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開業届を出したので、再度自分で自分に取材してみた(ルポ記事)

私のnoteの中で一番多くの方に読んでいただいたこちらのnote。決意表明の自己紹介ともあって、我ながら熱い。

でも、告白します。実は、それほど熱意に溢れていませんでした。

フリーランスで生きていけなかったら会社員に戻ろうと思っていたし、富山に対する思いもめちゃくちゃ強いわけではありません。生きていくうえで一番お金がかからないのが実家暮らしだから、実家がたまたま富山だから帰っただけ。まあ、都会一極集中への反骨精神はあったのは否めないけど、社会を変えたいなんて強い思いはありませんでした。

そんな私でしたが、なんだかんだで覚悟が決まって。2021年10月20日、ついに開業届を提出しました。けじめとして、もう一度、自分取材記事を書きます。

3種類書くほどのガッツはないので、訓練も込めて(仕事が欲しい)ルポ記事でいきます。ルポ記事を自分で書いているのは冷静に考えて滑稽だけど、ご愛敬。今回も盛ります。!それではいきます。

タイトルは、

『私』と『ライター林春花』が、フリーライターになるまで

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2021年1月末に大手企業の社内広報を手掛ける会社を退職し、地元富山にUターンした林春花さん。この10か月間は、自分がフリーライターとしてやっていけるのか、悩みに悩んだ日々だったという。開業届を提出し、覚悟を決めた林の想いに迫る。

林春花(はやしはるか)
1995年、富山県生まれ。京都大学卒業後、地元企業に就職するも東京配属に。1年ももたずに退職し、クラウドソーシングでライティングをはじめる。2018年より、社内広報の制作会社にライターとして勤務。大手企業の社内報や採用HP、統合報告書などの制作に携わる。2021年1月に会社を退職し、地元へUターン。2021年10月20日、開業届を提出し、正真正銘のフリーライターに。


私には、できない。

京都の自宅で有給消化を楽しみながら、ライターの仕事を探してのんびりネットサーフィンをしていた、12月の林春花。彼女の目がある記事にくぎづけになった。『another life.』というメディアだ。

「せっかくなら自分が大好きになれるメディアで仕事したいじゃないですか。私、ライターなのにそこまで文章を読むのが得意なわけではなくて、つまらないなと思うと途中ですぐ離脱するタイプなんです。だから、記事を読んでは『ここは違う』を繰り返していました。でもanother life.はどれも引き込まれてしまって。気づいたら10人以上のストーリーを読んでいたんです」

ここで書きたい。そんな気持ちが芽生えた林は、すぐにWantedlyで応募。編集長の粟村さんとの面談を終え、テストライティングに取り掛かった。

手渡されたのは1時間を超えるインタビュー音源と、書き起こし。今まで何度となくこなしてきた仕事。3年間ライターをしてきたプロだ。きっと大丈夫だろう。そんな思いで、ヘッドフォンを付けた。

「すべて聞き終えて、余韻に浸っていました。インタビュイーを応援したい気持ちでいっぱいになったんです。すぐに商品を買いましたもん(笑)。人の人生に触れるって、なんて素敵な経験なんだろうと感じましたね。

でも冷静になるにつれて、『私、こんなインタビューできない』と痛感したんです。私だったら多分スルーしてしまっていた部分を、突っ込んで聞いている粟村さん。人生という大きくて、あまりに深いテーマで、ここまで深く聞くことができるなんて。自分の未熟さを実感しました」

その思いは、林の心に火をつけた。こんなインタビューをできるようになりたい。心を揺さぶる記事を書きたい。そのためには、絶対に合格しなければいけない。強い気持ちで、執筆に打ち込んだ。なかなか納得いかなくて、こんな原稿ではだめだと、暇があれば何度もバックナンバーを読んで、推敲を繰り返す。そしてようやく、手放した。後は結果を待つのみ。これが認められるかどうかで、フリーライターとして生きていけるかが決まる。それほどまでに思いつめるほど、全身全霊を注いだ記事だった。

結果は合格だった。

(そのときの記事がこちら)


「フリーライターとして将来が見えた気がして、すごくうれしかったですね。ほっとしました」

だが、徐々に不安も湧いてきたという。

「テストライティングは、書き起こしからの執筆でした。でも私、『この取材できるのか?』と思ったんです。『書くのはできたけど、聞けるのか?』と。改めてanother life.のHPを見ると、インタビューライター講座を実施していて。正直テストライティングの報酬よりも高額で、退職したての私にはきつい出費でしたが(笑)、この先のために学ぶべきだと考えました」

人の価値観に触れる、ライターの仕事

インタビュー講座では、実際のanother life.の取材項目に基づいて、2人にインタビューを行った。想像通り、いや想像以上に難しかったと林は語る。

「今まで社内報のインタビューは、個人紹介でも仕事観にフォーカスしているため、いくつか引き出しがあれば対応できていたんです。でも、another life.のインタビューは『人生』について。ときには苦しい思い出を語っていただくこともある。重い話をどこまで突っ込んでいいのかもわからない。浅すぎると、何も響かない。突っ込みすぎると、時間が足らない(笑)。こんなにも焦ったインタビューは久しぶりでした。

でも同時に楽しかった。楽しかったというか、自分自身も考えさせられたとんです。人の考え方や価値観に触れる機会なんて普段の生活でそうそうありません。でもライターならば、お金をもらいながら聞くことができる。なんて素敵な仕事なんだろうと、改めて実感しました」

(講座で取材した記事はこちら)


『私』は何を感じているのだろう

その後、another life.の制作会社が手がける他の媒体の取材執筆をしたり、HR企業で採用広報記事を書いたりなど、徐々に仕事を増やしていった林。富山県でも自己紹介記事に興味を持ってくれた富山の起業家へのインタビュー機会にも恵まれた。

