台湾有事と中・台・日の対応


1. 台湾統一は中国共産党の任務

ー台湾海峡に高まる関心
 ・ロシアのウクライナ侵攻後、台湾有事に世界の関心高まる
 ・ウクライナ戦争は対岸の火事ではない。明日の東アジアの問題かも(岸田首相)
 ・ロシアのウクライナ侵攻後、台湾有事に世界の関心高まる

ー台湾統一は中国共産党の人民への約束
・習近平、共産党創設100年記念式典、21.7.1.天安門楼上での演説
 「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは中国共産党の変わらぬ歴史的任務である。いかなる台湾独立の企みも断固として粉砕し、民族復興の未来を創造する。」
・米国は1972.9.米中国交回復に際して中国の主張する「一つの中国」の大原則を受け入れた。
・中国はその後も一貫して台湾を併合して祖国を統一し「一つの中国」を実現すると主張。
・22.6.12.中国魏鳳和(Wei Fenghe)国務委員兼国防相、シンガポールで開催されたアジア安保会議「台湾を中国から分離独立させようとする者があれば、中国は戦いを辞さない」「台湾独立の試みは断固として潰す」「いかなる犠牲を払っても最後まで戦う。中国の選択肢はそれしかない」と言明。

ー米中国交樹立と台湾関係法
・1972.9.ニクソン訪中をうけて1979.1.1.ジミーカーター大統領は中国と国交樹立。中華民国との国交は断絶。
・中華民国はそれまで国連の安保常任理事国だったが、その資格は剥奪され、PRCが常任理事国となった。
・米中国交樹立は台湾の未来が平和的に解決される期待を基礎としているが、米国の台湾防衛司令部と米軍の撤退が、東アジアでの軍事バランスの激変が懸念されるので、台湾を防衛するための軍事行動の選択肢として1979年「台湾関係法(TRA Taiwan Relations Act)が制定された。
・TRAによる台湾防衛は有事への軍事介入を確約しない「戦略的曖昧さ(Strategic Ambiguity)とされる。

ー中国(PRC)の飛躍的発展
・中国は1990年代から鄧小平の改革開放政策の下で経済的に飛躍的発展を遂げた。
・中国の最高指導者鄧小平は、1992.1.18.に北京から南に向け、湖北省、広東省、上海市などを約1ヶ月かけて視察し改革開放の加速を呼びかけた。
・中国経済を米欧など西側世界による対中投資に開放し、先進的な技術、資本、経営を導入。中国の安価で若い豊富な労働力と組み合わせて輸出産業を発展させ、輸出を起動力に中国経済を大きく発展させた。
・鄧小平は「韜光養晦(爪・才能を隠して内に力を蓄える)」主義で自制する姿勢を貫き、国際社会から一定の評価を得た。
・鄧小平の改革開放戦略により、中国はその後の20年間で、中国のGDPは世界の3%から15%に拡大した。

2. 台湾統一は世界強国への土台

ー大国主義と覇権の追求
・中国は2010年にGDPで日本を追い抜き世界第二の経済大国になったが、同時に、急激に軍備を強化し、経済と軍事面でアメリカに次ぐ世界大国になった。
・2012年に国家主席に就任した習近平は、それまでの鄧小平の「韜光養晦」思想を否定し、あからさまに大国主義を鮮明にした。
・2013.5. アメリカにオバマ大統領を訪ね、カリフォルニアで2日間8時間議論した際には、新型大国関係を打ち出してオバマ政権を当惑させた。
・その後、中国からユーラシア大陸を経て欧州にいたる「一帯一路」の壮大な世界投資PTを推進
・南シナ海の島々に領有権を主張、尖閣列島の実効支配を狙い、香港の一国二制度を形骸化させて民主化運動を弾圧・壊滅させ「台湾を併合による祖国統一」を声高に主張するようになった
・台湾独立は、中国は太平洋進出の道を閉ざし、世界強国(2049)への野望が絶たれることに。

ー現実味を帯びる台湾併合
・21.3.23.米インド太平洋(次期)司令官ジョン・アキリーノ氏、上院軍事委員会の公聴会で「台湾に対する中国の軍事力が最大の懸念」と述べた。
・中国は戦略的位置にあり、中国が台湾を支配した場合、航行の自由が制約され、世界貿易の2/3に影響が及ぶ可能性ありとした。前任者のデーヴィドソン司令官も3月の公聴会で、中国が6年以内に台湾に武力行使する危険性の高まりを指摘。
・アキリーノ氏は中国は米軍を地域から排除する能力を向上。多彩なミサイルを保有。第二列島線(東京→小笠原→グアム)内への米軍接近を阻止。核兵器装備も。想像より早い。
・台湾侵攻を見過ごせば地域のパートナーとして米国の信頼が失われる。民主主義の成功例とみなせる台湾を防衛できねば、インド太平洋地域の同盟国が有事の米国の存在意義に疑問?
・アジアの安保体制の根幹がゆらぐ危険。

ー日米首脳会談と共同声明
・2021.4.16.日米首脳会談、菅義偉首相とJoe Biden大統領、はじめての対面会談
・米側は周到な準備。Quad首脳会議、2+2初めての対面会議(日本で開催)中国脅威指摘
・東アジアでは米軍の優位が崩れつつある現実に強い警戒。日米協力の強化期待。
・アジア展開する中国戦闘機は米国の5倍。25年には8倍。戦闘艦艇、5倍→9倍。
・第一・第二列島線以西に敵対勢力入れないため、中国東海岸に1200基の中短ミサイル展開。
・共同声明:◉日米は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調。両岸問題の平和的解決めざす。 ◉日本は同盟と地域安保を強化するため自らの防衛力強化を決意。

ー岸田首相の防衛力強化コミット
・2022.5.23.首脳会談共同声明、「日本の防衛力を抜本的に強化するため防衛費の”相当な増額”を確保」と明記。予算化の前に国際公約は異例。GDP1%→2%(自民党提言)を念頭?

ーウクライナ戦争
・ウクライナ戦争は対岸の火事でない(岸田首相)、重大な先行例として注視(習近平)

3. ウクライナ戦争を注視する中国

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島田晴雄が世界情勢を語る「しまはる塾」でお伝えしている様々な事象を、さらに詳しくペーパーで解説します。次から次へと”玉手箱”を開いて参りま…

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