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言葉は鋭利な刃物。むやみに振り回さないこと。

この二、三日、しきりに思い出すこと。

十数年前。SNSなんてまだなかった頃。
BBS(掲示板)というものを、個人のホームページに設置する人が多かった。
(みんながblogを使うようになってからは、コメント欄ができたのでBBSは必要なくなった)

私も、趣味のガーデニングのホームページで、誰でも自由に書き込めるBBS(掲示板)を長くやっていて、わいわい楽しく運営していた。
じゃあ、”榛名しおり”の公式ホームページでも、いっちょやってみるかと、BBSを開設。
読者のみなさんと、楽しいやりとりが始まると、それまで手紙を書いてくれていたみなさんも訪れてくれて、うれしかった。
誰か書き込みしてくれてるか、のぞくのが、毎日楽しかった。

でもある時、誰かが「こないだ出た榛名しおりの新刊はいまいちだった」みたいなネガティブな感想をそのBBSに書き込んだ。
すると、それに対する反論の書き込みが続いた。

私はね、
読んだ全員が気に入る作品なんて、ないと思う。
ネガティブな感想を持つ人もいて当然。
そして私は、楽しく自由に感想を言い合える場に私のBBSがなってほしかったし、長年読んでくれている読者さんが、こんどの新作を読んでどう思ったか、正直なところを知りたかった。
きっとネガティブな感想をくれた人も、そんな私の気持ちをくんでくれて、「いまいちでした」と、言葉を飾ることなく、正直に書いてくれたんだと思う。

でも、新作を気に入ってくれた人たちには、納得できなかった。
ここ(作家本人が運営するBBS)でネガティブなことを書くべきではない、という声も。

あれよあれよという間に、他の読者さんをも巻き込んで、「言い争い」はエスカレート。
管理人である私は、もちろんあわてて収めようとしたけれど、でも私が何か書き込むたび、必ず鋭い反論が書き込まれ、そしてその反論に対して私を擁護しようとするひとの書き込みが殺到。
「火に油を注ぐ」とはまさにこのこと。いつのまにか誹謗中傷合戦に。
あれこれやってみたけれど、いったん炎上したBBSは鎮まらない。

なによりこわかったのは、あっちもこっちも全員みんなが「正義感」にあふれてたこと。
「自分の正義」ってやつは、赤の他人が書いた五行や六行の文に、ころっと屈服なんかしない。
「誰かの正義」と「誰かの正義」が正面からぶつかりあう。
持てる武器は、「言葉」だけ。
となると、当然、言葉は、はげしくなる。まるで、石が弓矢になり、弓矢が鉄砲になり、機関銃になり、弾頭ミサイルになっていくように。
容赦ない言葉を、あったこともない相手めがけて、やつぎばやに繰り出すようになる。

あわてて私はBBSを削除した。

十数年たった今でも、私がいたらないせいで、みなさんにあんな思いをさせてしまったことを、申し訳なく思っています。
そして、いまだにこわいです。ネットの世界は本当にこわい。

たとえば、同じメンバーで、どこかちょっと広めの喫茶店みたいなところに集合して、お茶しながら、お互いの顔を見ながら、わいわいおしゃべりしていたならば。
正義と正義がぶつかりあい、お互いを傷つけ合う、あんな言い合いにまでなっただろうか。

ネットの世界では、言葉が武器にもなる。

だから、ネットに何か書き込む時は、本当に気をつけてます。
特に、正義感にかられて誰かに意見したくなった時は、いったん手を止め、相手の顔を想像してみること。
鋭利な刃物(=言葉)を、むやみやたらに、振り回してはならない。


    (トップの写真は、庭に咲いてくれた、忘れな草)


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ありがとうございます。サポートして下さったあなたのおごりでゆっくりお茶を頂きながら、次は何を書くか楽しく悩みたいと思います😊