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真っ黒な泥の海の底で

消えて、しまいたい
しんで、しまいたい
どれだけ光を目指しても
光に照らされても
光に辿り着いても

満ちては欠ける月のように
その暗闇はまたやってくる
静かに、確かに、手を伸ばしてきて
いつのまにか動けなくなって
足首、ひざ、ふともも、腰
気付けば胸の辺りまで
真っ黒な泥に浸かって

どうして、と問う
こんなに癒そうと頑張っているのに
飽きもせず、何度もせりあがってくる

いつまでもなくならない泥
真っ黒な、夜の海みたいに
果てしなくどこまでも続いているよう

もう終わりにしたい
抜け出したい
こんな私は
認められない

足掻けば足掻く程
身体は沈んで
頭まで浸かってしまったとき

はたと、気付いた

なんて、心地いいんだろう
この暗い海は、とても安心なんだ

心を固く閉ざして
自分の世界に閉じこもっても
誰が非難するでもない

"私は誰からも愛されない"

その幻想に浸っていれば
誰に期待することも
誰に傷つけられることもない

暗い泥の海の底は
究極の安全圏

ああ、きっと
差し伸べられた手を振り払って
泥に身を投げているのは私自身

どうして、何故と問いながら
自らを暗い海の底に沈めている
だってそこでなら、恐怖を感じずに済むから

決して殺さない力加減で傷つけてくる私自身か
何を考えているか決してわからない他人か
怖いのはどちらかなんて、一目瞭然だ

私は私以外の人間が
みんな怖い
怖くて息ができないんだ

だからこの海の底でようやく
息つぎをしている

このあたたかでやさしい闇があるから
生きていられるんだ

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