さん喬と名人のありかたについての覚え書き。柳家さん喬独演会を観て。
昨日、文京区役所のなかにあるシビック小ホールで、柳家さん喬の独演会を観た。
さん喬を観たのは、ちょうど一年ぶりになる。
一年前は、自宅近くの英会話教室でレッスンを受けていた。丁度、時間が重なっていたので、レッスンを途中で切り上げて、自転車で駆けつけたのを思い出した。
今年の独演会の演目は、「笠碁」、「鴻池の犬」を続けて演じ、中入りが十分はいって、「浜野矩随」である。いずれも熱演揃いで圧倒された。
「笠碁」は、ヘボでザルな碁を楽しみにしている隠居の話である。
幼なじみのふたりが、意地を張る。江戸時代の隠居は、四十代の終わりか五十代だろうから、こんな喧嘩ができるふたりの暮らしぶりをうらやましく思いつつ観た。
ただ、ふたりの演じわけが必ずしても鮮明ではないので、途中、どちらの隠居の発言だかわからなくなった。それほどふたりは似ているという意図の演出かもしれないとも思った。
途中、隠居の奥さんが登場するが、傘を貸さないと意地悪をいうがために、隠居は笠をかぶって、碁敵の家へ向かうはめになる。このときの奥さんが愛猫の頭をなでるくだりが、この日の「笠碁」で、ぐっときた描写だった。
猫のあとには、犬である。
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年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。