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『視点揺れまくり』問題――書き仕事の日々20

『ロクサリーヌ夜話』を書く直前(2010年)、編集さんに言われました。

 「はるなの書く話は、登場人物の『視点が揺れる』」

情けないことに、最初、言われた意味がよくわからなかった(汗)
いやいや(汗)どころではなく、本当にあせりました。
私は、物書きになるための基礎勉強のようなものをまったくしてきていないので、
物書きを続けるための『屋台骨』みたいなものが、かなり脆弱。
何かあると、たちまちぐらぐらします。
だから、とりあえずその場でいちいち真剣に考え、
場合によっては、修繕しなければなりません。

で、考えました。
なるほどなるほど。確かにはるなは、
その場に居る複数の登場人物の気持ちを、手当たり次第に書いています。
これが、視点が「揺れる」ということなのかな。
そうか、あんまりあっちこっちに視点が「揺れる」と、
読者さんによっては、読みにくいかもしれないなあ。
感情移入しにくいかもしれない。

次に考えたのは、
私の書くものは、なんでこんなに視点が「揺れる」のか?
視点が「揺れ」ていることにさえ気づかなかったのは、なぜ?

それは、おそらく私が、
いろんなジャンルの小説を、読んでいないせいだなあ。
本については、かなり好き嫌いが激しくて、多読家でもなく、
一人称の小説は、はっきりいって、とっても苦手。
物心ついてから、読んできた小説は、ほとんどすべてなんというか、
「視点揺れまくり」小説ばかり。
だから、視点があっちいったりこっちいったりするんだろうなあ。

(こんなところに司馬遼太郎先生の本を引っ張ってくるのは、本当におそれ多くて申し訳ないのですが、いつも手をのばせばすぐに届くところにあるので、どうぞどうぞお許しください)
たとえば、『竜馬がゆく』の一巻、竜馬とさな子が初めて手合わせする場面。太い字が原文です。

 竜馬は、内心、
(やっぱりできるなあ)
 と感心した。
 ――中略――
 さな子のほうも、――うんぬんかんぬん――いつもとはまったくちがう竜馬を発見した思いだった。
(こわい眼)
 思った瞬間、さな子のすきを見たのか、猛然と竜馬の竹刀が面上に落下した。

――数合パンパンと打ちあってから、三行あと――
(なるほど、乙女姉さんよりはるかに強い)

という感じで、龍馬の視点になったり、さな子さんの視点になったりの繰り返しです。
愛読してた『ダルタニャン物語』とか、怪盗リュパンのシリーズの多くもこんな感じ。視点いったりきたり。
逆に言うと、一人称の小説って、ほとんど読んでない(汗)

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「榛名しおりはこんなふうに二十数年書き仕事してきました」を、かっこつけずオープンに。何かが、少しでも、どなたかの書き仕事のヒントになってく…

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