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『ミギとダリ』第1話「ミギとダリ」感想 スタイリッシュジェミニサスペンスシュールギャグアニメがはじまった


◆ミギとダリ

2023年秋アニメ『ミギとダリ』がはじまった。

すっげえ面白かった。シュールすぎてクッソ笑った。心の奥深く底から笑った。「ぼくは今思いっきり笑っていいんだ!」と人間性を取り戻せたくらい笑った。

元よりこのアニメには強く期待していた。
何故なら、2016年度マイベストアニメ『坂本ですが?』の佐野菜見先生が原作だからである。


本作はキービジュアルからして、耽美的でシリアスな雰囲気を提供している。女性向けアニメのようであるし、絵柄もちょっと独特なので、なんとなく敬遠していた人はいるかもしれない。
だが、前作を知る者からすれば上記のような場違い極まる感想がきっと飛びかかってくるに違いないと確信していた。スタッフは『坂本ですが?』とは全く別だし、本作は原作未読なので何とも言い難いのだが、下手なことをしない限り約束された面白さは提供されるだろう。期待というよりも、楽しみのほうが上だった。

結果、場違い極まる感想を無事出力成功した。

◆ストーリー

このアニメはあらすじ等、なにも情報を得ずに見ることをオススメする。

いやそんなことはどのアニメにも言えることだし、別にドヤ顔で太文字にしてまで言うつもりは全くないのだが、大抵PVや公式HPを下調べして「これを見よう!」という人は多いはずだ。
本作は…公式Twitterのフォロワーが現在1.8万と少なすぎるので今回PR気味に強くアッピルしておきたい。
つーかいくらなんでも注目されなさすぎだろ!もっと評価されてもいいだろ!裏番組が『聖剣学院の魔剣使い』(※9万フォロワー)と被っているのもあるけどさあ!そっちも見ましたよ!ふとももが良かったですよ!

因みにAT-XとAmazonPrimeVideoでは地上波よりも早く放送・配信されているので、そちらを利用するのも良い手だ。オススメ。

(以下、第1話のネタバレありの感想。ギャグアニメなのにネタバレってどうなんだ??)

児童養護施設で過ごしていた双子の少年ミギとダリは、ある日裕福で穏やかな老夫婦、園山夫妻に養子として迎えられる。しかしそれはふたりの少年「ミギ」と「ダリ」としてではなく、ひとりの少年「園山秘鳥」としてだった。 二人は正体を隠し、園山秘鳥を演じながら、園山夫妻を取り込もうと画策する。結果は上出来、一日で園山夫妻の懐に入り込んだ二人は、部屋のテントの中で不敵な笑みを浮かべるのだった。

公式サイトより引用

如何にも普通に真面目なあらすじになっている。
だがこれは、第1話のミソとなる縦軸すべてを明かしている。なので、視聴前はあまりこのあらすじを見ないでおきたいと強く主張したわけだ。もっと言うなら、サプライズの半減になりかねない。

というのはこれ、視聴するにつれてどういったコンセプトなのかシームレスに判明していくアニメである。
双子がメインなのは分かる。ギャグアニメなのは最初から分かっていた。だが、本作はいったい何をするのだろうか?そこが肝心の問題だ。前作『坂本ですが?』は現代日本の高校が舞台なのもあって横軸9割方だったが、本作は異国の昏い世界だけあってシリアス係数(とキービジュアル詐欺)が強めだ。その点において放送前から気になっていたフックである。

そのアンサーがこのあらすじ。
何故か片方だけ姿を現し、ミギないしダリではなく「秘鳥(ひとり)」と名乗っていたあたりから「あれ?」と首を傾げるようになる。ああなるほど、二人いるとバレちゃまずいわけなのね。媚びた建前と黒い本音を使い分けるのね。でもなんでバレちゃだめなんだ??何か事情があるのか?

Cパートの種明かしがひどすぎて最高に笑った。

◆種明かし

Cパートではアバンでのシーンを別サイドで描かれており、「この二人は何故これまでバレずに老夫婦の養子としてお世話になったのか?」のアンサーが描かれている。が、それがもうあんまりにもひどくて黒くて笑った。

おばあさんの帽子が飛んで行ったのを取ってくれたシーン。
思えばこの時のセリフが何故か「風ともに去りぬ!」な時点でもうおかしくて、「ああ佐野先生だなあ」とほっこりしていたのだが、実は風の仕業ではなく双子による好感度上昇フィッシングだと判明した。物理的にも精神的にも、帽子と心を釣り上げている。

突然の雨はいくらなんでもおかしすぎるし、双子のもう一人がなにかやらかしたのだと推測できたわけだが…

ここ最高に爆笑したほど大好きなシーン

ストロングスタイルすぎる自作自演じゃないか!?
雨はまさか直々にホースの水ぶっかけるとか思ってもいなかったよ!そこまで予想してなかったよ!つーかやっていることが完全にコントだよ!冒頭の異国めいた独特の雰囲気が台無しだよ!
分かりやすく例えると、ロンドンが舞台だとずっと思い込んでいたのが本当は岡山県でロケやっていた。実際本作の舞台は海外だと思っていたら日本のようだしな。

◆スタイリッシュシュールギャグ

前作同様スタイリッシュ。だが動きがつくと面白さが増す。
佐野先生の絵も耽美的なのに躍動感がすごかったが、こっちも別ベクトルで面白い。

第1話は「こいつなら絶対こうする!」と予想できるギャグが多かった。例えば食事パートでは片方もたらふく飯を食わないとかわいそうだから、隙を見て入れ替わる必要があると展開は読めていた。

だが、一体どのような面白い絵面になるのかある程度想像できるし、もう期待できてしまう。そこが佐野先生の作劇だとぼくは考えている。

鳥かごのくだりとかも、どのみち二人協力するのが前提だと分かっていながらも絵面のシュール全振りになっている。

勿論ツッコミ所は満載だ。
この双子の片方はコナンくん感覚で忍んでいるけど時々バレてもおかしくない位置に隠れているし、突然目隠しされたのに何も疑問を持たないし、児童養護施設はふたりとも出て行ったことに気づかなかったのか、万一バレて連絡がかかってきたらまずいんじゃないのかとか、勿論真面目にツッコむのは野暮でありながら登場人物全員もれなくIQが下がっている。

だが、面白さを追求させるためだけに犠牲になったみたいですごく良い。

双子だけでなく、老夫婦もキャラが濃い。おばあさんなんか、三石琴乃さんの演技が迫真だもんな。

***

今のところはマナカナと同じくらいミギとダリどっちがどっちなのか区別できていないのだが、イケボで復活した松野六兄弟も最初はそうだったのがいつの間にか自然と区別つけられたし大丈夫だろう。
というかたった今気づいたのだが、前髪が左右どちらかに分けられているのが明確な違いになっているな。なんで気付かなかったんだろう…いやそもそもそこへの念頭は置かれていなかったんだよな。「二人で一人」な認識だったからか?

出オチアニメーションではあるが、今後の展開が楽しみだ。
ホームアローンのように共謀しつつも、いつしかバレそうなハラハラ展開が待っていそうだし、原作完結済なので最終的にバレてしまいそう。シュールギャグと共に、この物語の行方を是非見届けたい。

佐野菜見先生の遺作として、是非とも楽しませていただきます。

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