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刃物専門編集者の憂鬱 前口上

はじめまして。「編集者&ライターときどき作家」の服部夏生と申します。
肩書きそのままに、いろいろな仕事をさせていただいているのですが、ちょっと珍しい「刃物専門編集者」としての日々を、あれこれ書いていこうと思います。

* * *

■そもそも、なんだ、その、刃物専門編集者ってのは。


そもそも「刃物専門編集者」ってなんだ、という話である。
と、のっけからつかみを持ってきたように思わせておいて、なんの捻りもない。
文字通り、刃物にまつわる本の編集者である。

包丁からナイフ、斧、大工道具に至るまで紹介してきた。どちらかと言えば、趣味的な分野の方に比重をおいている。ただし日本刀に関しては、著作はあるが、基本的にノータッチである。

包丁? ナイフ? 斧? 大工道具? 日本刀はジャンルが違う!? 
そんなん知らんし。
ていうか、そんなピンポイントの分野に、紹介することなんてあるのか、と言う向きもあるだろう。
僕も最初の2年くらい、いや5年くらいはそう思っていた。

ある。が結論である。

理由は至ってシンプル。だって四半世紀も続けてきたんだもん、である。
語るべきこと、紹介すべきことは、今だって、尽きる気配がない。

これは何も、刃物に限ったことではない。鍋のふたにも、スリッパの中敷きにも、語るべきことはいくらでもあるはずだ。続くかどうかは、ジャンルの中身ではなく、そのジャンルの情報を「益」とする人の数がどれだけいるかに、ひとえにかかっている。

そして、刃物の世界には、決して多くはないものの、情報を得たいと感じている人は、一定数いるのである。誰かは知らぬが(俺だ、と言う人物を数人知っているのだ)、最初に専門誌をつくろうと考え出した人は偉いな、と思う。

僕は、そんな世界で、のそのそ本を作っている編集者なのである。

もちろん「刃物専門編集者」なんて肩書きは、自分で勝手につけたものだが、前述したように、わりと小さなマーケットなので、こと雑誌や書籍の世界に関して言えば、「日本唯一」と言ってもいいだろう。(もし、違ってたらすぐに取り下げますんで 笑)

■ちょっと自分語りさせていただきます。


もともと刃物が好きだった訳ではない。

本づくり好きがこうじて新卒で入った出版社で、ナイフの専門誌に配属されたのである。
包丁すら握ったことがないような、まさに知識皆無からのスタートだった。

好きでもないし、知りもしないディープな世界に、いきなり放り込まれたわけである。

故アントニオ猪木氏には、修業時代、力道山のクルーザーに乗せてもらって喜んでいたら、いきなり海に放り込まれ、置き去りにされてしまい、命懸けで泳いで岸に戻ったという、パンチの強すぎるエピソードがあるが、気分的には、それに結構近いものがあった。

「これは、すぐに辞めるな」と自他共に認めていたはずなのに、ずるずると四半世紀も携わり続けることとなった顛末を、ゆるゆる書きていきたい、と思っているのだが、とにかく、縁あって、業界の末席の、そのまた末席を汚しているわけである。

フリーランスとなってからは、縁あって、ホビージャパンという出版社から刃物にまつわるムックを何冊か出させていただいてきている。

本の制作にまつわる話も、つらつらと書いていきたいと思っているが、まずは、ごく簡単に「刃物専門編集者」としての前口上である。

■一応、プロフを下に貼っておきます。


刃物専門編集者。専門誌『ナイフマガジン』等の編集長を兼任したのち独立。編集者として『ナイフダイジェスト』『アウトドアナイフの使い方』(いずれもホビージャパン)などを企画・制作する。ほか「BE-PAL」(小学館)はじめ各紙誌にも寄稿。全国の鍛冶屋を訪ねた『打刃物職人』(共著·ワールドフォトプレス)、刀匠の技と心に迫った『日本刀 神が宿る武器』(共著·日経BP)といった著作に加え、『ブキャナン=スミスの斧本』(グラフィック社)を監修、『刃物と日本人』(ヤマケイ新書)に対談を寄せるなど、刃物の魅力を文字を通して伝えている。


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