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『君と悪いことがしたい』1~2巻まで読んだ感想

週刊少年サンデーで連載中のラブコメ。
先月発売された2巻まで読了。購入動機は、まあ、表紙買い?
連載が始まった頃、サンデーを軽く立ち読みしてちらっと気になっていて、「ああそういや単行本出たんだな」と2月頃に1巻を手に取った。あとまあ、察しの通りおっぱいだな。健康的なタイプのおっぱいだわ。

◆真面目な感想

面白いんだけど、ちょっと不安は残るかなあって漫画。今回そこをがんばって言語化してみたい。

陰キャぼっち主人公・まもりちゃんがひょんなことで学校の問題児・藤くんと出会い、タイトル通り悪いことをしていき、やがて変わっていく青春ラブコメ漫画。コメディ要素はあるが、そこまで露骨なソレではない。かわいいアニメ的な絵柄だが、意外にも青春している。

敢えてかっこつけて言うなら影と勇気の青春漫画だろうか。
ネームドはこのメイン二人にもいるし、そいつらと絡むケースはあるのだが、この漫画は基本的に味方や友人と呼べるネームドがなかなかいない。いちおう2巻でライバル兼理解者のネームドが出てきたし、これから増えていくのかもしれない。そもそも悪いことをするので、味方として加担する奴がいるのがおかしいが。

それなのに、悪いことをしているのに青春に見えてくる不思議。
正道とは真逆の、本来やってはいけないけれど特別感があるからなんだろうか。たぶんそこに共感とアコガレを抱いた陰キャ読者は多いんじゃないかなあと思う。

◆「悪いこと」の定義

タイトルから「『悪いこと』って大丈夫なのかこの漫画…?」と不安になった人はいるだろうし、全然いてもいい。ぼくだって不安はあった。一体どんな倫理観なのか、悪いことをしたからにはインガオホーなのか、そのバランスが整っているかどうかで読後感は変わっていく。

で、結論から言うと個人的にマイペンライでした。
まず作中でちゃんと問題視されているし、そんなワルの作戦は失敗に終わるケースだってある。悪いことにはいちおう必然性と共感性を持たせている。そこは概ね期待通り。無難と言えなくもないが。

たとえば第1話の「プールが嫌だから、プールの水を抜く」。
これは絶対賛否両論になってもいいと思う。というかなってもいい。なれ。どのみち授業ぶち壊しで迷惑かかっているし、スク水回ブチ壊しやがってクソッタレー!!と叫ぶヤツはいると思う。
なお、導入は陰キャ故にプール清掃を断れなかったまもりちゃんが嫌々やらざるを得ない中、藤くんと出会ったというものだ。

けれども案の定ペナルティは喰らったし、藤くんも罪は意識している。とはいえ、どのみち「自分が嫌だから」というのはプラスの印象になり難いし、あまり共感もしづらい。スク水回潰しやがったからなあ。
とはいえ、まもりちゃんにとっては断り辛くて嫌だったプール清掃がチャラになったことから救われたという副産物は生まれた。

この漫画はこういう心理描写も背徳的でとても興味深い。
ぼくはあまりバズ狙いの漫画は好きではないのだが(単行本帯にもそんなことが描かれてう~んってなった)、ここは本作の武器なんじゃないかなあと思う。とても丁寧で読み応えあるので大事にしてほしい。
「プールの水が抜けたことで、世界が変わった」というの、めっちゃわかりみあるんだよな。やってはいけないことをやってしまったから、校内の人々の運命を変えてしまったとも言える。その日のプールの授業のコマ数にもよるが、ざっと1クラス40名、それを5コマと想定、そして教師も関わるのだから大変だろう。そりゃあペナルティを喰らって当然だ。

まもりちゃんがワルの藤くんに惹かれる前フリとして、信念を曲げない強さを持つ悪役に憧れていたというバックボーンが1話で描かれる。『ワンパンマン』のガロウを彷彿させた人はきっと多いだろう。
だが、まもりちゃんの場合、弱者の立場だからカッコイイと憧れるのはとてもわかりみがある。ぼくもひねくれものなので、ばいきんまんが毎週ウィークリーミッション感覚で吹っ飛ばされても懲りずに次週顔を濡らしにやってくるのはメンタル強いなあと感心していたからなあ。

1話後半での更なる悪いこと(といってもギャフンと見返すような軽度なものだが)を通し、周りからの嫌われ者である藤くんに惹かれていく。ちょっとアブない内容ではあるが、展開の納得性を秘めていた1話だったように感じられた。

◆最低でも2話まで読んでくれと主張したい

ここで宣伝。
サンデーうぇぶりでは毎週日曜日、1週間限定でディレイ無料公開。
サンデー本誌掲載から11日後に公開、つまるところ1号遅れとなる。読み逃した読者への措置や続きを読みたい人へ向けての商戦(本誌派誘導)でもあるのだろう。なお1~3話は恒常で無料で読める。

