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創造的界隈の生まれる瞬間ーBankART1929と北仲WHITE&BRICK

※約1年前のfacebook投稿をリライト転載しています

BankART1929での企画展「Reading Room」

2004年。芸術系大学院への進学が叶わなかった橋本は、AITのキュレーションコースに通いながら今後を考えることに。タイミング良く、当時よく通っていたとあるカフェギャラリーの欠員求人が出たため、そこに飛び込み現場たたきあげの道を選びます。

ところがそのギャラリーは入社半年後に閉鎖。浮いてしまった企画をそのうちどこかでできないかなと、軽い気持ちでBankART1929 Yokohama(現・YCC)を訪ね、その時前のめりで対応してくれたスタッフが、現・HAPSの芦立さやかさんでした。

BankART Studio NYKのこけら落とし展示「食と現代美術」まで3ヶ月を切っていたからか、こちらの企画にも食が入っていたのがよかったのか、すぐに池田修ディレクターを呼び出していただきあっと言う間に共催企画としてはじめての企画展「Reading Room」を会場費免除などの好条件で行えることになります。これは、公設民営の柔軟性を生かしたBankARTの企画受け入れの典型的な例だと思います。お金まわりの配慮も、ただ減免というわけではなくて、その分中身にしっかり使って欲しいという池田さんのメッセージなんですよね。

プレ開館から一年が経ち、あの横浜会議2004(横浜トリエンナーレ第2回展の磯崎新ディレクター降板が明らかになったシンポジウム)が行なわれるなど横浜が何やら面白そう、となってきていたところでこの機会。橋本および同世代の作家たち(大久保亜夜子、川崎昌平、酒井翠、竹本真紀、東野哲史、ブックピックオーケストラ)は全力でのります。広報デザインは現・ノガンの茂木隆宏さん、運営は、元取手椿組の東工芸大生などにとても助けられました。

食と現代美術の藤浩志さんやみかんぐみの曽我部昌史さん、現・Fablab kamakuraの渡辺ゆうかさん、同じく共催展示を企画していたクリエイティブクラスターの岡田智博さんなど、いろんな人とここで出会いました。

北仲WHITE&BRICKと創造界隈

展覧会もよい経験でしたが、同じくらいうれしかったのは、直後にたちあがった北仲WHITE&BRICKに、Reading Roomメンバー一同声をかけてもらい、ブックピックオーケストラが作品を常設展開することになったことなど。橋本はいちばんお金がない頃で部屋をかりるのは無理でしたが、BankARTの芦立さんと吉田有里さん(現・港まちづくり協議会)によるヨシダテハウスなどに入りびたり、Chain reactionという企画個展のシリーズを持ち込みでやらせていただきました。

とにかくめまぐるしいスピードでいろんなことが起こっていて、BankARTのパブだとか北仲の片隅でそれらに関わるひとの話や活動を見聞きする、刺激的な日々でした。

「創造都市横浜(クリエイティブシティ・ヨコハマ)」宣言の元、「クリエイティブ・コア」として公設民営で早くも成果を出していたBankARTに、森ビルという民間が持ちかけた北仲WHITE&BRICKの立ち上がりもまた、創造界隈形成の典型(というか原点)的な話です。また北仲は期間限定の取り組みだったこともあり、横浜トリエンナーレ2005後のZAIM(財団が運営)、本町ビル→宇徳ビル(民間)へと事業がリレーできたということも特筆すべき点でした。

そして、そんな創造界隈に飛び込みたいアーティスト・クリエーター向けの拠点開設のための助成や、受け入れたい不動産事業者向けのリノベーション助成などの制度もACYにより整えられ、プレーヤーの増加を後押ししていました。

民間のチャレンジのいいところを行政が制度化するという動きが、いちばん効果的に機能していた頃だったのかなと思います。

生業は映像制作

なおこの頃の橋本の仕事は、大学の先輩が立ち上げた日本技芸(現ラクモ)という会社にお世話になり、IT系の映像制作に携わりつつ、愛知万博の前夜祭(伊藤キム総合演出『広小路ブルーミング・パレード』)やBankARTで行われたoff nibroll『public=un+public』を映像で記録してDVD化する(後者は出版コードをつけて販売)ようなこともしていました。そのままドキュメンテーション・コーディネーターの道をひた走っていた可能性もあったわけです。

茂木さんデザインのReading Roomフライヤーなど(ハンドアウトは自ら)

BankARTの未来へ向かうアーカイブ志向も様々に見ました。後の『BankART Life』は、横浜トリエンナーレに合わせた展覧会の記録だけでなく、施設の取り組みをセットに3年ごとに制作してきたアーカイブ冊子。

横浜会議2004は本当にびっくりした。これもBankART出版によりアーカイブ冊子化。

今回のタイトルは北仲の記録集からいただきました。淺井裕介さん、曽谷朝絵さん、西田司さん、吉田有里さんなど後にもお世話になる皆さん、登場しています。危口さんもOPEN!イベントで百人斬りやっていました。

Chain reactionで、自分の企画もはじめて記録をつくりました。記録写真も、テキストも、デザインもIllustratorで全部自分で頑張った。東谷隆司さん、村田真さんとのトークも簡単に収録。

off nibroll『public=un+public』。横浜トリエンナーレ2005のナカニワプログラムでも上映することになったり。実にいろんなことがありました。

この時期ウェブ上での情報発信はmixiとブログがメインでした。

見た展覧会とか、マメにブログにショートレビューを書いてたのだけど、自分でドメイン管理してたのが災いして全部消えてしまいました…

自分の企画については無料ブログでサイトをつくっていたので残っています。
http://reading.exblog.jp

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