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工学部を選ぶ理由:受験生と保護者へのアドバイス

はじめに

対象

  • 理系高校生

  • 文理の選択を迷っている高校生

  • モノづくりを将来したい小中高生

  • その保護者の方

伝えたいこと

  • 工学とは,数学・物理・化学を応用(実用化)すること

  • 学ぶために大学に進学することになる

  • 高校で数学・物理が好きだった人は向いているかも

  • 過半数は大学院にいく

  • 就職先は多い

  • 工業とは少し違うかも

  • モノづくりに関わることを体系的に学べるところ

  • 物理・数学に興味がないと職業訓練校みたいになるかも

作成者

  • 国立大学大学院生

  • 工学部機械工学科(大学院もそのまま)

  • 研究室で人工衛星を開発

なぜ書くか

塾でアルバイトしているのですが,来週が共通テストということで受験生がとても真剣に勉強していたため,何かしらの形でサポートしてあげたいと思ったため.

(ただちょっと文字数書きすぎたので、途中から有料にしています。また思いつきで書いたので、文章が冗長でまとまっていませんので、悪しからず。修論が終わったら遂行したいと思います。)




工学部の多様性と選択肢

工学の英語は,Engineeringです.いわゆるエンジニアというのは,工学の人(技術者)のことです.(今では,ITエンジニアのこともエンジニアと略すこともありますが)

ちなみに似た日本語の工業は,Industryです.この辺りからも工学と工業は違うものと考えてください.もちろん工学と工業には深い関係がありますが,工学部にいて工場で何かの部品を作るという経験はあまりしません.

工学のイメージを掴むために誤解を恐れずにいうと,数学・物理・化学・生物を高校よりもさらに勉強して,応用しようという感じです.使う科目や応用先によって,分野が分かれています.

工学部の幅広い分野と応用先

私が所属している大学でいうと,工学部内に

  • 機械工学科

  • 電気電子工学科

  • 電子物質科学科

  • 化学バイオ工学科

  • 数理システム工学科

があります.いわゆる学科と呼ばれるものです.

ちなみに,大学に入ってからの印象ですが『学科選びを間違えると自分のやりたいことが出来なくなる可能性が高い』ということです.

1年の基本的な数学や力学の基礎などは工学部全体で行われていましたが,2年以降他の学科と学ぶことはほぼありません.つまり,ほとんど違う分野のことを学んでいるということです.

私は機械工学科の学生なので機械工の説明しか出来ませんが,機械工学は『熱力学,流体力学,機械力学,材料力学』の四力を基本として,機械周りの制御工学や電気電子工学,情報学などを学びます.

応用先を考えた方が分かりやすいので例を出しながら言うと,

  • 流体力学:パイプを流れる水の流れを計算し,パイプの長さなどを設計(ナビエストークス方程式を多用)

  • 熱力学:高校でやる熱分野の延長線上.エンジンの熱効率など.少し異なるが,伝熱工学でヒートシンクの設計など

  • 機械力学:振動で壊れないような機械の設計など.高校だとバネの力学などで学ぶことの延長線上(固有振動数などで検索?)

  • 材料力学:板のたわみの計算や板材の選定など

とこんな感じです.機械工でも電気電子工学を学びますが,基本的なところを学ぶだけで,電気電子工学科ほどの専門的なことはやりません(とはいっても回路を組んで実験などしますが).

科目の内容などは入ってから理解すればよいのですが,結局何が出来るかというと,機械の設計などが出来るようになります.

例えば,車を自分で作ってみましょう.エンジンがなければ走ることが出来ないので,エンジンが出せる出力やガソリンを燃やして出た熱から得られる熱をどれだけ使えるかという効率によってどれだけの重さ(質量)の車を動かせるか決まると思います.車の形状(先端がとがっている,四角形)によっては空気の流れが変わるため,空気抵抗なども変わるでしょう.また,道の凹凸などで車は振動しますが,この振動によって車が大きく振動(共振)したら壊れてしまいます.上手くバネを設計する必要が出てきます.また,人が乗ったときにフレームが曲がってしまったら困ります.出来るだけ軽く丈夫な材料を使いたいですね.タイヤの回転速度が一定にならず,ずっと加減速してしまうと運転に困りますね.制御しなければ.今ではブレーキなどは電気制御ですが.......

というように,意外に設計・開発は考えることが非常に多いです.
もしかしたら,車を作るというのは工場で組み立てるだけというイメージを持っているかもしれませんが,それは作る工程でも最後の方の工程です.