ぼくは表紙買いした単行本から手に取ったクチだが、無料分から入って自分に合うかどうか確かみてみたほうがいいだろう。上述した通り、2話まで読めば印象が変わっていく。

その2話では藤くんに悲しい過去…が描かれるのだが、こんな生意気な悪ガキながら身体が弱く、弟への劣等感を抱く、実質3歳年上の同学年であることが判明した。キャラクターに弱点付与は必須だが、実質18さい(だよね?)ってちょっと残酷だなあ…高3になる頃にはもう成年済じゃん。あっじゃあタバコ買えるし校内で吸えるし酒も飲めるなワルだなオイ。
藤くんが1話でプールが嫌だと言っていたのは身体が弱いからなのだろうか。作中でハッキリ明言されないが、だがしかしこういうのが行間を読ませるってヤツなのかもしれない。
また、藤くんが何故か杖をいつも常備しているのも単なる問題児のアクセサリーではなく、身体が弱いことからの便利アイテムだと分かれば納得した。

少なくとも藤くんには良い青春を送ってほしいなと印象が変わった。
読者100人中100人全員がまだ彼に好印象を抱けるとは限らないと思う。「事情は分かったが、だからってワルいことしちゃだめだろ話は別だろ」とツッコむ人は多いだろうな。
でも、まもりちゃんと出会えたことも藤くんにとっての幸福になればいいと思う。影の青春送るの上等ヤンケ。

◆少年漫画ソウル

まもりちゃんが主人公かつ彼女視点で描かれているし、それで藤くんに惹かれているともはや少女漫画みたいだ。が、この漫画、意外にも少年漫画ソウルがある。
なんなんだよその縦文字横文字の悪魔合体とツッコまれて承知の上だが、そうだな。読んでいてグッと熱いものが込み上がってくるくらい、やってくれて嬉しい主人公らしい言動だ。別に少年漫画以外でもいい気がするのだが、敢えて少年漫画だとひっくるめておきたい。単にそういうのは少年漫画に多いからだな。うん。

その例を挙げると、2巻前半。
藤くんへの悪口を言った弟の晃一くんにワイングラスをぶっかける啖呵の切り方がすごく良かった。
ここは敢えて悪口を聞き流した方が大人の対応だろうという意見はあってもおかしくないだろう。だが愚弄されたままで本当にいいのか?

本作のテーマらしく『一見悪いことだけども、少年漫画の主人公として正しい姿』なのが個人的にメッチャ刺さった。
自分の正直な気持ちに従って行動するのは女の子でありながらカッコイイなと思えたのが嬉しい誤算だ。ワンピでルフィが天竜人をボコったときはあまりにも最高だったわけだが、それに通じるカタルシスがあったのだ。どのみち悪いことをされたのだからやり返す、目には目をの精神ではあるのだけれど。
行動で怒りを示したとはいえ、直接口で怒鳴ったりはしなかったのが、逆にそうなるのはまもりちゃん成長が著しいなと一気にキャラがブレそうなので絶妙な塩梅だと思う。藤くんが「怒れるんだな」と後方彼氏面していたのも小気味良かった。

◆今後の課題点

気になったのは、藤くんが現時点ではそこまで惚れる男ではない件か。
いや全然嫌いではないんですよ。1話時点では微妙だったけど、上述した通り2話で悲しい境遇を知ればこいつなりの青春を送ってほしいなあと思えるようになったし。悪ガキだけど、おもしれー男の側面はあるし、面倒見の良い奴でもある。背が低いチビなのも、コンプ持ちも含めて愛嬌のある弱点ではある。
まあ、早い段階で惚れさせムーヴやっちゃうと「もう完全に少女漫画じゃん」と言いたくなるし、まもりちゃん共々不器用な子供のまましばらく泳がせてもいいかもしれない。つーか現状友達みたいな関係だしな。
少なくとも、魅力的ではないとは言い難い、寧ろどことなく惹かれる男ではある。

長く続けるタイプのラブコメなのか?という疑問はある。これはもう個人的提案になってしまうのだが、まもりちゃんと藤くんふたりだけの世界を築いてほしいといいますか。2巻ラストはマジに「これを求めていた!」な光景が描かれていたからなあ。
3巻から更に新キャラ続出のようだし、「アカン、ネタ切れ…せや!新キャラや!」の方針とはまだ断定できないし断定したくもないが、この漫画ちょっとネタ切れになりそうで心配なんだよな。忌憚の無い意見、2巻はちょっと内容が引き延ばしたように薄い。リアルタイムで本誌で読んでいた人はなかなか話が進まなくてフラストレーション溜まった人もいるんじゃないだろうか。

あと弟の晃一くんもワルに見えるんだけど(良い意味ではない)、その点においては藤くんと競い合うんだろうか。現状どんな立ち位置なのか読めないミステリアスボーイポジだが。

人気は出ているようだし(センターカラーも結構もらっているらしい)、打ち切りとは無縁だろうけど、個人的に10巻以内、長くても15巻くらい続けばいいかなあと思っております。現にまだ全然飽きていない(惰性になっていない)のだから。

***

とりあえずこの漫画、まもりちゃんがどうなっていくのか見守りたいです。あと単行本では巻末おまけページに読者の見たいものを提供してくれるので、そのへん信頼しても良いと思います。媚びを売るサービスは清々しく分かりやすくて好感が持てる。
とりあえず、早くスク水回来いよオオ!!

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