クロスバイクを買った。

自転車、ではなく、クロスバイクとあえて呼びたい。試乗して驚いた。自転車よりぜんぜん速いのだ。僕が知りうる感覚からすれば、徒歩＜自転車＜クロスバイク＜原付の位置づけ。

会社まで徒歩18分くらいのところに住んでいて、満員電車に体力を削られないのはいいのだけれど、もっと気楽に行き来できないかと思った時、友人から勧められたのがクロスバイクだった。使い始めて通勤時間は6分になった。3倍速いとはこのことか。

徒歩30分の距離が10分で着くとわかれば、日常の行動範囲も広がる。ちょっと遠くのホームセンターやスーパー銭湯に通いやすくなったのも嬉しい。

買う前には「それなりの値段のするものがいい」と教わり、自転車屋さんを2軒ハシゴしてリサーチした後、そこから30分も歩いて、とある中古自転車店に辿り着いた。

GIANT ESCAPE RX3。店員さんお墨付きで状態が良く、いわゆる「型落ち品」だったけれど、初心者向きという。そして、試乗の時がやってくる。

ぐん、ぐんぐん、ぎゅぎゅーん！

未体験だった。興奮した。僕は「馴染みの味」と「未知の味」なら未知の味を選びたがる傾向があるけれど、こんなにショックを受けるほどの未知は久しぶり。

クロスバイク本体、ライト、鍵、ペダル、空気入れ、スタンドと、必要なパーツも全部中古でそろえて6万円だった。躊躇せずに「ください」と口にした時、自分の興奮にためらいなくGOサインを出せるのが誇らしかった。

はい、知っています。人はこれを衝動買いと呼ぶのです。ただ、僕は衝動が起きるほどの出会いがあるならば、お財布とよくよく相談してからだけれど、その衝動を愛してあげるのも大事だと思うのだ。そうでないと、素直で熱い自分の気持ちを、どこかに置き忘れたまま生きていくことになりそうだから。

いざ、その気持ちが必要になったとき、困ることがないように。