機械工学はこのように機械関係のことを幅広く学びます.しかし,その知識は機械でなくとも,橋や机,配管など様々なものが対象となります.
以下の動画は機械工学科の学生ならほとんどの人が見たことあると言えるほど,このような橋なども機械工学科の守備範囲です.

また、制御工学(と電気電子工学)は以下のような動画が参考になります。

他の学科についても簡単に話しておきます.機械工学科と並んで古き良きという感じなのが,電気電子工学科.その名前の通り,電気電子関係のことをやっているイメージです.IC(Integrated Circuit)という単語を聞いたことがあると思いますがこの辺りをやっていたり,組み込み系を学んだり(説明割愛),ワイヤレス給電などをやったりしているイメージです.
イメージという言葉を使っているのは,前述のとおり同じ工学部でも他学科のことはほぼ知らないからです.

他にも電物(電子物質工学科)では半導体などをやっていて,よりミクロな世界を扱っているイメージがあります.量子力学などをより専門的にやっていると思います.

化バイ(化学バイオ工学科)では,生物や化学がメインとなっているイメージです.正直何をやっているのか説明できないくらい知らないです.バイオマスや電池系をやっている?というイメージ.(唯一言えるのは工学部の中で最も女性が多いだろうということ)

ただどの分野も応用的なことをやっていて,メーカなどでは工学部の学生が自分の専門を生かして分担でモノづくりをしているという感じです.

途中で小難しい話をしてしまいましたが,はんだ付けや溶接などを図っとしているわけではありません.

自分の興味を見つける方法

この記事を見てくださっている方は,他の学部とも迷っているかもしれません.正直,他学科すらほぼ知らないので他学部のことなど説明することは出来ないのですが,少しイメージを先に共有しておきます.

理系だと工学・理学・農学・情報学・医学があると思います.
医学についてはあまり分かりません.これは工学部とは少し異なると思っても良いと思います.農学は化学バイオに近いのではないかと思っていますが,こちらもあまり分かっていません.すみません.

理学は,工学同様学科でかなり分かれます.工学と一番近いのは物理学科だと思います.基本的には,基礎的か応用的かという違いだと思います.理学部は,厳密に色々やるイメージです.工学は,実用上のことを考えるために割とむちゃくちゃな近似をしたり仮定をおいたり,数学を道具として扱ったりします.(ほかの学科の違いは分からないので,割愛しますが)

最近見た文書の中で工学と理学の違いを感じたのは,SLIMという小型月探査機の澤井先生の「なぜ,宇宙研はSLIMをやらなければいけないのか?」での以下の文章だった.

ただ当時でも、月は米国のアポロ計画に代表されるように既に表面探査が多く為されてお り、「なぜ今更月面を探査する必要があるのか」、工学研究者の間でも疑問があった。宇宙科学研究所(ISAS)の良いところとして、工学研究者と理学研究者が 1 箇所に集まっておりいつでも議論できるという特徴がある。その特質がここでも活かされることになる。理学研究者によると、月面探査は今でも十分に魅力的であるとのこと。

澤井秀次郎,なぜ、宇宙研は SLIM をやらなければいけないのか?,https://www.isas.jaxa.jp/missions/documents/files/doc_9.pdf

同じ宇宙という分野であったとしても,工学と理学で面白いと思うポイントが異なる.

情報学についても念のため.近年,AIなるものが発展してきている.もうChaatGPTには触れただろうか?私のnoteのプロフィールがも生成AIによって作ったものである.このAI関係のことを学べるところと思うとよいかもしれない.またコンピュータサイエンスも近年非常に人気である(東大でも情報系が人気のよう).しかし,AIも情報学のほんの一部でほかにも様々な分野が存在する.

ここで雑な他学部紹介を終えるが,自分の興味を見つけるためにはその分野で学ぶことを調べて自分が興味を持てそうか判断するとよいと思う.

ここで役立つのが『シラバス』である.

どの大学にもおそらくシラバスは存在しているものと思っているが,今回は割とわかりやすい自分が所属している大学のモノにしました.

講義の内容などが検索できるもので,学部と学年などを入れて検索してみてほしい.取るべき科目の多さや幅広さが分かると思います.

とはいえ,やはり実際に講義を受けた人でないとイメージしにくいとは思います.工学部の中だけで判断するなら,高校時代に好きな科目で判断しても良いかもしれません.

