見出し画像

第一線を走る経営者の挑戦【建築家 伊東忠彦さん】

「大きな成果を出す人」と「現状維持から抜け出せない人」にはどんな違いがあるのでしょうか。同じルールのもとで、同じ時間を過ごしているのに、人によって成果には差が出ます。ならば、一流の実績を出している方から学び実践することで、私たちの人生も変わるのではないでしょうか。

シリーズ「第一線を走る経営者の挑戦」では、一流の実績を出した経営者さんへのインタビューを通して、仕事の流儀や価値観に焦点を当てます。第1回は、建築家の伊藤忠彦さんにお話を聞きました。

――はじめに、伊東先生の経歴を教えてください。

終戦直後に生まれ、非常に厳しい環境で育ちました。「都市設計を学びたい」という想いから、22歳の時に渡米することを決意しましたが、当時は持ち出せる現金を国が規制しており、お金のやりくりはかなり厳しかったのを覚えています。また当時のアメリカと日本では年収に天と地ほどの差があったのも理由の1つです。

渡米してからは、カリフォルニア大学バークレー校で建築・都市設計を学びました。その後、近代建築の三大巨匠の1人であり、日本帝国ホテルなどを設計したフランク・ロイド・ライト氏の弟子たち80人が運営するコミューン(建築事務所 兼 学校)であるタリアセンで学びました。

タリアセンの次は、ニューヨークのワールドトレードセンターを設計したミノル・ヤマサキ氏の事務所で経験を積み、その後、広島平和記念資料館やフジテレビ、国連大学、東京オリンピック国立屋内総合競技場(代々木体育館)を手掛けた丹下健三氏の事務所で経験を積み、再び渡米して独立をしました。

設計した建築物は100を超えます。ご縁に恵まれ、さまざまな建築物に携わらせていただきましたが、知っている方が多いものを挙げるとハイアットリージェンシーですね。今では想像もつかないかもしれませんが、当時のハイアットはアメリカ南部アトランタのモーテルに過ぎませんでした。一緒にさまざまな問題を解決しながら、ハイブランドホテルに変貌させていきました。

――伊東先生は、建築設計だけでなくビジネスとしてもさまざまな挑戦をしてこられたイメージがあります。大きな実績を出すに至ったキッカケはなんだったのでしょうか。

そうですね、建築でも理想や哲学があっても、経済が伴っていなければ実現しないことは重視していました。建築家は、オーナーや建設会社からお金を頂いて設計する立場にあります。いくら理想とする建築物のイメージがあっても、下請けの立場に甘んじていては、「あれも修正してほしい」「これも修正してほしい」、場合によっては「安くしてほしい」という要求を受け続けることになり、いつまでたっても理想は実現できません。

そこで「ディベロッパー・アーキテクト」といって、建築プロジェクトを自ら作り、投資家に売り込む手法にアトランタで挑戦しました。いうなれば、俳優が監督になるイメージでしょうか。当初はかなり新しい手法でしたが、良い意味で図々しくなりました。いま振り返ると、わたしの人生において大きな財産となっています。

伊東先生にお話を伺うことができました

――「図々しさ」ですか。多くのひとはネガティブなイメージを持つと思いますが、ぜひ詳しく聞かせてください。

つまりは「口説く」ことです。図々しくても「ぜったいにこれが良いです。間違いありません」と自信を持って提案できる人と、そうでない建築家では明確に差があります。恋愛に例えると分かりやすいです。「あなたのことを一番よく分かっているのは私だし、一番幸せにすると決めている。あなたにとって、私以上の伴侶はいない」と告白されるのと「一緒になってくれないかな・・?」と告白されるのでは、全く違うのと同じです。

しかし「図々しい提案」が必ず通るかというと、そうではありません。確固たる自信があってこそ、相手の心を動かすのです。「自信」とは膨大な努力の結晶であり、努力の積み重ねによって形作られるのです。

では、情熱・技術・実績すべてが揃わないと提案できないかというと、そうではありません。私も駆け出しのころは、かなり背伸びをした提案をしてきました。私が図々しい提案をしてこられたのは「誰よりもクライアントのことを考え理解している」という自信と、「だれかがやれていることは、ぜったいに自分でもできる」という自信です。要は、自分を信じられる努力を積み重ねてきているかです。吐いたホラをホラでなくすために、努力で埋め合わせてきました。

