朗読劇「はなしぐれ」感想・考察 #2

前記事の続きです。
どちらかというと構成的な考察です。このあたりは前記事とちがってあまり自信がないですが、頑張ります。

2:劇中作「花時雨」から感じた歪み

見出しなので強い言葉を使ったが、、、進と美波の物語のある種のメタ的な魅せ方で劇中作は展開していくが、それがなんとも言えない不快感を感じた(褒めてます。マジで褒めてます。こう書くしか表現出来なかった)ので、それについて思考を進めていく。

2-1:いつの物語??

ここを読み違えると全体にガタが出る気がする。
冒頭から進と美波の物語の合間に入る劇中劇、あれはどれがいつ書かれたものかの話。

以下漫画内シーン(台本参照)

ACT2
ACT4
ACT5(一部)
ACT8(現実と交差)
ACT9(美波の過去との決別)←例のアレ
ACT10(進が読む)

例のシーン以外は本編中に書かれたものだと考えている。(前記事で違うこと言ってるかも。)
その後進がそれまで書き溜めたものを読むシーンACT10で知る物語の全貌を小出しにしているのが「はなしぐれ」の縦時間2~8。
進は自分といる間に美波が書いた「花時雨」の「道留」が自分をモデルにしていると知っているため、美波の気持ちを知ることになる。が、、、

2ー2:じゃあ、お前は誰なんだよ問題

ACT9。初稿ってことにします?
こんなん初見じゃ混乱するわい。
結局「みちる」って誰だったの?? の話。
台本とかビジュアルとか、公式のプロモなどで
美波←→マリア
進(海流)←→道留
慎介←→恭介
の構図を立てられていて帰りの電車で「やられたわー」と悔しくなった。

美波←→マリア
進←→道留
なし←→道留(初稿)
海流←→恭介?(道留)
慎介←→恭介

自分で書いててちょっとわかりづらいなとは思う。
このあたりは思い切りよく行った方がいいと思うのでそうするが
道留なんて最初からいなかったんだよって話。

言い過ぎか??
どこか違和感を覚えながら見ていた。
美波からマリアが生まれたのは夢小説オリ主的な思想だとして、
道留が海流をモデルにしていたとして、道留と進、そんな似てるか?? と。

思い出って美化されがちだと思う。
兄に会いたい美波の執着が生んだのが道留だったが、きっと文字通り理想の兄/男性が道留だったのだろう。
ACT9にて「恭介?」とマリアの「兄弟が好きあっていたなんて」の会話から本来、海流から生まれたのは恭介?だったと考えていいと思う。
スケッチブックの一枚目、原初の欲望的な。
だから「出展用に書き直した」。
それが蘭子の目に留まった。

2-3 いわゆるトリックスター


この考察に一個クソでか大穴があってそれが蘭子の存在。
劇中作「花時雨」って観客と進しか知らなかったんじゃねえのって話です。
蘭子の差す「みちる」が、我々が見せられた「道留」と違う人物だというアプローチ。
蘭子と美波のシーン。
最初は美波のセリフは「道留はもう~」と書かれているが次は「海流(みちる)のこと~」と書かれているんですよね。
↑公開直前に気づいた。

つまり……。

①ACT9(初稿。こてこての兄弟恋愛。美波が置いていった思い出、消した道留)

②コミケ出展品(蘭子と慎介の知るもの)

③劇中作(進と観客の知るもの)

の3つの「花時雨」が登場することになる。

蘭子は慎介の顔が好みだった。
我々の見た恭介が慎介をモデルにしていたとして、、、
恭介?(道留)とマリアが恋に落ちる物語がコミケに出したものだとしたら蘭子が道留のことを好きになる流れが凄く自然だと感じる。

蘭子が道留をモデルにしていたハズの進をマジ嫌いしていたのも納得がいく。
美波の云う美しい思い出が指すものが①だとしてそれを破る(別れを告げる)ことで③に、進との物語を進める着地先にもなるしね~。

