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ホラクラシーで自由と創造の文化を貫く

この1年間、組織論に始まり、マネージメント、コーチング、アドラー心理学を勉強し、実際に会社経営の先陣を切っているスタートアップの経営者(日頃お世話になっているDeNAの南場さんやSansanの寺田さんに加えて、SmartHRの宮田さん、レノバの木南さんなどなど)にも話を聞きながら、Natureにとってのいちばんの組織の形態とはなんなのかを考えてきた。

結論としては、NatureのValuesである、Creativity(創造)やLiberty(自由)をいちばん体現できる組織の形として、Teal組織の中でも、ホラクラシーがベストな組織体系ではないかと考えるに至った。正直、今のNatureがすでにホラクラシー的に動いているので、これを壊さないままいかに企業としてスケールできるように明文化された仕組み作りができるかが鍵になりそうだ。

この1年間での組織のあり方に関する試行錯誤の経緯をまとめたい。

組織論

組織論というのは、本当に奥が深い。人間というのは、詰まるところはコミュニケーションを媒体に化学反応を起こす生き物だと考えると、組織論を理解するためには人間自体の理解を深める必要がある。

ハーバード・ビジネス・スクールでも組織については重要なテーマとして扱ってはいたが、授業で扱うような一般化したフレームワークで語り尽くせないアートの部分が多分にある。

他の会社がどのような思想で組織を運営しているかを理解するために、組織について書いた本や創業者の伝記のような本まで色々と読んで研究した。

組織論は、企業が行う事業や人間社会のあり用の変化の影響をもろに受ける。ちょっと前までは、「Work Rules」で紹介されたGoogleのようなスマートクリエイティブを活かす仕組みが模範とされてきていたが、直近ではやはりTeal組織への流れがある。業態が複雑化し、解くべき問題の難易度が上がっている世の中においては、経営者のトップダウンなマネージメントでは限界があり、いかにボトムアップが機能する仕組みを作るのかが重要だ。

組織論を色々と読み解いていく中で感じたのは、日本人として元来持っている東洋的な思想に組織のあり方がより始めているという流れだ(トップダウン経営からボトムアップ経営へのシフトの流れ)。最近話題のTeal組織はホラクラシーも仏教的な思想に近いと感じる。元来日本の組織はリーダー不在と揶揄されてきたが、本来人間は「自分で考えたい」「自分で決めたい」生き物だ。その人間の本質を考えると組織は、ボトムアップであるべきで、それが本来の人間のポテシャルを解放できる組織だと思う。

Netflixの「No Rules」では、あえてホラクラシーという言葉は使われてないが、極めてホラクラシー的な思想に基づいて、ルールなしで文脈をシェアすることで組織のガバナンスを担保している。加えて、フィードバックの文化も徹底させ、同僚同士での牽制がしっかりかかる仕組みを作った。とはいえ、どうしても組織の規模がある一定規模を超えると仕組みを悪用する人が出てくるので、「悪用したらクビ」という切り札は残している。これは、我々の社会で法律を犯したら捕まるというのと近い。

Appleについてもいくつか読んだが、「Inside Apple」が面白かった。Appleは、Steve Jobsの独壇場と思われがちだが、彼のクリエイターとの仕事の仕方は極めてボトムアップだと思う。彼がいかにクリエイターをリスペクトして尊重していたかは、彼とJony Iveの密でお互いを尊重する関係からもよくわかる。これは、Jobsというより、Bill Cambelの言葉として有名だが、「とにかくクリエイターには顧客の声を伝えて解決策はクリエイター自身に考えさせろ」という話からも、いかにAppleがボトムアップで現場のクリエイターに考えさせることを重視していたのかがわかる。

