9:終わりの季節(最終話)

 友人は、駅で待ってくれていた。

 ほとんど二十年近く会っていないので、顔が分かるかどうか心配だったけれど、中学生の頃のおもかげは、まだ残っていた。

「変わらないね」

「お前のほうが変わらないよ。そのTシャツ、昔も着てなかったか」

「まさか」

 僕は笑った。

 夏の夕暮れの中を、彼の車に乗って、駅前から東へのびる人けの少ない商店街を走りぬけた。

「街のようす、あまり変わってないね」

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