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2024年春アニメ『ガールズバンドクライ』がクッソ面白くて主人公がクッソ面倒臭くておもしれー女なので中指立てながら見てほしい(※第5話までの所感)


◆ガールズバンドクライ

今季覇権アニメなるものは毎期人それぞれ変わっていくだろうし、十人十色なのが面白い。かくいうぼくが今季のダークホースと位置付けたいのは今回紹介する『ガールズバンドクライ』、公式略称『ガルクラ』である。

2024年4月より放送。東映アニメーション制作のガールズバンドを題材としたCGアニメ。
ワンピースやプリキュア、ラゴンボを手掛けたあの東アニである。まあちょうど10年前に『楽園追放』も手掛けていたとはいえ、「こんなアニメも手掛けるんだなあ」というある程度の意外性はある。

このアニメは個人的にはキャラクターデザインが手島nari先生だからという理由でなんとなく視聴予定リストに加え入れていた。
小春六花ちゃんをはじめとする、CeVIO AI(噛み砕いて言えばボイスロイド/ボイロ)のキャラクターデザインを手掛けた方といえばピンとくるだろうか。六花ちゃんのボイロソフトは実際購入して個人用として遊んでいるほど好きだ。声がかわいいんだよなあ。
キャラクターデザインが同じならばそのうちちょっとした友情出演を果たせそうな予感がしてきた。最終話あたりに観客席に六花ちゃんと愉快な小樽潮風高校三人組が川崎に遊びに来てライブへ潜んでいるかもしれない。おそろしく早い友情出演…ぼくじゃなきゃ見逃しちゃうね。

そんな考えは甘かった。
全然世界観や雰囲気が違う。小樽と川崎くらい違う。キャラデザが同じくらいしか共通点はない。あ、でも主人公・仁菜ちゃんの好物がヨーグルトなのは六花ちゃんもだから気が合う…のかなあ。いやそんなグダグダな余談は今はさておきよ。

このアニメ、あまりにもロックすぎる。

名は体を示す通り、見事に女の子が主役のアニメだ。
だがトゲナシトゲアリというロックなバンド名がしっくりくるほどにめっちゃロックである。もっと言うなら、このご時世嫌われてもおかしくない主人公をよく造詣できたなあと感心するレベル。こんな記事を書いているほどだからぼくは素直に気に入っております。

◆ロック過ぎる主人公・井芹仁菜

●1話はまだ大人しいほう

家訓がおきびしすぎる家を出て高校を中退してまで熊本から上京してきた17さいの女の子。
「よくいる如何にもな思春期の女の子だなあ」と思われた方は多いかもしれない。いや家出だなんてまずダイナミック案件すぎるとは思うが。だが上京してどの駅に降りればいいのか迷い、初日にしてこれからが不安になっているのはかえって微笑ましい。本人にとってはあまり笑えない話だろうが。

プロローグに位置づけられる1話はまだ大人しいほうである。
上京後自分がファンであるバンド「ダイヤモンドダスト」の元Vo.である桃香さんと出会い、そこからVo.への道を歩み続けるきっかけとなった…と書くと如何にも王道サクセスストーリーのソレである。

桃香さんから「中指立て=ありがとうございました」と刷り込まれた時点で危険因子は垣間見られた(この後「どこがありがとうって意味なんですか!全然違うじゃないですか!」と恥かいた様子だったが)が、1話ラストで桃香さんを引き留めてやる流れはしっかり主人公をやってくれた。
それでも個人的には1話はそこまで刺さるような話ではなかった。比較的地味なのは否めない。中指立てられたバンドカップル(?)が最後しれっと一緒に演奏していたのは謎でちょっと笑ったが。

が、2話から面白さが増すと同時に問題児化が進行していく。
この子のことはとても本紹介記事で書ききれないくらい語ることが多いので、今回は個人的に刺さった2話を中心にピックアップしていきたい。

●陰キャのリアルな解像度

たぶん強化系念能力者

仁菜ちゃんはぶっちゃけ陰寄りの子だ。
1話からネガティブな話題になるたびに刺々しい負のオーラが発せられる。感情的にムキになっている度にオーラが出ていて大変分かりやすい。こうなる際毎度「くるぞくるぞ!」とギスりを煽らせてくれている。
とても一般家庭とは思えない謎家訓を設けられた家庭環境だったり(毎週日曜家族会議ってマジやばくね)、学校でいじめられていた回想が挿入されたり、この子の人格形成はなるべくしてなるものだったとわからせてくれる。

今のところ本作で一番かわいい

この子のキャラがハッキリ分かりやすく出てくるのが、2話から登場するメインニューネームド・すばるちゃんとの邂逅である。役者の孫故かハキハキ積極的に喋る陽寄りの子なので、部屋のライトをくれたとはいえ自分と対照的なキャラだからか接触し難い様子がとても生々しかった。

