共喰い 田中慎弥 感想文

 ネタバレあり 要注意


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 遠馬の母が雨の中、父を刺すシーンは良かった。ただ、映画でかこのシーンが予想よりもシンプルになっていたので、ちょっとしょんぼりだった。
 父が遠馬の彼女の千種を犯すとは予想がつかなかった。純文学とはいえど読者を引き付ける要素がこの小説にはあった。私は、この点をよく吸収し、純文学だから内容はなくてもいいという考えを捨てて、ドラマ作りに重きを置く必要があるなと感じた。
 父は刺されても同情できないほどのくずだと思った。人間、悪意なく悪行を重ね、見捨てられてしまうと、大きな事件になってしまうのだなあと思った。ケーキを三等分できない少年たち(タイトルが違うかもしれない)、という本が流行ったが、無邪気に悪行を重ねてしまうのが、本当の悪いことなのかもしれないと思う。遠馬の父も、悪気があって琴子さん、アパートの前に座る女、一緒に暮らす女を殴っていないだろう。当人からすると性行為中に女を殴るのは通常なのだろう。ひどいもんだが。本人の通常を積み重ねた結果、義手の女に刺されてしまったのだ。何事も三方よしを念頭に行動しなければ、こうなってしまうのだろう。恐ろしい。

 タイトルの共喰いが意味するかは何かというと、汚水に暮らす鰻が一対で、それを釣り上げて好んで食う父がもう一対だと思われた。


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