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Start of Leather(前編)

※知らない間に、ナレーションによる語り部を目指していたはずが、台本みたいになってきました!


3

(暗闇の中から)

ナレーター 『、、、それから5ヶ月が経ちました。』


(周りは明るくなり、今までの場面とは異なった世界が広がっている)


ナレーター『年が明け、新たな1年が始まりました。ここは赤坂見附。高級そうなホテルが並び、通り過ぎていくスーツ姿を着た男性からは自信に満ち溢れた顔、シャンとした歩き姿にヒールがよく似合う女性からは気高さが見て取れます。そんな某所にぴったりの、サイゼリアというオシャレなイタリアンで、デカンタのワインを飲みながら新年会をしている男たちがいます。』


(僕と友人はもう数時間だべっている)


僕『ずっとやってこなかったことがあるんだけどさ』

友人『んお』

僕『革で財布とか作ってみたいんだよね!』

友人『んおー!』

僕『これ人に言っておかないと、自分の中でやるやる詐欺を起こして、やばい感じになるから、恐かったけど言っちゃった!』

友人『んおんおんおんんんんおんおんおー!(周りに革細工やってる人がいるとか、めっちゃいい!)』

友人『んおんおんおんおおおおおんんんおんおんー!(もしいい感じのができたら買うよ!)』

友人『んおんおんおんおおん!(革でリュック作って欲しいから、発注するね!)』

僕『よっしゃ!やる!』


ナレーター『と、こんな感じの会話が交わされて、もれなく「やっぱり辞めた」という逃げ道を塞ぐことに成功したようです。幸い、すぐに動けるだけの時間と、すぐに始められるだけの資金を有していた彼は、早速Amazonでスターターセットなるものをポチります。


(友人、去る)(あちこちを訪ね歩く僕。自宅と本屋を往復する)


Amazonから荷物が届くまで数日。彼はまず行きつけの本屋さんに行き、レザークラフトの本を見漁りました。しかし敷き詰められた活字と、手がかりとしかなり得ない数枚の写真を見ただけでは到底できそうにありません。そして何より、作り方は勿論、型紙まで同梱されたその教本は、彼が手を出せる値段のものではありませんでした。』


僕『この本を買うぐらいなら、この値段で道具とか揃えたほうがいいんじゃね、、、』


ナレーター『結局彼は自宅に戻って「Wallet diy」と、YouTube の検索バーに打ち込むことにしました。え?なぜ日本語じゃなくて、英語で打ち込んだのかって?そんなの明白じゃないですか。「海外の方がオシャレに決まっている」という謎の思い込みが発動したからですよ。


漁っているうちにたどり着いた一つのチャンネル。それは僕をレザークラフトの世界へ引き込む奥深い沼のような、、、いえ、天上界へと導くのワープ装置として、目の前に現れたのです。』



僕『これなら僕にもできる!道具も揃った。作り方もわかってきた。なんだ、あんなに遠かったdiyも簡単そうじゃん!』


ナレーター『机上の空論に心踊らせたまま、足りない道具と、生地を手に入れるため、彼は東急ハンズへと足を運びました。たどり着いたその先で、あまりにもややこしい革の世界と立ち向かわなければいけない事になるとは、知りもせずに、、、』

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