不登校という名の家出、つまり旅人(プロローグ)

学校が嫌いだ。
厳密に言えば学校のある町が嫌い。先生もクラスメイトも嫌い。そしてその学校に通わせようとする親も嫌い。
とにかく全部が嫌い。
こっちも好きでこの街に来たんじゃ無いんだ。親の転勤でついてきただけなのに、なんでこんな目に…

数ヶ月前に転校した学校でいじめのターゲットにされた。言葉が訛っているから始まり、汚いだキモいだ難癖をつけられて終いには省かれる。
親に訴えても学校には行かされ、休むどころか不登校すら許してもらえなかった。
正直学校なんかどうでもよかった。勉強だって興味ないし、仮に嫌いな場所で勉強したって身につく訳ないし。友達も作る環境がないなら習い事もクラブ活動もやる意味ないし。
…外に出たいな。
こんなふうに考えてるの何回目だろう。
外から見た世界はどんなだろうか。外にはどんな風があるのかな。街も人も見えるものが違うんだろうな。
いつだって外のことばかり考えて生活していた。
だったら、もう外に出ちゃえ。

決めた瞬間、自分の中にある何かが切れた。
ちょうど後少しで新学期。外に出るならここしかない。
この時のためにこっそり貯めたお年玉。宿泊学習で使うはずだったボストンバック。着替えと歯ブラシ、トラベラー用の石鹸シャンプーをありったけつめて、真新しいスニーカーを下ろして誰も起きてこない家を飛び出した。
一応、親が起きて何か騒がれたら困るので、書き置きという名の手紙は残しておいた。
まあ、携帯電話もスマホもないから、捜すのは大変だろうけど。
朝日がようやく顔を出してきた。
地図もないから行き先なんて決めてないけど、近所で終わる旅なんてつまらない。
歩けるところまで行こう。
期間も目的地も決めていない。ゴールのない旅の始まりだ。

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