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春侯爵詩片


日本人すべての
ひとりひとりが

小野田少尉や
横井庄一さんと同じ
場にいる
のではないか

寄る辺なく
国からも
組織からも
社会からも
家族友人からも
遠く離れ

目の前の
ジヤングルのような
カオスに
緑色に染まっている
のではないか

国が国民を
死地に追いやり
医師が人々に
無神経に
毒を接種し

そして
殺されるほうは
悩むことも一切無く
葬祭業と火葬場経営に
嬉々として勤しむさまに

私たちすべては
音もなく
意識することもなく
絶望している

絶望していることにも
気づくことなく

流されてゆく果に
何があるのか

私たちひとりひとりが
残留兵となり
小さなレジスタンスを
まわりに持たない限り

果てしなく
堕ちてゆくばかり

太陽の光も
星の明かりも
もう私たちには見えない

心の眼が
魂の目が
腐って
落ちているから

私たちは
これから
小野田少尉や
横井軍曹から学び
再びジヤングルに
もどらなければならない

この数年で世界中で国内で何があったのか。そしてこれから何が始まるのか。わかっている人間達のバイブル。


■KeithJarrett、Part Ⅺを聞きながら。
■小野田少尉は情報将校として第二次世界大戦に従軍、ゲリラ戦を展開。戦争終結から29年後、フィリピン・ルバング島から帰還。横井庄一氏は陸軍軍曹、戦争終結から28年後にグアム島で地元の猟師に発見された残留日本兵。
■画像は「最後の日本兵」が私たちに伝えること。共同通信画像より。

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