これ、めっちゃわかりみあった。桃香さんにはベタベタしてたがそれはファンだから積極的に自分から話しかけやすいのだろう。だがすばるちゃんという突然知らない人と邂逅してしまったときの不安の解像度がものすごく高かった。
どんなことを話せばいいのか、失言しちゃったらどうしようか、そもそもなんか近寄りがたくて自分と合わなそう…こういうケースは悲しいことにぼくにも稀によくある。「なんでこんな最悪の出会いみたいなコトになんだよ…」と頭を抱えたくなるケースがある。まあすばるちゃんは早速好感度高いのでこっちも積極的にWin-Winの関係になりたいタイプだけど。あとかわいいし。

すばるちゃんは自ら興味を持って接してくれたし(だから陽寄りなのだ)、この後桃香さんが気遣ってくれたのに、「頑張る、ってなんですか?無理して話してるってことですか?」「なんか、上から目線で腹が立ちます」とめっちゃ棘のある発言をしてくる。

すげえ面倒くせえ。けどわかりみがありすぎてこまった。
たぶん、仁菜ちゃんは人と合わせたくない省エネタイプな子なんだろう。すげえわかる。ぼくもつまらないものにはさっさと打ち切りたくて適当に相槌を打ってしまう正直な人間だ。だが桃香さんにこうもストレートに堂々と面倒くさいことを言ってくると、もう主人公としての大物感は出ているな…と察することができた。普通言えないですよこんなこと。まずレスバになるし。そりゃ面倒くせえよ。

●善性で物語る仁菜の人間臭さ、そしてロック

ここまでなら好感度がマイナスになってもおかしくないのだが、本作にはそんな不安がない。まず桃香さんが御尤もな正論をぶつけてくれることで客観的につくられているのだなと脚本担当の花田先生はやはり信頼できる。
なによりこの後ひとりの帰り道で、涙が零れ落ちながら後悔の念を生々しく抱いていたのが人間臭さを煽られててすごく好きなシーンだった。

すばるちゃんが声をかけてくれたのに、その流れを自ら断ち切ってしまったことに後悔するという僅かな善性が垣間見られたのもわかりみが深すぎる。ほらよく変なことを言ってしまって後悔ってケースあるあるじゃないですか。今回で言えば、本来なら自分の人生を明るくしてくれる友達が出来そうだったのに自ら手放したとかほんとバカなことしちゃったなーと思うわけですよ。自分で気付けただけでもえらいですよ。「じゃあ猶更取り戻すべきじゃん!!」と自分のことのように声をかけたくなれる。
地味な描写だけど、こういう生々しい描写はなかなか見られなかっただけに強く推したいのである。

まあこの後「バカじゃないの!!!!」とめっちゃ叫んで通行人に向かってライトをブンブンブン回すんだけど。控えめに言わなくても十分やべーやつである。通行人も喧嘩腰だったから非はなくはないのだが、幸い怪我人は出なかったし(ライトは半壊したけどね!)、ギリギリ許容出来る範囲だ。
笑える吹っ切れ方にして、魂を歌声に乗せるヴォーカルの素質があるなと確信させられるロックなシャウトだった。

あと仁菜ちゃんはやっぱり優しい子ではないのかと思わせる根拠が、「ライトありがとうございました」とちゃんとすばるちゃんに頭を下げてあげるところ。ここもいいんだよ。
当然のムーヴといえばそうなのだが、何も言わずに勝手に帰るのも気の毒だし罪悪感あるからせめてこれくらいは…と思ったのだろうか。ここも地味なちょっとした描写でもキャラが深まる。

すばるちゃんからも直々に「めんどくせえ!」と言われながらも仁菜ちゃんを支えつつボーカルとして期待してくれる仲間がいるよ!!という優しい世界。めんどくせえ仁菜ちゃんには十分なくらいハッピーハッピーやんケ。
だが、それがいい!!と断言したなるほど第2話を視聴した後の清々しい気持ちは最高だった。ぶっちゃけ1話2話でセットで見てほしいレベル。いちおう次回から本格的に仁菜ちゃんがボーカル沼にハマりはじめるのもあるからなあ。

●期待性が高い主人公の鑑

主人公とは応援したくなる子も好きだけど、なにより期待性が高いのが一番ベストなんじゃないかなって持論がある。

ロックなキャラをしているのでもう仁菜ちゃんは期待できる。
なんだろう、いわゆるおもしれー女としてキャラが立っているからなのだろうか。こいつは今後どんな新たなロックムーブをやってくれるんだ!?と目が離せなくなってきた。5話で「爪痕つけていきましょう!」と宣言していたのがマジに有言実行してほしくなれる。このアニメが伝説に刻めるかどうかはこの子にかかっている。