(AtionOne島田さんに取材した記事はこちら)

お客様から喜びの声をいただくことも増えた。特にメインでお仕事をいただいているHR企業からはは、「林さんのおかげでwantedly記事が好評なんです!」と言葉をかけてもらっていた。まさに順調な滑り出しだった。

だが、林はもやもやした思いを抱えるようになっていたという。

「ライターとして、インタビュイーの気持ちになったり、読者の気持ちになったりことはとても大事だし、絶対に忘れてはいけないと思っています。

それにフリーランスとしてセルフブランディングすることも大事だと考えています。Twitterをしていても、政治や宗教の発言はしないし、腐女子な趣味で興奮していることも、実はダメダメな恋愛をしていることなんて一つも書かない。『林春花』というブランドを、私なりに作り上げてきました。

でもそのうち、『私』が何者なのか、が分からなくなってきたんです。『ライター林春花』の人格は、お客様によって流動的に変化する。それは、それでいい。

でも『私』は?

『私』は、何に感動して、何に心を動くの?『私』はどう生きたいの?これは『私』じゃなくて、A社の仕事をしている『ライター林春花』の考えじゃないの?そんな答えが出ないもやもやした感情を持つようになりました」

――自己の喪失。林は自らの問題をそう表現した。別に何か、問題が起こったわけではない。仕事に不都合が生じたわけでも、体を壊したわけでもない。だが、林の中に、しこりとして確かに存在するようになった。

「分からない」ままでいい

2021年6月、another life.での取材執筆の依頼の連絡がきた。ようやく訪れた念願の機会。断る理由はなかった。

今回の取材対象者は、自由丁の小山将平さん。『一年後の自分への手紙』という独自のサービスを手掛けている。WEB上にはほかにも取材記事があり、情報はたくさんある。入念な準備を始めた。ライターとして、当たり前のことだ。

そう、準備を始めた。はずだった。

「『ライター林春花』の仕事として、参考記事やHPを読んでいたんです。でもいつの間にか、涙が出てきて。『私』が泣いていたんです。小山さんの想いに心底共感して。この人に話を聞いてみたい。心からそう思いました」

とはいえ、取材執筆をするのは『ライター林春花』。個人の興味で聞いても、それは自己満足である。林は切り替えて、最高のインタビュー記事を作ろうと準備を進めた。

そして当日。ついに小山さんとのインタビュー。編集者さんの支えのもと、無事に場を締めくくることができた。

「自分の素直な気持ちを言葉にできない。そんな悩みから生まれたサービスに『私』がどんどん惹かれていくのを感じました。まさに今の、自我を喪失した『私』のためのサービスだと、本気で思いましたね。

特に救われたのが、『分からない』という思いすらも表現していいんだという言葉。0か1の答えを探し求めようとして、確固たる『私』を見つけようとして、もがいていた『私』がゆるされた。そんな気持ちになりました」

涙が出ないように必死だったと笑う林。そして取材後すぐ、『一年後の自分への手紙』をネットで購入。自らも体験したうえで、小山さんのストーリーを記事にしたためた。この人の魅力が伝わってほしいという『私』と『ライター林春花』の思いをのせて。

(記事はこちら。)


「『私』が取り戻せたかといわれると、『分からない』ですね。でも『分からない』ままでいい気がしています。だってそれが素直な感情だから。こうあるべきなんて理想論は、別にいらないんです。『私』と『ライター林春花』の境界線が曖昧なまま生きていく。そんな生き方でもいいじゃないかと思えるようになりました」

誰かの思いを伝える喜び

記事が公開され、林は親しい友人や知人にURLを送った。ほかならぬ『私』が、小山さんの魅力を共有したかったからだ。

たくさんの返信を見て、あることに気づいたという。

「すごく読みやすいね!さすがライターだね!」

林個人に対する誉め言葉が、何一つ嬉しくなかったこと。

「小山さん、素敵だね。自由丁いってみたいな」

「素直な感情ってなんだろうね」

小山さんの思いに触れてくれることが、この上なく嬉しかったこと。

「『私』って、心底インタビューライターなんだなと思いました。『私』は『私』が伝えたいことを発信したいわけではない。『私』をアピールしたいわけでもない。『誰か』が伝えたいことを伝え、それが『誰か』に届くことが、一番の喜びなんです」

『ライター林春花』としての生き方も、『私』の喜びだった。林にはもう、迷いはなくなった。

フリーライターとして生きていく。

1人での仕事は孤独だ。はじめての確定申告も不安。毎日の仕事で、慢性的に肩と腰が痛い。目薬も手放せない。そして1か月後に仕事があるかどうかわからない。だが、必要としてくれる人がいる限りは、この仕事で、生きていく。林の決意は固い。

最後に、林にやりたいことを聞いてみた。

「やってみたい仕事はたくさんありますよ。専門である社内広報や採用広報、PRにももっと挑戦したい。教養をもっと身につけたい。いろいろな人生に触れてみたい。いつかはブックライティングもできるようなライターになりたい。

まあでも、目の前のお仕事にちゃんと向き合うこと。その積み重ねだと思います。だって目の前に素敵な出会いが、たくさんあるんですから」

開業届を出したからと言って、何も変わらない、これまで通りだと語る林。『私』と『ライター林春花』両人が、素直な気持ちでキャリアを歩んでいくのだろう。


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もっといっぱいエピソードあるんだけど、記名記事の関係でanother life.さんばかりになってしまった。いつもありがとうございます!

ほかにも、仕事でご一緒した皆さん、本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします!










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