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2024/4/5 奪う春

穏やかだ。信じられないくらいに。いろんなことがうまくいって、「きっと大丈夫」みたいな予感。春の空気が膨らむみたいに、気持ちが大きくなっている気がする。

自分が信用できなくてベランダやホームの端を避けながら生きていた時期が、なんだか愛おしくみえて、最低だって思った。

忘れないように、と言いながら本をつくってきて、完成した途端にそれが消えてしまったみたい。忘れたくなかったもの、何か大切なものを切り捨ててしまったかもしれない。

ばらばら。心と体が、ではなく、心と私が。
よい時とわるい時の波がなければあの本はつくれなくて、けれどその波こそが自分であると思うのは、危ないとわかっているつもりだった。

ぼろぼろになりたいわけじゃない。わたしもみんなもそんなふうに苦しまずにいてほしくて、でもそれが無理だから本をつくって、そうやって生きていきたかった。

幸せになるのが怖いわけでもない。ずっと泣いていたいんじゃない。でも、幸せにならずに、ずっと泣いていることでしか、もう自分でいる方法がわからない。

大丈夫、と言い聞かせている。何が? 何が大丈夫なんだろう。どうせずっとこのまま穏やかな気持ちではいられないこと? どうせまたすぐにだめになって、蹲ることしかできない時間がやってくること? そんなの大丈夫じゃない。

けれど、「何も残らないよ」って言ったときに、それがどうしようもない私の本心なのだとわかって、恐ろしかった。

ああ、だからずっと冬にいたかったのに、とか。
最悪だ。

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