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樹木希林さんのこと

 樹木希林さんが亡くなったと聞いて、大したことじゃないけど、ちょっと書いておこうと思う。

 私が音楽評論家・湯川れい子さんの事務所でアシスタント・バイトをしていた時代、色んな人がやってきたり、電話をしてきたりして、実に多くのいわゆる「有名人」という人と話をする機会を得た。その一人が樹木希林さんで、もう30年ぐらい前のことだ。

 湯川さんの息子が当時夏になるとアメリカの少年少女対象の「サマーキャンプ」なるものに1か月とかそれぐらい行っていた。少年少女たちが共に夏にキャンプをし、あらやだ、ハリウッドの青春映画みたいだわ、なシチュエイションだと想像する。主演はマット・ディロンでお願いします。

 で、そのキャンプ地がどこだったのかはまったく忘れたけど、そこに樹木希林さんの娘さん、今思うと内田也哉子さんだったわけだが、彼女がどういういきさつだか、同じサマーキャンプに行くことになり、そういうとき湯川さんは俄然、姉御肌を披露したくなるタイプだから、いいわよ、私が手続きやってあげるから、という感じで色々請け負ったようだ。

 とはいえ、例えばキャンプ地へ荷物を発送する手続きあれこれとか、何やらあれこれファックスするとか、実際にやるのは秘書である私。クロネコヤマトの海外便だったのかなぁ?色々調べて、湯川さんの息子の分、内田さんの分、と両方を送ったり、なんだかんだした。

 で。普通ならそれで「湯川さん、ありがとうね」で終わり、私の影など一分も見えないものだけど、樹木さんは違った。サマーキャンプに也哉子さんが無事に旅立った後だったか、事務所に電話をしてきて、最初は湯川さんがしゃべっていたものの、急に湯川さんが「樹木さんが和田と話したいと言ってるのよ」と言って電話を代わるように言う。えっ? 私? なんで?と思って電話に出ると樹木さんが「和田さんですか? 今回は荷物の発送をありがとうございました。面倒なことをお願いしてしまい、すみませんでした。本当にありがとうございます」という。頭の中にリンゴ殺人事件~~~♪がたちまち流れだし、ジュリーって身悶えする姿が浮かんだが、実際の樹木さんはなんと義理堅く、そして実のある人だろうと、私の方が身悶えした。

 電話を切ってから湯川さんが「荷物を実際に送る手配をしたのは湯川さんじゃないでしょう?秘書の人でしょう?その人は誰?代わって、って言ったのよ」という。そんな人は後にも先にも樹木さんだけだった。色々な人の色々なこと。。。例えばコンサートのチケットを取るとか、何かのお祝いにお花を贈るとか、何か特別なものを買ってきて送るとか。湯川さんに頼まれたこと、湯川さんが請け負ってきたこと、あらゆることを湯川さんの名前で様々しても、みんなお礼は湯川さんに言う。当然だ。それがアシスタントの仕事だから。アシスタントは黒子だ。湯川さんがみんなに好かれ、喜ばれるために働く。でも、樹木さんは、そのアシスタントにまで気を使う人だった。いや、アシスタントにこそ、気を使う人だった。

 その後、雑誌のミュージックライフの古いのを読んでいたら、樹木さんが悠木千帆の名前でガールズロック・バンドについて原稿を書いていたを見つけた。なんだかもっと好きになった。
(↑ ってこれ、私の思い違いだったみたいです。記事を書いていたのはゆうきちよ、という女性ライターさんだったよう。ごめんなさい! でも音楽誌で出ていた気がして、う~んう~ん。。。往生際悪いのでまた調べます)

 

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