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真面目にうんこについて語る

今まで私のnoteで、うんこについてたくさん記事を書いてきた。

 うんこを題材にすることで、日々の出来事をネタ記事として消化してきた。しかし、ネタ記事として消化してしまったが故、「牛のうんこ」が何たるかをこれまで全く述べずにきてしまった。今回は、原点に立ち返り、真面目にうんこについて述べてみることにする。


うんことは未消化物の塊

 酪農産業は、端的に言えば牛にエサを給与することで生乳を作り出す産業である。産業である以上、生産性を最大化することが目的であるため、酪農産業の場合には、生乳生産を最大化することで、多くの利益を享受することができる。
 ただ、牛も動物であるが故、エサの全てを生乳に変換することはできない。
 下図のように、飼料中のエネルギー(GE)から、糞尿、ガス、発熱にかかるエネルギーが取り上げられ、その残りの正味エネルギー(NE)の一部が泌乳に使われる。

エネルギーの分配

 生乳生産を最大化しようとすれば、牛ができるだけ消化できるものを食べさせ、糞の量を減らすことが必要になってくる。

うんこは消化の質を示す指標

 牛は、反芻動物なので4つの胃を持つ。第一胃(ルーメンとも呼ぶ)から第四胃まであり、口から入ったセンイ(牧草)を第一胃で発酵させることで、消化することが可能になる。動物はセンイを消化させることが難しい。なので、草食動物は、反芻という行為を行って、長い時間をかけて第一胃内の微生物によって揮発性脂肪酸(VFA)に分解され、初めて栄養として摂取するという難解なプロセスを踏んでいる。
 食べたものがちゃんと消化されるためには、第一胃内のpH(ルーメンpH)が安定していなければならない。これが崩れたとき、うんこがゆるくなる。第一胃は人間の胃と異なり、pH6~7の弱酸性である。第一胃内が酸性へ傾くと第一胃内の微生物の活動が弱まり、消化できなくなる。消化できなくなったものはそのまま胃から腸を経由し、うんことして排出されるわけである。
 消化されないうんこは、エサの粒が残り、腸から分泌される水分により、ゆるい状態となる。
 一方で、状態の良いうんこというのは、よく「オートミール状」と形容され、ほどよい柔らかさとなる。このように消化の状態に応じてうんこの形状や質感は変わってくる。なので、うんこを見ることは重要なことである。

牛糞のモニタリング手法(マニュアスコア) スコア3が基準

バランサーである反芻

 上記の説明では、①牧草は反芻によって揮発性脂肪酸に分解され、②第一胃内が酸性へ傾くと第一胃内の微生物の活動が弱まると言った。ということは、牧草を食べることで揮発性脂肪酸ができ、第一胃内は酸性に傾くんじゃないと思うかもしれない。
 ところが、反芻という行為は思いのほか合理的な行為である。反芻、つまり第一胃内にある消化中のものを口まで戻すことを繰り返すわけである。これにより、口から分泌される唾液を利用することができる。唾液はアルカリ性であるため、牧草から産生される揮発性脂肪酸と中和され、第一胃内が賛成に傾くのを防ぐわけである。反芻が消化のバランサーとなっているのである。

食事のバランスが大事

 人間は愚かなもので、生乳生産を最大化させるために、牛が自然ではあまり食べてこなかったデンプン(穀物)を利用している。デンプンを利用することで、センイよりも圧倒的に効率よく大量のエネルギーを得ることができるようになった。しかし、デンプンはセンイよりも脂肪酸を作り出すため、第一胃内が酸性に傾きやすい。なので、大量に食べてしまうことで消化不良になってしまう。
 牛が普通の人間よりも良いところは、栄養バランスの良いものを食べられることである。多くの農場では、エサ設計を行うことで、生乳生産を効率よく行える。牛がしっかりと消化し、健康でいられるように、センイとデンプンのバランスはもちろんのこと、様々な栄養素のバランスがとられるように設計されている。
 しかし、エサは常に同じものではないので、毎日ちょうどよいバランスになるとは限らない。そのため、日々うんこを観察し、エサの微調整をする必要があるのだ。

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