとなかった。
そもそも、『行列のできる法律相談所』を観てすらいなかったかもしれない。

三浦春馬さんのことで心に受けた傷を抱えたまま、彼の伝えようとしたものを感じようと、もがいていた。そしたら、「それはそれとして、とにかく楽しんでってよ! 最高のパフォーマンス見せるから!」と明日海さんに癒してもらえた気がする。この恩は、しばらく忘れられそうにない。

もちろんこれは、私の一方的な思い込みである。だけど、私は明日海さんからもらったものをずっと忘れないし、大切にしていこうと思っている。

次の舞台は、『マドモアゼル・モーツァルト』だそうだ。チケットは取れるだろうか。あらゆるチケットサービスを駆使して、何回か観に行けたら嬉しいなと思っている。

10月は、『マドモアゼル・モーツァルト』に捧げる月にしたい。他の公演は絶対に取らないようにしようと、心に誓うのだった。

今日、仕事を始める前にまた、録画した明日海りお×ジョイマンのコラボを何度か観た。何回観ても、カッコいいし、可愛いし、面白い。

何か疲れたり落ち込んだりしたときは、ジョイマンとコラボする明日海さんを思い出して、思い切り笑おうと思う。

ジョイマンがいてくれて、明日海りおさんがいてくれて、本当に良かった。

心からのありがとうを贈りたい。

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