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「転がる石には苔が生えぬ」というけれど【2022.08.23】

「転がる石には苔が生えぬ」ということわざがある。苔が生える間もないほどに、動き回っている人や状態のことをいう。英国のことわざ”A rolling stone gathers no moss”から来ている。

面白いのは、「身に付けるものがなく大成しない」という否定的な意味と、「常に活動している人は、時代に遅れることがない」という肯定的な意味の両方があることだ。前者はイギリス、後者はアメリカで一般的だという見方があり、それぞれのお国柄を表しているようで興味深い。

さて、転勤を繰り返し、ころころと変わる興味の赴くままに生きてきた私は、さしづめ転がる石だろう。積極的な意味を見いだしたいと願ってはいるけれど、年を重ねてきてさすがにバテてきた。ここで少しは「苔」を生やしてみるのもいいかもしれないと思い立った。

高台のマンションの擁壁に生えた苔。さわってみると、ふわふわしていた。

勤務先の会社には、一定の勤続年数に達すると、長期慰労休暇を取得できる制度がある。ただし、その権利が行使できる期間は決まっている。その期限が8月末に迫っていた。未消化の場合は、1日当たり数千円で買い取られるだけ。せっかくなので滑り込みで取得してみた。

今回は最長2週間ほどの5日間の休みを取れるところ、慢性的な人手不足や休職者がいる部署なので半分ほどに。上役には6月頃から相談し、根回ししておいた。取得できるだけマシである。ほとんどの部署では取得できない。育児休暇と同じで、制度はあるが、人の手当は現場任せなので、カバーできる人材に乏しい職場では難しい。

せっかくのオフなのに、ノープランだった。本来なら、英国語学留学に行く予定だった。コロナ禍で来年こそは…と待っているうちに期限が差し迫ってきた。

最初の目標や予定の当てが外れると、何をすればいいのか、分からなくなってしまう。

国内英語留学はどうだろう? 英語漬けの毎日を送れば、停滞している英語学習の突破口になるかもしれないと思ったが、短期集中コースは満員で断念。

リフレッシュしようと思って、「女性一人旅」「リセット」「デトックス」とネット検索してみた。「疲れた心身を大自然の中で癒やす」といった惹句にひかれ、一度予約しかけたが、プログラムの詳細をよく見ると、「朝6時からヨガ」「朝食は梅湯」…。断食(ファスティング)の体験ツアーだった。う~ん、私には耐えられそうにもないと慌ててキャンセルした。魅力的な宿泊地はあったけれど、猛暑の中で遠い場所へ行くことを考えただけでも疲れそうで、怖じ気づいてしまった。

ああでもなくこうでもなく思いあぐねて、3回は予約、キャンセルを繰り返した。プランを決めるだけでドッと疲れてしまった。休み慣れていない人間が休みを考えるのは難しい。


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