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話題のグランプリ作品"viewers:1"を読み解く

ここ数日話題になっている【GEMSTONE「第6回リモートフィルムコンテスト」】のグランプリ作品"viewers:1"について、同じ映像クリエイターとしてどこがすごいポイントなのかな。と少し考えてみました。

viewers:1はわずか2分19秒の作品です。この機会に是非下記リンクから見て頂き、私の文章も見て頂けると嬉しいです!


グランプリ作品『viewers:1』「リモートフィルムコンテスト」【GEMSTONE】 第6回


短い作品だけに、ほぼ説明なのに面白い!

見て頂いた方は分かるかと思いますが、1:30秒までは全て設定の説明だけで出来ているかと思います。

・荒廃した終わった世界の話

・この世界でもYouTuberが流行ったのか、配信者となる主役の男性。

・基地局ドローンによってネット通信は行われているが、数はどんどんと少なくなってしまっている。

・たまたまついたままの可能性もあるが、一人だけ男性の配信を見ている。

・楽しみのお酒は夜しか飲まないと決めている。

※巨大ロボについては、恐怖感を感じさせて来ますが明確な設定が分からなかったためここでは排除します。


ここまでがずっと世界観や、男性自身の説明になっている事が分かります。

この後の出来事は、

・基地局ドローンが残り1機となり通信が途絶え始め、孤独と恐怖におびえる男性

・衝撃のラストカット

今回はこの設定以外の2つの出来事の凄さに触れていきたいと思います。


孤独と恐怖と救いの表現

まずはこの荒廃した世界の中でなぜこの男性は配信を続けているのか、考えてみました。私はこの映像を見た時にすぐに思い出したのが、映画”キャスト・アウェイ”でした。

キャスト・アウェイでは不運な事故から主人公の男性が無人島で生活をすることとなる映画です。そこで彼はバレーボールに血で顔を書き、ウィルソンと名付け妄想の会話をしていきます。

これは大きな孤独からの狂気にも感じてしまうかもしれませんが、人が正気を保つためには、誰かと繋がっている必要があるのでしょう。

viewers:1でも誰かも分からないけれど、誰かが見てくれているという事実が、男性の正気を保ち生きる糧になっていたのではないかと思います。


だからこそ終盤に通信が途絶えるギリギリの状況が追い打ちのように男性を孤独に演出します。さらには夜にしか飲まないはずだったお酒にも手をだし、まさに男性は正気を保つ事が難しくなってしまう事に繋がっていくのでしょう。


衝撃のラストカット

ネタバレしないと語れない内容ですので、これ以降を読んでくださる方は是非映像をご覧ください!

最後に男性は、映像のviewerだった人と出会う事が出来ます。これには言うまでもなく、なるほど!!すごい!!よかった!!などの感想が出てくるのではないでしょうか。

しかし、ここで映像表現として素晴らしかったのは、「視点」だったと思います。

というのも、これまで私たち視聴者は、「配信映像を見ている。」と思わされてきました。配信映像には、写っている男性だけが生きている世界で、唯一viewers:1という謎の数字だけが出演している世界です。

しかし最後のカットで全てが逆転します。この映像はずっと「配信映像を見ているviewers:1の視点」だったという種明かしです。そういう意味で言えば、もはや主人公はviewers:1の方だったとも言えるかもしれません。

まさにミスリード。誤った解釈に導かれていたのですね。



さすがグランプリ。ついつい語りたくなるほど、素晴らしい作品でした。

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