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他者理解の進め方 ステップ4

ご覧いただきありがとうございます。
シリーズとしてお送りしております、他者理解の進め方、本日の内容はこちらです!

共感する力

他者を理解するうえで、相手がどのように感じるのか、相手はどのように考えているのかを想像する力、いわいる「共感力」というものが必要になってきます。

今日はこの、「共感」について一緒に考えていきましょう。


「共感」とひとくくりののしてしまえば簡単なように思われますが、自閉スペクトラム症の特性を持つお子さんは、他者の気持ちや考えに共感することが難しく、それを鍛えていくのも骨が折れます。

「あいての気持ちを考えて・・・」
とか、
「お友達が嫌な気持ちになるよ」といった言葉を投げかけてもあまり効果が期待できません。

前回の、他者視点の理解が進んで、相手はどうやら自分とは違う世界の見方をしているぞ、ということを理解し始めたら、次は「共感力」に駒を進めていきましょう。

気持ちの共感

私の考える、「共感力」にはいくつかステップがあります。
まず初めに、「気持ちの共感」

相手は今、うれしいのかな、かなしいのかな、おこっているのかな、というように、どのような感情を持っているかを想像し、感じ取ることができる能力のことです。

気持ちを感じ取るには、相手の表情や、姿勢、身振り・手振りなどの外側から見える情報の他に、声のトーンなどから聞こえる情報などによっても感じ取ることができます。

表情の書いてある写真や絵カードをみて、感情を言い当ててみたり、声色を聞いて言い当ててみたりするゲームなどが有効かもしれませんね。

考えの共感

感情が理解出来たら、次は「考えの共感」です。

かなしい、という感情は人が変わっても、かなしい、というもので変わらないと思います。
しかし、その感情に付帯する、「考え」は人によって異なります。

たとえばAさんは「かなしい」感情を抱えた時に、「○○くんのばか!もう遊んであげない!」と考えます。
一方Bさんは、同じく「かなしい」感情を抱えていますが、「わたしのバカ!なんでいつもうまくいかないの?」と考えます。

Aさんは何か悲しみや怒りを感じたときに、他人の責任にする「他責思考」を持つタイプで、Bさんは自分の責任にする「自責思考」を持つタイプです。

このように、同じような場面・状況、そして泣いていて「かなしい」という感情を持っているようだ、というところまで共通していたとしても、「考え」は全く別物ということもあり得ます。

どのような考えを持っているのかな、というのは聞いてみないとわからない部分でもありますが、想像をしたり、他の人の意見を聞いたり、物語をよんで多様な感情や考えを自分の中に蓄えていくことが大事です。

考えを言語化することがそもそも苦手なお子さんが多いですので、気持ちに付帯する考えを考えて、発表するというワークは、気持ちの言語化の練習にもなりますし、他者の考え方を知るいい機会にもなります。

誤信念理解

誤信念を理解する。あまり聞きなれない言葉だと思ます。
誤信念とは、他者の信念(信条、考え、心など)は必ずしも自分とは一致しない、違った信念を持っているものだということです。

自分の見てきたもの、知っているもの、感じているものは、相手は知らないということを理解する能力のことです。

よく小さいお子さんは、あたかも大人もそれを知っているかのような口ぶりで話をします。

「昨日テレビで○○やってたでしょ?え、知らないの?どうして??昨日テレビでやってたのに!」

といった具合です。

自分はテレビを見ていたから知っている、だけど相手はそれを見ていないということの想定がまだできないのです。

このような力がついてきているかを簡便に調べる課題が、「サリーとアンの課題」です。誤信念課題と言われます。

この問題を客観的に見ている「わたし」は、
アンがサリーのビー玉を自分の箱に移したという事実をしっていますが、サリーはその場面を見ていないのでサリーはその事実を知らない、だからサリーは自分のかごを探すだろう、というのが正解です。

ただし、この誤信念が理解できていないお子さんでは、
「ビー玉はいま、箱にあるからこっちを探すよ」と言います。

この課題を遂行するには、自分の見ている客観的事実の時間軸の線と、サリーの見ている(あるいは見ていない)時間軸の線を行ったり来たりしながら、”サリーはしっているか”、どうするかということを考えなくてはいけません。

誤信念を理解していないお子さんでは、難しい課題になります。

もう少しやさしい誤信念課題に、スマーティー課題というものがあります。

”検査者はあらかじめお菓子の箱に鉛筆を入れておきます。
対象の子供にお菓子の箱を見せ、
「この中には何が入っているでしょう?」と聞きます。
こどもは、「おかし!」と答えるでしょう。
実際に開けると、その中には鉛筆が入っています。
対象の子供に、「同じ質問を○○くんにもしたら、なんて答えると思う?」という質問をします。”

「お菓子と答えると思う」が正解です。
これも、自分は知っているけれど、○○君は知らない、ということの理解ができるかどうかの課題になります。

サリーとアンの課題とちがって、登場人物が自分や検査者、友達といったわかりやすい構成になっていますし、誤信念を推測する対象が出てくるのが最後の方ですので、考えるべき時間軸の移動も少ないため、誤信念課題の中では比較的やさしい課題とされています。

逆に、もうすこし難しい、アイスクリーム課題や、誕生日課題という誤信念課題もあります。
これらは、登場人物や時間軸が増えるため、さらに難しい設定になっていますので、二次的誤信念課題とも呼ばれます。


共感的理解

そして最後に、「共感的理解」です。
これは大人でもなかなか難しいです。共感的理解ができずに社会の中でトラブルを起こす方は少なくないでしょう。

かなり前頭葉の発達を必要としますので、しっかり育ってくるのは思春期以降ではないかと思います。

「共感的理解」とは、相手の立場に立って、理解する。というものです。
相手の立場というのは、相手の置かれている状況、たとえば家庭環境や生い立ち、持病や障害の特性、性別や性格なども含めた、一人の人間としての「相手」に対して、なぜそのような感情を持つのか、なぜそのような考えに至るのか、なぜそのような行動をとるのか、今起きている現象だけではなくその人の性格や背景なども踏まえたうえで、理解をし、共感するということです。

たとえばお友達を殴ってしまったというAくんに対して、怒っているんだな、とか「なにするんだコノヤロー!」と心の中で叫んでいるのかなとか共感を示すことはできますが、そこからさらにその子の気持ちによりそうように共感的理解をしめすには、家で嫌なことがあったのかな、今日はあまり眠れていないのかな、体調が悪いのかなというように、今目の前で起きている現象だけでなく、背景にも目を向けて、共感を示していくことが重要です。

お友達と仲良くなるためのワークとして、たくさんお話をしながら、相手の好きなこと、嫌いなことなどをインタビューしていくようなものが有効であると思います。


今日は、「共感」について考えていきました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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