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荒地のエンジン3. “天の時、地の利、人の和”

法務省矯正局の補佐官S氏の深いご理解と厚い支援のもと、最盛期の法務省農業勉強会には、全国の約20の刑務所から訓練作業担当者が集まり、数時間にわたり、7社のオーガニック資材企業からの農法説明を受けて頂けた。今さら反省するに、当時の私はその貴重な場を得たことで、ある意味無重力状態になっており、まさにそこからが正念場であることに意識の組み換えができなかった。貴重極まりない“天の時”、“人の和”に全力で“地の利”つまり具体的プロジェクト化を掴むべきだったと、今さらに思う。S補佐官は部局移動に伴い、実際のモデル刑務所検討の機会をもたらしてくださった。栃木県喜連川の社会復帰促進センターの部長として、実際のセンター内圃場でのオーガニック資材比較試験を企画実施された。広大な敷地と新しい施設は国が建設、運営は大企業コンソーシアムにより数年契約で実施されている。圃場には付近の一般的農家の方が入り、約50 種の野菜栽培が訓練作業として行われていた。私は東京から新幹線と在来線を乗り継ぎセンター内勉強会に参加、メーカーチームもその都度集合してくれた。快い疲れを覚えつつ、センターの車で駅に送られる車中で、京都から参加の老社長は、『今私達がやろうとしていることは、実は世界を変えるすごいことなのかもしれない』とつぶやいたのを覚えている。しかし、国の運営でなく、入札で大企業コンソーシアムが落札し、できるだけ利益を最大化するために、余計な経費を使わない体質が足を引っ張った。三井系の企業の担当部長はそのような空気だった。今の私ならば、S補佐官の人脈で、そのオーガニック資材比較試験の評価勉強会を再び、法務省にて開催すべく企画したかもしれない。
数年後、補佐官は兵庫県加古川の大規模刑務所の部長として赴任されたので、私は再チャレンジを期して、兵庫県庁や市町村へのアプローチを始めた。その刑務所内では農業訓練が行われておらず、当時法務省が、再犯防止策として、出所者の移住受け入れと就職支援の大規模予算を持っていたことから、刑務所と連携した町作りを有力市長にプレゼンして歩いた。そして一つのチャンス、機縁を得た。“逃れの町”、たとえ出所者でも積極的に受け入れていこうとする、一人の市長がいた。


喜連川社会復帰促進センター内圃場オーガニック資材比較試験データ。太陽光活用資材会社社長からの報告。

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