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月の見える部屋

子どもと一緒にいつも寝ているのだけれど。
カーテンをしっかり閉め忘れた今夜、初めて気づいたこと。
それは、寝転んだ寝室から、月が窓越しによく見えるということだ。

これまで何年も住んでいて、こんなに美しく窓にすっぽり月が昇るのが見えることを、知らなかった。

いつも寝かしつけに必死で、寝かせたらやっと貴重なひとり時間でスマホをいじったり本を読んでいるし。
子供が街の灯りで起きないよう、ピッチリとカーテンをしめていたから。

カーテンを閉め忘れた窓の向こうに、つややかな月がよく見えた。
布団に身を任せ、月をみていると、不思議と穏やかな気持になる。
うちは月が昇る方向だけ、ラッキーなことにさえぎる建物がない。
だから、季節的な角度もあるのかもしれないが、今晩はよく月が見えた。

子供の頃は、実家のベランダから、ぼんやりと月を眺めた夜もあったけれど。
こんなに月をながめるのは、大人になってから久しぶり。

昔の人は、夜になると月明かりをたよりに過ごしたというけれど。
たしかに、街灯もランプもない時代、ロウソクの灯り以外では、月あかりは貴重なあかりだっただろう。

ひとりで、あるいは大事な人と、月をながめてすごすのは、とても幸せだったのではないだろうか。

こんなに娯楽やリラクゼーションのツールにあふれた現代に生きる私でも、今夜のような月あかりは、なにものにもまさる穏やかな気持ちにさせられる。

原始の森でまだ人の祖先が暮らしていた頃、このような月をみたことがあるような、そんな本能的な懐かしさを感じる。
その懐かしさは、ここちよい。

小さな窓の中で、月は天空をめざし徐々に見えない位置に昇っていった。
隣では、我が子の寝息がクゥクゥと聞こえる。
そして大晦日の今夜は、遠くで除夜の鐘も。

また明日の夜も、窓の向こうで月あかりはまってくれているだろうか。

毎日を生きる楽しみが、一つ増えた。
来年も良い年でありますように。

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