「それしかできない仕事道具」に惹かれる
スマートフォンはとても便利。インターネットにつなげる、文章が書ける、写真が撮れる、音楽が聞ける……挙げればきりがないほど「できること」が多いものだ。
でも、僕はどうにも「それしかできない道具」に惹かれるところがある。それが「仕事を支える道具」なら、なおさらだ。電気工事士だけが使う特殊なドライバーとか、ラジオパーソナリティにとってのマイクロフォンとか、美容師の髪切り鋏とか。潔い佇まいと、高性能であることにグッときてしまう。
ライターや編集の仕事をしていると、パソコンとスマートフォンで実は大概の道具はまかなえてしまう(体ひとつで出来るエコな商売ともいえる)。それでも僕は専用の道具を、どこか「カッコいいなぁ」と欲してしまう。最たるものが、たぶんこれだ。
オリンパス製のICレコーダーを買った。僕にとってはインタビューやイベントレポートを録音しておいて、原稿制作に役立てるため「だけ」にあるといっていい道具だ。
各社からさまざまなものが発売されていて、値段もデザインもまちまち。これほど決め手に欠ける買い物もないと思うのだが、「マイクが3つあってよく撮れる(らしい)」「USB端子がついていてデータ転送しやすい」「デザインが悪くない」の3点から、どうにかひねり出して結論づけた。
お金と折り合いが付けばソニー製のものがいちばんスタイリッシュだった。いつも机に置くものだから、ノートや筆記具と同様に、見られることを意識して買うのもありかもしれない。
このICレコーダーも思った通りの働きをしてくれているので不満はないのだけど、スマートフォンではダメだったのかと言われると、そんなことないのである。最近の録音アプリは本当に優秀で、実によく聞こえる。
それでも「アプリを終了する時にエラーが起きてしまったら」みたいな恐怖心があってスマートフォンだけの体制に移行できないままでいる。僕が単機能の道具に惹かれるのは、「思った通りの仕事を完遂すること」に想像以上に価値を置いているからなのかもしれない。
愚直というか、素直というか。ICレコーダーのように、ひとつずつの仕事を的確に(そして期待以上になるように)仕上げていきたいものである。
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