ソニー  盛田昭夫」を読んで、いちばん最初にテクノロジー企業の文化において革命的なものを作り世界を席巻したのはSONYだと感じた。正直、Googleの仕組みもSONYがやってきたことに多分に影響を受けているように思える。SONYは、井深さんと盛田さんという伝説的な起業家により、世界的なブランドに育った企業であるが、日本人でも意外とSONYがいかにしてSONYになったのかを知る人は少ない。SONYも、やっぱりクリエイターの扱いが秀逸だったと思う。そこは、設立趣意書の「自由闊達にして愉快なる」に煌々と現れている。クリエイターは、自由で、創造的で楽しい仕事にいちばん能力を発揮すると僕も思う。

中国では、電力の領域でも華為の評判は異常に高い。製品の品質も値段も他を圧倒していて、業界人の驚くようなプロダクトを次々に開発している。そんな華為の経営哲学が知りたいと手にしたのが、「最強の未公開企業ファーウェイ」だ。社長の任さんは、元々は軍人で、起業したのが44歳と遅咲きの起業家だ。ただ、彼は会社の株式の大半を従業員に持たせて、自身はわずか1%程度しか株式を持っていないというのは衝撃だ。この事実だけでも、彼がいかに従業員のエンパワーメントに真剣で、ボトムアップの会社を作ってきたことが透けて見える。

最近では、「Zappos伝説2.0」で紹介されているZapposのホラクラシー組織が注目を浴びているが、これはボトムアップの究極系を体現したものではあるが、同様のボトムアップの思想というのはこれまでのいろんな会社にもあったのだ。「Zappos伝説」でとても印象的だったのが、会社に強い結びつきを感じてる社員はより生産性が高いと言う傾向にあるという研究の裏付けがあり、社員の会社との結びつきを示す代表的指標は、その社員が社内にどれだけ友人がいるか、または社内に親友と呼べる人がいるかどうか、だと。

これを読んで、最初に思ったのが、まさに三井物産ではこの数は圧倒的だ。僕自身、先輩・後輩や同僚を家族と感じられる、そんな会社だった。これから作ろうとしている組織のロールモデルがそんなにそばにあったとは。それで僕は、「家族のような会社」が理想系だと気づき、自分でもNatureをそんな会社にしていきたいと思うようになった。

また、僕がいた三井物産のプロジェクト本部もプロジェクト単位で役割ベースでフラット(自由に発言できる)に決める文化があった。僕自身も、入社3年目でファイナンスモデルから始まり、ファイナンス、燃料調達、電力売買契約交渉、ローカルパートナーへの事業DD支援、稟議等を一通り担当させてもらった上で、入社5年目の時に担当したマレーシアのプロジェクトではDuptyプロマネという謎のタイトルをボスからつけられ(横断的な立場で仕事ができたのはパートナーのトップから指名がありアサインされたという経緯もあった)、プロジェクトを横断的に推進する立場で案件開発をさせてもらった。僕は、仕事を通じていろんなことを吸収したかったので、その立ち位置は本当に有り難かったし、死ぬ気で仕事をした。プロジェクト本部は、僕にビジネスパーソンとしてのいろはを叩き込んでくれた組織で今でもそのことはとても感謝している。

組織論を勉強した結果、「ボトムアップで家族のような組織を作る」というゴールが朧げに見えてきた。

<組織論や創業ストーリーについて書かれた本で他に参考になった本>

トヨタ物語 (強さとは「自分で考え、動く現場」を育てることだ)

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

アマゾンのすごいルール

Elon Musk: Tesla, SpaceX, and the Quest for a Fantastic Future

Measure What Matters  伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR

ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方

ホラクラシーの光と影 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文

インスタグラム:野望の果ての真実

Reinventing Organizations: An Illustrated Invitation to Join the Conversation on Next-Stage Organizations

マネージメント

一方で、組織のことを考え始めるとそれを動かすのがマネージメントだということに行き着く。では、マネージメントの本質は何か。それを組織設計にどう反映するべきか。

マネージメントについては、シリコンバレーで伝説のバイブルと言われている元インテル社長のAndy GlobeのHIGH OUTPUT MANAGEMENTが秀逸だ。

