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ふわふわ自転車スタンドとの終わりなき係争

 私にとっての青春の象徴は「自転車」。最寄り駅は徒歩20分の無人駅、みたいな街で生まれ育った人間には、自転車は不可欠な移動手段。歩いてる人なんか誰もいない、自動車だけがビュンビュン走っている(OH! モータリゼーション!)国道を毎日歌いながら激チャしたものです。
 ちなみに雨の日はバス通学。案の定1時間に1~2回くらいしか来ないから、停留所の時刻表を撮って大事に保存してました。
 
 卒業後、私は時刻表を気にしなくていいくらい交通が発達した大きな街にある大学に進んだ。なのにそれでも自転車は大事な移動手段のまま。それはキャンパスが広大だったから。自転車がなければ教室移動が間に合わないなんてことも。
 毎朝一限前の大学構内は教室まで急ぐ自転車の大群。あれを見るたび『水曜どうでしょう』ベトナム縦断企画で見たアヒルの大群を思い出してしまう。
 
 そんな大学生の多くはママチャリを使っている。幅広のかご最高。堅牢な自転車スタンド最高。都会の激シブなビル風を浴びて凹んだり倒れたりすることはあっても、壊れることはない丈夫さ。大好き。
 今日も相棒に跨って帰宅。マンションの駐輪場に停めましょう。といっても屋根もなければ、高いのと低いのが交互に並ぶラックみたいなやつがあるわけでもない。ただの駐輪スペース。しかも秒ごとに地殻変動してんのか? と言いたくなるぐらい地面が波打ち散らかしてるけど。置けるだけで良いのキラキラキラキラ。
 おっと、ちょうど良い隙間発見! 間に失礼します~。両隣の自転車にぶつからないように慎重に停めましょう。って、あっ。ガシャン! す、すみません~。……あ。
 倒れていたのは、ママチャリではなくかご無しバイク。お洒落さんが乗ってるよね。それはいいんだけど。それはいいんだけどさ!!!

 これ、ふわふわ自転車スタンド付いてるじゃん……!!!!!! 

 説明しよう。ふわふわ自転車スタンドとは、そもそも自転車を自立させるためについてるはずが、謎にしなっているために自転車の重さを支えきれていない自転車スタンドのことである(私の造語)!
 
 あれ、なんなんですかね。最初に出会ったときは老朽化してただ耐久性を失っただけのスタンドだと思ってたんですけど、どうやらあれ、かご無しバイクには標準装備なのかな(私調べ)。
 え? え? スタンドって自転車の自立を支えるための部品ですよね?! それなのに、なんであんなにしなってんの? どういう意図? ねえ、怒らないから、教えて! もうね今までに、ふわふわ自転車スタンドに出会いすぎて、怒るとかいうフェーズはとっくに終わってるから。ただ、ただ意図だけ教えてほしい……。君はなぜそんなにしなってるんだい……??? 君のしなりのせいで、自転車を立たせようとしても立たないんだよ……。
 高いのと低いのが交互に並ぶラックみたいなやつが無い駐輪スペースにおいて、自立できない自転車は、手形を持たずに関所を通過しようとする出女と一緒。決して許されることではないのさ……。こうして私の心の中の箱根関所は今日も閉じてゆく……。

 ふわふわ自転車スタンドがすぐ「俺には無理っすよ~」と言わんばかりに己の天命を放棄するたびに、私には、ふわふわ自転車スタンドが見た目は硬派で中身はナイーブな後輩男子に見えてくる。
 持ち主の皆さん。私に部下との接し方に悩んでいる中堅社員みたいな気持ちを味わわせないでください……。

写真は昨年末に訪れた某岬のものです。内容とは全く関係ないので悪しからず。

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