あなた、あるいは現代の食人族とヴィクトリア朝

シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』という小説を買った。ヴィクトリア朝のロンドンの話で、怪奇小説の『ジキル氏とハイド氏』やゴシック小説の『フランケンシュタイン』や『吸血鬼ドラキュラ』のキャラクターたちが出てくるらしい。ヴィクトリア朝ロンドンが舞台でゴシック小説や怪奇小説のキャラクターが出てくる本と聞いて思わず買ってしまった。そしてわたしはこの本を読むために元となった小説を再読しようと目論んでいる。ホームズも出てくるがホームズをすべて読むのは流石に骨が折れるのでホームズはいくつか読むだけに留めることにする。とりあえず今読んでいるのは『フランケンシュタイン』です。『フロム・ヘル』を読んで以来ヴィクトリア朝が舞台になったお話をもっと読みたいと思っていたので楽しみだ。

ルッジェロ・デオダート監督の『食人族』を見た。タイトルの通り人を食べる部族が出てくる映画だけどこれがとてもよかった。食人族なんて野蛮な人たちがいますよって映画ではなくて、本当に野蛮なのは彼らのテリトリーを踏みにじった白人、西欧文明なのではないかという映画だった。劇伴がとにかく美しくて、映画自体はものすごくグロい映画なのだけど、美しい音楽と合わさって画面がグロいのに美しいというとんでもないことになっている。動物を殺す描写があったりして、ふつうに問題なのではないかと首をかしげるシーンもあるのだけど、その破壊的な暴力が音楽と作品のテーマとマリアージュしてとても残酷だけど美しい映画になっていた。
この映画の源流は『世界残酷物語』を代表とするモンド映画(世界中の処刑とか奇習とか衝撃的な映像を虚実織り交ぜてドキュメンタリー式に撮った映画群のこと)なのは間違いないが、そういう俗で見世物小屋的で下賤な映画の血を引きながら──その俗物さを纏いつつ──真に迫るテーマと目をそむけたくなるような美しさを獲得している。わたしは最低なもの俗物的なものキッチュなもの──怪奇小説やゴシック小説や幻想小説だってそうだ──がある種の「崇高」(鍵括弧付きで)さを身に着け、俗が反転し聖なるものになることはあるように思う(そういった意味で『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』も楽しみな作品だ)。そしてそうした作品が過去から現代へ語り継がれていくことがわたしはとても大切だと思う。食人族もヴィクトリア朝もわたしやあなたの眼前に実はあるのだ。

ミニ文芸誌の『たくさんの的vol.8』を無事発刊できた。6月13日(火)までの限定発刊なのでよかったら読んでいただけるとうれしいな。わたしは小説を書いています。

https://twitter.com/100yearskodoku/status/1665996984329838594?s=20

詳細は上のツイッターのURLに書いてあるけれどここにも書いておこう。

セブンイレブンでネットプリントを選択し予約番号に「07936863」と入力して 「A4 モノクロ 小冊子印刷 右綴じ」で印刷してみてください(印刷代が80円かかってしまって申し訳ない)。

またPDFで販売(こちらも6月13日(火)まで)もしているのでセブンイレブンまで行くのが大変だったりしたらこっちで入手していただけるとうれしいです。

いやいやそもそも『たくさんの的』ってどんな内容なの?という方は下のURLからまるっと一冊試し読みができるのでこちらも是非


告知ばかりしてごめんね。でもに読んでもらえたらとてもうれしいです。まだ見ぬもしくは見知ったあなたとわたしたちが良き出会いであることを願っています。

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