中でも、マネージメントとは①教育と②動機付けだとシンプルに整理しているのが、極めて明快で何をやればいいかわかりやすい。①教育については、あまり解釈の余地がなさそうだったので、動機付けについて深く理解したいと思った。どうしたら人は自分がして欲しい行動を起こすのか、どうしたら人は自分から主体的に行動するのか、どうしたら人はモチベーションを高く持ち仕事ができるのか。

その疑問を紐解くためには、動機付けを効果的に行う方法を理解する必要がある。そこで、僕が次に興味を持ったのがコーチングだ。マネージメントについては、ハーバードで散々色々読まされていたのでさらりと通過した。

コーチング

コーチングについては、僕自身目から鱗の連続だった。

一番最初に読んで感動したのが、「1兆ドルコーチ――シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」。これは、ビルキャンベルという、Apple、Googleを含む米国を代表するようなテクノロジー企業を成功に導いた伝説のコーチについて書かれた本だ。この本では、「どんな企業も成功するためにはチームコーチングの組織文化を組み入れなくてはならない」と説いている。

ビルの思想は、一貫していて、いかに企業に「愛」を吹き込むかということだった。そのためには、仕事の面だけではなく、プライベートも含めた個人を1人の人間として接することが重要だと。この本を読んだ後、僕自身すぐに、「会議の前にみんなのパーソナルな話を聞く」というのと、「Weeklyの全社会議で各自が発表した後にPersonal Updateをする」という試みを実施。これは、本当にメンバーに好評で今でも続いている。

今でも、朝会は輪番制にして、司会の人が決めた質問をみんなで回答するというものを毎日やっている。正直、仕事のアップデートもあるが、質問が秀逸すぎてほとんど仕事の話の記憶はない。それなら一層仕事の話はやめようかとも思ったが、それはそれで機能してる部分もあるので今のところは併用している。やっぱり、「好きな映画」や「おすすめの本」の話は鉄板であるが、その人のキャラクターが滲み出るし、自分の次に楽しむエンタメの参考にもなるし、おすすめだ。

最近では、Nature LIbrary制度を導入して、みんなが自由に本の購入を依頼できる制度を作った。僕自身、父親が家でこの仕組みを作ってくれていて、散々本を買わせてもらってとてもよかったと思ってるので、会社でも同じことが実現できて嬉しい。

コーチングについては、いかに心を開いてもらえるか、気付きを得られるようにアドバイスできるかがポイントと思うが、詳細は以下の本に譲りたい。特に秀逸だったのが、COATCH Aの創業者の伊藤守さんが書いたコーチング・マネージメントだ。COATCH Aは、日本にコーチングを広めた会社であり、幾多の超優良企業をクライアントに持つ超優良コーチング会社。さすがその創業者が書いた本という納得の内容だった。

他にも大量のコーチング本が家に積読されているが、まだ読めてないので、そちらは読んだあとにでも。

<コーチングの本>

コーチング・マネジメント

図解 コーチング流タイプ分けを知ってアプローチするとうまくいく

コーチングが人を活かす

コーチングの基本

アドラー心理学

コーチングを勉強していると、そもそもその理論の根幹にあるのが心理学であることがわかる。最近では、アドラー心理学が多くのコーチング理論のベースになっているように思う。また、GoogleやNetflixをはじめとしたテクノロジー企業の組織運営の根本的な考え方は、アドラー心理学に基づく人間の心理の理解に基づいているのではないか。

では、アドラー心理学とは何か。

アドラー心理学とは、人間の行動原理を過去に求める原因論ではなく、常に「人は目的を充足するために行動している」という目的論に基づいて考えることが革新的だ。このシンプルな発想の転換で、他人に対して建設的な行動やコミュニケーションが可能になる。

例えば、引き篭もりで登校拒否をする生徒は、引きこもることでその目的を充足している。その目的とは、注意を向けて欲しいということもあるだろう。目的がわかると、その目的を別の方法で充足することでその人の行動を変えるということが可能になる。注意を注いで欲しい子供に対して、一緒に過ごす時間を増やして愛情を注ぎ込むことで、登校拒否をする必要がなくなるという具合だ。

