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【#シロクマ文芸部】りんごかわいいひとりごと

りんご箱に入りたい、小さなりんごはひとりごとを言いました。

「おまえはまだ赤くないから」

農家のおじいさんはそう言いながら他の木のりんごを箱に詰めています。

ひとりごとを聞かれた小さなりんごは恥ずかしくて少し顔を赤くしました。

「お、少し色づいたな。その調子」

と農家のおじいさんはやさしく小さなりんごに話しかけます。

「おじいさんが入れているりんご、赤くないよ。わたしの方が赤い」

小さなりんごは文句を言います。

「私達は赤くならないりんごなの。あなたはまだ栄養を蓄える時期でしょ。大きくなるまで待ちなさい」

りんご箱のりんご達が小さなりんごに言いました。

1か月ほど経ちました。小さなりんごもすっかり大きくなりました。

「見事に赤くなったな」

農家のおじいさんはうれしそうにりんご箱に詰めました。そっと、傷のつかないように大切に大切に。フタを閉められガタンゴトンと運ばれているうちに、りんごはいつのまにか眠ってしまいました。

りんご箱のフタが開けられ光が差し込み、真っ赤なりんごは目を覚まします。知らないおじさんが箱をのぞいていました。

「だあれ?」

「果物屋です」と知らないおじさんは答え、りんご箱の中のりんご達をそっと取り出しました。1個ずつ丁寧にやわらかい布で拭いていきます。

ピカピカになったりんごは行儀よく店先に並べられました。

ピカピカしながらお客さんを待つりんごは、農家のおじいさんと青いお空を思い出していました。

お題が「りんご箱」と知ってこの歌を思い出しました。

かわいい唄なのに、そこはかとなく哀しみを感じさせる雰囲気が好きなんです。

今日は歌詞を童話風にアレンジしました。

小牧幸助部長、今回もありがとうございました。

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