まぁ、学生証の流れと、進を見て酔った美波が
「本当にそっくり」と言うシーンを踏まえて進は本当に海流と似ているのだとするとここまで書いた1,000字が無意味なものとなりますけどね。

自分が男なのが大きいと思いますが、美波と蘭子は他人の感覚がほど強く、二人の思考の流れは読めない部分があってこのあたりで難航しました。
吉岡さんもこの二人は、特に蘭子はそういった読めない人物造形にしているような気がするんですが……どうなんでしょう。
女性考察者の意見を聞いてみたいところではあります。

書きたいことはたくさんあるんですけど、「自分ひとりの力で出力したい内容」はここまでかなと。
あとは吉岡さんの言葉や、他の方の感想など(この記事書くために一切見ないようにしてた)を借りて楽しもうかなと思います。

おまけ3 推し

ライトな話をしましょう。頭を使って憑かれました。
ここでの推しは役者さんではなく登場人物の話。

筆者は慎介と岩淵さんが特にお気に入り。
たぶん癖(へき)です。この二人みたいなタイプの男キャラばかり好きになってるので。

慎介、幸せになってくれよ。マジで。
筆者は3講演観劇した。その3回とも濱健人さんでした。
回を重ねるごとに濱さんの演技の凄みが増していて圧倒されました。
特に自分は27日3講演目は2列目で、濱さんが涙ながらに慎介を演じ上げるその様を目の前で浴びることができ、ありがたかったです。
濱さん推しの方はこれ読んでますかね??

半面岩淵は
3回とも別の役者さん。
浦尾さん木島さん入江さん。岩淵を演じるお3方全員の演技を見比べることが出来た。
ダブルキャスト、トリプルキャストの作品を複数回見たのが今回初めてで、役者さんによってその登場人物のどこを中心に作り上げるかの色。その違いを楽しむことが出来て新しい楽しいを知ることができました。

おまけ4 終わりに推し語り

吉岡茉祐さんの話。
多分これから、ないし今日の放送(仕事でリアタイ出来ず無念)などで作品に込めた思い。
答え合わせが待っているのでそれを楽しみにしつつ。

やはり吉岡さんの演技って実在性を凄く感じるので好きだなといつものことながら感じた。

以下印象に残った吉岡さん

①蘭子との会話の苦笑い
知ってる笑い方だった。良い。このほかにも吉岡さんの癖が見えるところが多く生の人間を感じられる。

②教授の悪口「絶対変態だよね」
ここにあまりにも女子大学生「島崎美波」の実在性を感じてしまう。
重要なセリフではないが、それ故にここにベスト演技を上げたいくらい。
吉岡さんの演技は砂のように細かさを感じています。
1粒1粒は細かくて見過ごしてしまいそうになる、あるいはそれだけ見ても全体がわからない。けれどそれが集まって形となったときに役が人間になるんですわ。

③蘭子とのシーンのごめんなさい
何をどうしたらあんな悲痛な「ごめんなさい」が出てくるのだろう。他作品にはなるが、プロジェクトセカイの桐谷遥にも「ごめんなさい」と絞り出すシーンがあるが、その時にも同じことを思った。当時はまだ吉岡さんのことを知らなかったなとしみじみ。

④ラストシーン
特に最終公演。
進の告白を聞いたときの美波の嬉しそうな、それでいて呆れたような笑顔。あまりにも美しかった。
何でもそつなくスマートにこなせる吉岡さん、その印象に引っ張られがちだけど一番すごいのは瞬発的な爆発力だと思う。
その爆発力があのラストシーンで遺憾なく発揮されていた。



沢山書いた。Twitterの書き散らし含めて。
140字そこらじゃ書ききれないですよ。
せっかく作ったノートなので、なんか思い出したらまた書きます。


朗読劇っていいなぁ。

この群青には果てがない


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