人間のストレスの原因は、全て人間関係にあるとアドラーは言う。つまり、人間関係のストレスから解放されれば、ストレスフリーな人生を謳歌できることになる。アドラー心理学的に、人間関係のストレスから解放されるためには、相手の目的を考えることが大事だ。

高潔な精神を持つ健全なチームを作ることができれば、そのメンバーは各自分が正しいと思うことをやっているはずだ。仮にそのメンバーにあう仕事をお願いしてもやってもらえなかった場合、それは「怒り」をぶつけるべきではなく、その人の目的を考えるべきだ。お願いしたことをやらないことでその人が充足していることは何か。その目的を充足することでお願いしたことを実行する障壁がなくなるかもしれない。

人というのは思ってる以上に自分が何を欲しているかは理解している。つまり、頼んだことをやらなかったり、期待する通り進んでやってもらえないとしたら、怒りを押させて、まずはその人がその行動で実現できている目的を考えることが大事だ。

実際に、僕もアドラー心理学を知り、実践するためにPPTで簡単な資料にまとめて、毎週月曜日はその資料に目を通すということを習慣化した。その上で、自分のコミュニケーションの仕方を大きく変えたところ、今までは何度もお願いしてようやくやってくれていたことが、何も言ってないのにやってもらえるということがあった。これには知識のパワーとはすごいと思わされた。SONYの盛田さんも、「経営者にとって大切なのは忍耐と理解力」と言っているが、まさにそういうことだろう。

今は、アドラー心理学のその先をみて、いかに自分の中からストレスを排除するか、心の平穏を保つかということを研究していて、仏教、茶道、マインドフルネスについて勉強し始めたところだ。これはこれで奥の深い精神世界があり、大変興味深い。学ぶことが尽きない毎日でとても楽しい。

アドラー心理学入門

嫌われる勇気

Valuesからホラクラシーへ

こうして組織やマネージメントについての理解を深めると同時に、社内でNatureのValuesについて検討していた。Valuesを決めた経緯については、こちらのnoteにまとめているので詳細は割愛するが、NatureのValuesは以下の通りだ。

1. for nature
Natureは、「自然との共生をテクノロジーでドライブする」(2021年11月より「自然との共生をドライブする」に変更)ミッションをビジネスの力で実現するために存在している。全てのメンバーが一丸となりそのミッションの実現を最優先して行動する。
2. Creativity
"自然との共生"というのは、人類にとって重要で大きなテーマだ。好奇心とハングリー精神を持って学び続け、創造的な思考と行動をもって、前例のない革新的なアプローチでその大きな課題に粘り強く挑む。
3. Liberty
管理より自由を、ルールより文脈を。我々は、メンバーを信用し、裁量や情報を十分に与えることで、オーナーシップが芽生え、大きなミッションの実現に必要な成果に繋がると信じている。

このValuesとボトムアップの文化を作ろうと考えた時に、答えがTeal組織というのは自明だった。その中でも創造的で新しいことをやる会社であることを組織の体系でも体現したいという思いから、完全にフラットな組織体型であるホラクラシーがベストな解だということに至った。

ルールではなく文脈を。これは本当に、言うは易し行うは難しだ。上場を目指すNatureにとって、これからいかに規定を作らずガバナンスの仕組みを構築していくか、日本企業ではほとんど前例のない取り組みにワクワクしている。

幸いにも、最近ベンチャーでの上場企業を人事部長や役員の立場で3度も経験した重田が10月にジョインし、Natureの組織作りの先陣を切ってくれている。

ホラクラシー組織として今後のNatureの進化が楽しみでならない。

最後に

Natureでは現状の30人の組織から100人への拡大を目指して全方位で採用してます!ぜひ、Natureに興味を持っていただいた方はお気軽にTwitterでDMください。

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