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記憶は心と同じじゃない|SF読書録#4「ニューロマンサー」

さとなおラボではじまった「#1000日チャレンジ」。
ついに4週目に突入しました。

私のチャレンジは「#SF読書録」というチャレンジです。

1.SF本(小説・漫画・ライトノベルなど)を1000日で1000冊読む
2.書評をnoteで「#SF読書録 」として1000日で150本書く


今週、読書録として書評を書くのはこちらの作品。

1986年に刊行されたこの作品。
「攻殻機動隊」や「ブレードランナー」などに影響を与えたと言われているサイバーパンクというジャンルの代表的な作品です。

とてもおもしろかった「虐殺器官」という作品を読んだ時に作者の伊藤計劃さんの著者インタビューで初めてSFを意識したのは「ニューロマンサー」と語っており、ルーツを辿るために読んでみました。

「これがSFか」と意識して読んだのは『ニューロマンサー』が初めてです。中2だったかなあ。
「虐殺器官」著者インタビュー より

ケイスという伝説的なハッカーが主人公で、なんと「千葉」からストーリーが始まります。さらにいきなり登場する「キリンビール」。これは思わず、縁を感じてしまいました。

ラッツがバー・カウンターの中にはいっていて、義手を単調に揺さぶりながら、トレイに並べたグラスにキリンの生を注いでいる。ケイスに眼をやってニヤッと笑った。
ーウィリアム ギブスン. ニューロマンサー 

出だしは順調で作品を読み進めていったのですが、、、

正直に言います。「めっちゃ読みにくい・・・」

漫画ばっかり読んでいた私にとってはカタカナ用語と漢字訳による独特の言い回しに苦戦しました。
こんな感じの言い回しがずっと続きます。

「電脳空間。日々さまざまな国の、何十億という正規の技師や、数学概念を学ぶ子供たちが経験している共感覚幻想──人間のコンピュータ・システムの全バンクから引き出したデータの視覚的再現。考えられない複雑さ。光箭が精神の、データの星群や星団の、非空間をさまよう。遠ざかる街の灯に似て──」
ーウィリアム ギブスン. ニューロマンサー 

「光箭(こうせん)」て・・・読めん・・・
ただ読み進めていくと今まで見てきてスキだったSF映画たちとリンクしていきます。

SF映画の中のネオンの極彩色や、鉄と配線が無造作に張り巡らされた都市で生きているロボットやアンドロイド、そして人間たちの生活が浮かんできます。

「ブレードランナー」、「マトリックス」、「攻殻機動隊」、「マイノリティ・リポート」・・・様々な映画と「ニューロマンサー」の世界がリンクし、言葉が繋がっていきます。
実際「仮想世界=マトリックス」「ジャックイン」など、わかる人はニヤつく表現が多数出てきます。

特に印象に残ったのは「冬寂(ウィンターミュート)」という、物語で非常に重要な人を意のままに操ろうとするAIが出てくるのですが、このAIが主人公のケイスと言い争っている中で出てきた一節。

「心は〝読む〟もんじゃない。いいか、あんたですら活字のパラダイムに毒されてる。読むのがやっとのあんたですら、な。おれは記憶に〝出入り〟することはできるけど、記憶は心と同じじゃない」
ーウィリアム ギブスン. ニューロマンサー 

「記憶」と「心」。脳の電気信号がつくりだす情報を「記憶」とするなら、「心」とはなんなのか?

SFの中で個人的にとても好きなテーマです。どんなに人を機械化しても最期に残るのは「心」である。というメッセージです。
そう、「ゴースト」というやつです。

やっぱり「心」に動かされてしまう。非論理的な選択も「心」によって選択できてしまう。そうでなきゃ、と思ってしまうのです。

だからこそ「心」に響くこと、を大事にしたいなと思っちゃうんですよね。
SFやっぱいいわSF。

ちょっと難解でハードな世界を描く作品ばかり読んでいるので、来週はほっこりする作品を読んでいきたいと思っています。

SFに感謝を込めて。

読んだ作品:22/1000 SF読書録:4/150


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