――伊東先生は「頑張る」だけでは意味がなく、「頭を使う」ことが大切だと日頃から仰っています。そのことについても詳しく聞かせて頂きたいです。

大前提として、仕事の評価は他人がするものです。一方で「頑張る」とは、自分の仕事を自分で評価する言葉です。「わたしはこんなに頑張っている」と思ったところで、評価するのは他人であり意味がないのです。「頑張る」という言葉を多用する人は弱くてずるい人だと思います。他人からの評価が悪くても「私は頑張っているし」と逃げ道にしてしまうのです。

人間には2種類がいて、「私はこんなに頑張っているのに評価されない。だったら頑張らなくていいや」と能力のデフレを起こす人。もう一方は「自分が思っていたより評価されている。もっとやろう」と能力のインフレを起こす人です。

デフレを起こす人は、誰かから「貰う」ことを第一に考えます。
一方でインフレを起こす人は誰かに「与える」ことから考えます。
呼吸に例えるとわかりやすいです。ダイビングをしてみるとわかるのですが、呼吸をするためには最初に息を吐かないといけません。一方で吸うことばかりしていると過呼吸になります。そもそも呼吸という字は、呼(はく)が先で吸(すう)が後ですから、仕事も人間関係も呼吸と同じ、相手に与えることから始めるのが大事だと考えています。

――伊東先生がおっしゃると、言葉に重みがあります。いつから与えることを意識されるようになったのでしょうか。

幼少期からでしょうか。実は母の教えなのです。
「あなたは1つ損をしなさい。そうすればうまく収まるよ」と。

ビジネスにおいて、通常は50:50が対等な関係だと考えがちです。しかし私は1を相手に譲ることが大切だと考えています。そうすれば49:51になり、相手は2得することになります。自分が1譲れば、相手が2得するのです。

――成長する企業は「人が育つ企業」だと確信がありまして、伊東先生にも人の育成についてお話を伺いたいです。人の教育についてもお話を伺いたいです。伊東先生はたくさんのお弟子さんがいらっしゃいますが、人を育てるうえで大切にされていることを教えてください。

私は褒めて育てるのが大事だと考えています。何かうまくいかないとき、その人は自分の欠点などとっくに分かっているのです。分かっている欠点を他人から指摘されて、良い気分になるわけがありません。

相手の欠点を指摘しないためには、我慢が必要です。どこまで我慢できるかは自分の問題であり、そう考えると人の教育とは、相手に矢印を向けることではなく、自分に矢印をむけることなのです。

――伊東先生は78歳でありながら、新たに会社を設立するなど、精力的に取り組んでいらっしゃいます。いま「挑戦」していることを聞かせて頂きたいです。

実は昨年一度引退したのですが、デザインや設計、講演会、顧問就任など、さまざまなお声かけを頂きました。正直ここまで多いとは想像していなかったのですが、ゲーテの言葉に「今は何を成すべきか。日々の務めを果たすべき。」というものがあります。日々できることをやってみよう、目の前のことに尽くそうと決め、改めて会社を設立して挑戦することにしました。

以前はホテルなど大きな建築物が多かったのですが、最近は個人宅の設計に注力しています。クライアントの理想像を形にして提案することにやりがいを感じています。

――最後に、これから事業を大きくしておこうと志す経営者さんに向けて、エールをお願いします。

2つ、お勧めしたいと思います。

1つはブランディング。アメリカでは60%の企業がフランチャイズで、消費者から信頼を得たブランドを看板にして事業を拡張させています。フランチャイズをお勧めしているのではなく、自分を顧客に対して知らしめていく戦略を練って実践することが大切です。

2つめは一流の人から学ぶこと。私は仕事をするなかで、多くの方々から仕事の流儀を学んできました。アメリカでは大統領や、ドナルド・トランプさんとお仕事したこともあります。そんなビッグネームでなくてもよいです。業界で第一線を走る方は、その領域が大きくても小さくても、やはり「天下をとる」何かしらの原因をもっているのです。

お話をうかがって

今回のインタビューの前にも何度かお話を伺ったことがありましたが、いつも伊東先生のお話は膨大な知識と様々な経験とが合わさってとても勉強になります。
例え話も豊富で、誰でも共感できるように恋愛に例えてくださったりと、話がとてもわかりやすくとてもユニーク!
お仕事を通してクライアントさんとの信頼関係を築いてきた賜物だと思いました!
建築家(建物を築く)としてのお仕事だけでなく様々なビジネスを手掛けてこれたのは、伊東先生が何よりも「信頼を築く」ことを大事にしてこられたからでしょう。

橋本美菜税理士事務所は、
「社長の時間を生み出す財務パートナーに。」
「社長の成長を後押しする伴走者として。」
をミッションに掲げて、挑戦する方々をお手伝いします。
お気軽にお問い合わせください。

LINEでも情報発信しています。もしよければお友達登録ください♪


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?