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クオンタム・スパイダー読書 『法力とは何か~「今空海」という衝撃』老松克博著を読む8.

『法力とは何か』
“第一章  鉤召
法力に関してここで言えること
〜〜〜
メカニズムの解明を目指さないという姿勢は、じつは、私たちが扱おうとしている現象の本質と無関係ではない。このような姿勢をもってでなければ接近できない側面というものがあるのだ。~~私たちはまったく新しい切り口を必要としている。~~
〜戦闘機の鉤召を通常の科学的な理屈で説明すること、言い換えれば因果律で解き明かすことなど、できるはずがない。因果性を超えているからこそ、それは法力と呼ばれているのだ。
ならば、どうするか。因果性による説明が通用しない状況下でおのずから前景に現れ出てくるのが、ユングの言う共時性の概念である。本書では、共時性の考え方にもとづいて法力の本質に迫ってみたい。
共時性ないし共時律(シンクロニシティ)とは、複数の事象のあいだの連関に関する原理の一つである。~〜もう一つの原理が因果性ないし因果律で、因果性と共時性は対立し合う。~~
〜共時性は、原因や結果にまったく関心を向けない。ほぼ同時に生起した複数の事象のあいだに、(非因果的な)連関があると見るための根拠となる。仏教で言えば縁起の概念に近いゆえ、synchronicityを縁起律と意訳することもある。~~
ユングは次のような共時的現象の例をあげている。ユングのもとに心理分析に来ていた若い女性アナリザンドは、合理性一辺倒の頭の固さに問題があったが、なかなか変化は生じなかった。ある日、彼女はスカラベ(古代エジプトで神聖視された黄金虫の一種。彼女はそれを知らなかった)を与えられる夢を見て、それをユングに報告していた。とそのとき、面接室の窓を外からコツコツと叩く音がする。ユングが窓を開けてみると、スカラベに似た黄金虫が薄暗い室内に飛び込んできた。この偶然がアナリザンドの心を揺さぶり、ユングにも崩せなかった彼女の頑なな態度を一変させた。〜〜
〜たとえば易には、三枚の硬貨を六回投げる方法や筮竹を何度も分けていく方法があるが、ほかならぬそのときに現れた卦〜は、同じ瞬間における当人の内的状況および外的状況と意味を共有すると考えられている。”

全ての因縁と因縁を形成し駆動する業(ごう、カルマ)を消滅させたエネルギーはブッダ(覚者)と呼ばれる。全ての因縁とカルマが消滅させられているとは、人間として生きる様々な条件が生じないということ。人生上の様々な運命が全部無いと同時に人類また生き物として生きる様々な条件がもうないということ。つまりあらゆる次元に生まれる必要も生まれ変わる必要もなくなっているということ。ただしそこには因縁とカルマを消滅させてきた智慧と衆生を導き救済してきた純粋な智慧そのもののエネルギーが残されているだけと想定されている。このようなエネルギーには因果律も共時律もありえない。ゆえに成仏法を深く修習する過程の阿闍梨には因縁解脱の成果と副産物的に獲得する時空間を超える法力が備わるのは当たり前だろう。つまり因果を自在に組み換え消滅させたり、共時律を操ることも、この原理に叶っている。


ユングもまた単なる通常の頭脳の学者ではない。フロイトとの討論中に、ポルターガイストのような超常現象を引き起こしたり、宇宙的な夢を見たり、何らかの超次元の賢者と会話したり。ユングが日常的に対峙していたのは、沖縄のユタがその霊能の覚醒を何者かに強いられる深層意識的な混乱、擾乱にさらされているように、超自然が無意識に侵入しているようなマージナル人間だったのだから。歴史上類例のない、賢者そのものだと思う。


■画像はヤフー、ユング画像、易占画像、タロット画像、修行僧画像より。

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