その分面倒くささは恒例行事になってくるけど。
5話なんか、かつて絶交した友達がダイヤモンドダストのボーカルになってて厄介オタクみたいになっていましたからね!「死ね!」ってハッキリ言いましたからね!だめだよそんなことまで言っちゃ!いや分かりますけどね!気に入らない奴がなんか出世しているとぼくだって舌打ちしたくなりますからね!
この件にも桃香さんは御尤もな正論を言ってくれるし、ウーロン茶ぶっかけて黙らせてくれるのだが、桃香さんにウーロン茶ぶっかけ返したのやっぱロックだわこいつ…

5話はラストのライブシーンがすごく良かったのでこればかりは是非自分の目で確かみてもらいたいが、ライブ開幕前にガールズバンド嫌いの兄ちゃんに啖呵を切っていた仁菜ちゃんもすごく好きなシーン。ここはまさに「こいつなら絶対やってくれる!」「爪痕つけてくれる!!」って前フリとして機能していた。
あの兄ちゃんがライブを見た後の次回6話冒頭で何か言ってくれるのかなと気になって仕方がない。

◆ドラマっぽいけどやっぱりアニメなつくり

このアニメ、なんとなくドラマっぽいつくりな気がする。
いやドラマは普段全然見ていないからとても根拠なんてないのだけれど、もっと言うならばアニメなのに現実寄りな印象を受ける。魔法もご都合主義も出てこないリアル寄りの作劇だが。

いの一にCGアニメだから?
それはそうかもしれない。でも手島nari先生のキャラデザを見事に踏襲したクオリティの高さだし、上述した通り表情豊かでそこはアニメアニメしている。時折見られるコメディパートでは動きが高速化しているのが分かりやすい笑いにもなっている。

ならなんだろう。声優陣の演技か?
本作の声優陣は見事に漢字二文字であまり聞き慣れない方が多い。軽くググっても、なにかの企画ないしオーディションで集められた新人さんなのかどうかは分からない。それでも全くヘタクソとも棒読みとも思えなかった。寧ろとても聞きやすい。
だけど仁菜ちゃんの声色はアニメではなくリアル寄りな響きだと思う。感情の込め方がすごく良い。面倒くせえと思えるシーンだって、感情がこちらにも伝わってきて「(褒められる言動ではないとはいえ)良いなあ…」と気に入ってしまった。

今のところ一番リアル寄りの声はすばるちゃんな気がする。最初ちょっと声が合ってない気がしたけどすぐ慣れました。全然別ジャンルのゲームないしアニメだけど、『テイルズオブシンフォニア』のクラトス(CV:立木文彦)みたいなケースだわ。
「マダオ声合ってなくね??」からの「マダオ以外は解釈違い!!メテオスォームぶつけてんぞ!!」ってなるやつ。

ちなみにOPはちゃんとした手書きアニメ。
この絵でやれ」という気持ちはぼくにも僅かにあるのだが、現状CGアニメでもいい気がする。というか手書きアニメだと本作特有のコクを失われる気がする。抽象的な意見になってしまうけど、コレジャナイ感がありそう。

◆とにかく見てほしいですねガチでね

このアニメ、とにかく人を選ぶのは間違いない。
かくいうぼくも1話時点ではそこまでハマれていなかった。が、2話から本作の毒気に一気に引き込まれ、1話を再視聴すればキャラへの理解と解像度が高まったからか初回時より楽しく見ることができた。
よくある部活アニメのようにメンバーを徐々に揃えていくにつれて面白くなるタイプのアニメであり、徐々に毒牙を曝け出していくタイプのアニメでもある。

PrimeVideoやdアニメストア、ABEMA等、様々なプラットフォームで配信されているので(基本的に最新話以外有料なのばかりだが)、そこまで視聴ハードルは高くはない。個人的にはニコニコ向きのアニメでもあるのでそちらでも配信してほしかったが…ちなみにぼくはもう2周目に突入してしまった。つまるところそれくらいハマっている。あと雰囲気が良いので軽い気持ちでまた見てみたくなったのもある。それに、キャラが大分分かったうえで1話再視聴すると大分印象が変わるタイプのアニメでもある。

最後に本作のこの言葉を紹介して筆を擱くとする。

怒りも喜びも哀しさも
全部ぶちこめ。

これは本作のキャッチコピーである。
井芹仁菜は有言実行の鑑と言わんばかりに本気で真摯にブチ込んでくれている。これ以上のキャッチコピーがとても見つからないくらいに。

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