  • 機械工学科:数学・物理(力学・熱)

  • 電気電子工学科:数学・物理(電気回路・電磁波)

  • 化学バイオ工学科:化学・生物

  • 数理システム工学科:数学

  • 電子物質科学科:数学?,物理(原子?電磁波)

高校の科目の延長線上にあるようなものなので,苦手でどうしようもなければ大学生活は苦痛になるかもしれません.(とはいえ,機械工学科でも鋼の変化を学ぶといった科目もありますので,力学が出来なくても得意なところを活かしていければ問題ないですが)

ただやはり興味を見つけるためには,大学卒業後のことを考えるのが良いのではないかと思います.

例えば,自動運転をしたい場合,実は工学部機械工学科の守備範囲内です.ゲーム開発がしたい場合,工学に来るとなかなか難しいと思います.大学に進学する前の段階で,将来を考えるのは非常に難しいかと思いますが,それでも何となく絞らないと難しいと思います.

機械工学のように幅広い範囲ではなく、もう少し具体的な航空宇宙工学科というものもあるようです。

(やりたい事が決まっていたとしても、教授職の方達の退官や他の大学にいってしまうなどがあると、研究できなくなる可能性があります。退官は師事したい先生の年齢を調べれば何とかなりますが、他大への移動は運ですね。)

ここで、私が機械工学科を選んだ理由を話しておきます。

元々愛知県出身なので、モノづくりが身近な存在でありました。ですので、将来はエンジニアとして働きたいということで工学に行くことは何となく決めていました。また、高校時代物理や数学が好きだったというのも工学を選んだ理由です。(理学の就職先が高校時代から分からなかったので、若干消去法的に工学を選んだ節もありますが)

工学部の中でも複数の学科があることは説明しました。私は高校時代、オープンキャンパスに参加していないので学科についてよく分かりませんでした。そんな中学科選びに迷っていましたが、決定打になったのは大学で人工衛星を開発しているのは機械工学科ということを知ったことでした。
せっかく大学で何かをやるなら大学でしか経験ができなそうなことをしたいと思っていました。(不純な理由かもしれませんが)

また、モノづくり界でよく聞くのは、大きな機械の一部の部品しか開発できない(会社の歯車になる?)ということを聞いていました。
それなら、大学時代に一つの機械全体を作る経験をしておきたいと思っていました。(今思うと割とよい選択だと思います)

まぁそんなことで、何やかんやで目的としていたことは達成できたわけです。(こればかりは運な気がします。宇宙業界はブラックという噂のおかげで何故かうまく行った感じです。)

おそらく、物理や数学、モノづくりに対して何も興味が沸かないという人も中にはいると思います。友人にもそういう人がいますが、何とか大学院にいって、できるだけ楽な研究をしようと頑張っている人もいます。
これは、大学、大学院を職業訓練校的に使っている気もします。そういう人は、資格のような感じで大学に来ている感じです。
もしかしたら、そういう感じの方が興味を持てるという人がいるのかもしれません。


工学部受験のポイントと注意点

共通テスト対策

念のために,共通テストは受験における一次試験のようなものです.多くの大学で,一次試験として採用しています.
昔の共通一次?ですかね.私の時はセンター試験でした.記述を追加しようとして失敗した名前だけ変わったセンター試験というイメージです.基本マーク形式の試験です.
今年は1月13日,14日に行われます.

私はセンター試験の時代の旧世代人間ですが、科目が多くて大変だった記憶があります。

私立を受けるのであれば三科目受験などもあった気もしますが,国立を受けるならば全科目受ける悲痛用があったと思います.

理系ならばおそらく数学・物理・化学(・英語)で差はそこまでつかないと思います(多くは8割以上とるのでは?).よって,案外国語が重要だと思います.大学入って,ひたすら日本語や英語の文章を読まされます.そこで論説というのは大事なんだと気づきました.ただ古文漢文という,なぜ勉強させられるのか未だに分かっていない分野がありますが,この分野は対策すれば点は取りやすい(浦島太郎かもしれませんが)ので対策しておくことを勧めます.

あとは社会科目を何にするかだと思います..地理B,現社,倫政などありますし,高校の方針次第ですかね.

対策になっていない気もするのであえて言っておくと、『とりあえず納得するスキル』があると良いかもしれません。(考える癖があることは重要です。)あくまで点取りゲームでしかないので、そこは少し割り切る必要があったなと思います。

二次対策

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