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『目覚めるアメリカ仏教』を読む1.参照:●『目覚めるアメリカ仏教』ケネス・タナカ(武蔵野大学名誉教授)著

“第一章/アメリカで劇的に伸びる仏教人口                                                        「瞑想するアジアのカルト」から「アメリカの一宗教」へ                                           今、アメリカ合衆国で仏教人口が目覚ましい勢いで伸びている。アメリカで第一の宗教であるキリスト教徒の数は、現在約二億八〇〇万人。アメリカ人口の約六三パーセントを占めるといわれているのに対し、仏教徒の数はおよそ三三〇万人で、一パーセントにすぎない。……
しかし、注目すべきはその伸び率にある。ある統計によれば、一九七〇年代半ばの仏教徒は約二〇万人であった。つまりその後の五〇年間で、一七倍に伸びたことになる。一方キリスト教徒は一九七〇年代半ばには、全人口の約九一パーセントを占めたが、二〇一二年には約七五パーセントと大きく減り、二〇二〇年には六三パーセントとさらに減少した。この勢いでいけば、仏教徒は数十年後には、今まで長年米国第二位の座にあったユダヤ教徒(全米人口の二パーセント弱)を追い抜き、イスラム教(同じく全米人口の一パーセント)と争いながら、アメリカ第二位の宗教のなる可能性が高い。

またアメリカにおいて現在、自分を仏教徒だとは自己認識していないが、仏教に共感していると考える人々が約一七〇万人、さらに自分は宗教やスピリチュアルのの考え方について仏教に重要な影響を受けたと考える人々が二五〇〇万人いると推定されている。これらを合計すれば、米国人口のおよそ一〇パーセント、約三〇〇〇万人におよび、驚くべき数の人が仏教の影響を受けていることになる。

こうした全米に拡大する仏教の存在感を反映して、アメリカのマスコミも近年、仏教を大きく取り上げるようになっている。有力誌『タイム』の一九九七年一〇月号は「仏教に魅せられたアメリカ」を特集。また、同誌二〇〇三年八月号は、仏教以外を含む何らかのメディテーションを行っているアメリカ人が一〇〇〇万人にのぼっていると指摘する記事を掲載した。さらに『ナショナルジオグラフィック』は二〇〇五年十二月号で「ブッダは昇る」(Buddha  Rising)という特集を組んで、欧米での仏教の発展を取り上げている。……”

画像はナショナルジオグラフィックより。


■西欧社会における仏教ブームは歴史上たびたびあったと思われます。大英帝国がインドを植民地化し、学問的な仏教研究が本格化した時代。大乗仏教以前の根本仏教から、ヴェーダ・バラモン教にさかのぼる、ヨーガ神秘科学体系を科学的に人類規模の遺産化したのは、産業革命以来、事象の地平を探求した西欧の叡智の紛れもない功績です。学問として文化として、深く研究されはしたが、信仰や修行にまでは至らない数世紀でした。ところが、ある意味、西欧社会の内部崩壊からの世界大戦、野蛮な征服欲からの謀略戦争により西欧諸国国民が信仰崩壊、人間崩壊に直面し始め、より真摯な直接的な救いを求め始めたときから、仏教文化は仏教メソッドとして、実益的に精神活動を蘇生させる為に、実生活に取り入れられだしたと考えられます。それはユダヤ・キリスト教が、マネーに敗北し、西欧社会の精神たる規範、霊性パワーを喪失する過程と比例していたようです。私自身も今まで2回ほど、白人仏教修行者を見たことがあります。大阪梅田の雑踏に立つ網代笠の修行僧は、托鉢の何たるかを体得した壮年の白人でした。また岡山市内の公園に残された空襲で焼死した人々の史跡に強い祈りを捧げる網代笠の僧侶の一団は、年季の入った老年の白人男女達でした。

日本ではこの100年、伝統仏教への国民の精神的信頼が希薄化し、オウム真理教以来、修行仏教や精神世界への若者たちの希求憧憬が霧消しました。白人の人口比率が低下し、世界各国諸民族の坩堝化するアメリカでの仏教台頭は、少なくとも思想哲学の領域は軽々と越えて来ると思われます。案外、ユダヤ・キリスト教に2000年鍛えられた欧米人の絶望感を秘める視線が仏教の本源へと到達するのかもしれません。

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