140字の物語(Xポストより)
1 秋雨
秋雨が何日も降り続いている。
いつになったら止むのだろうか。
曇天を見上げて憂鬱な思いと共に、
声には出さずに心の中だけで呟き、溜息を落とした。
雨粒が、落ちては来ない。
そんなばかな。
雨降りなのに体も手も濡れてはいない。
気付けば世界はジェル状に変わっていた。
透明な粘膜に。
2 永別
やがては足跡だけになっていく。
記憶が消えていくのは雪が融けるよりも早い。
細雪が根雪に変わる前に、
新雪にその歩みを刻み込みながら、
背中が去って行く。
追い掛けることはしない。
忘れることもない。
そして、二度と道が交わることはない。
それぞれの道を歩むのだ。
それだけが分かる。
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。