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なぜ、村上隆さんはNFT作品の出品を取り下げたのか

前回の記事で書いたように、今盛り上がりを見せているNFTアート🔥
そんな中で、日本の現代アート界に大きな激震を走らせたのは、村上隆さんが自身のNFT作品のオークションを始めた事だと思います。
しかし、そのオークション開始後、すぐに自身のInstagramにて、中止を発表した事は、驚きと共に、え?なんで? 理由書いてあるけど、どういう意味だ?と思った人も多いのでは無いかと思います。

NFTってそもそも何?という方は、前回の記事の触りだけでも読んで頂けると、イメージしやすいかと思います。

オークション中止の理由

村上隆さんが、Instagramで挙げられていた、下記4つの理由。少しだけ掘り下げてみたいと思います。

1:「作品のコンセプトを踏まえ、ERC721や1155のメリットとデメリットを考慮した選択」

2:「独自のスマートコントラクトの要否」

3:「独自ストアフロント構築の要否」

4:「IPFSの要否」

「作品のコンセプトを踏まえ、ERC721や1155のメリットとデメリットを考慮した選択」

そもそもERC721とERC1155とは、イーサリウムの代表的なトークン規格です。

ERC721
唯一無二の価値を持ったトークン(非代替性トークン)
1つのトークンIDで1つのみ発行可能
ERC1155
非代替性トークンと代替性トークンのどちらも発行可能
1つのトークンIDで複数発行可能

上記の説明からも分かる通り、ERC721は、NFTの特徴でもあり重要なポイントである、”唯一無二の価値を持ったトークン”の発行のみ行うことが出来ます。反対に、ERC1155は、非代替性トークンのみではなく、代替性トークンの発行も可能です。
実は、ERC1155の方が、後に出てきた規格なのですが、この「代替性トークンも発行可能」という部分がこの話のキーになってきます。
元々ERC1155は、ゲームなどのアイテムなど同じアイテムで複数存在するものを簡単に管理・送付するために開発、盛り上がったものです。
これをアートに当てはめるとどうでしょうか。
一つの作品が、複数存在するとしたら、作品自体の価値はその存在する数だけ下がりますよね?
つまり、原画と版画の違いと似たようなものです。

今回、村上隆さんは、前回の記事でもご紹介した、Openseaというプラットフォームを使い、MINT,LISTされていたかと認識していますが、Openseaでは、ガス代を安く、そして簡単にMINT, LISTが出来るように、ERC1155を利用しています。

ちなみに、ERC1155は、代替性トークンも発行できますが、1作品1つしか発行しなければ、非代替性トークンとなります。

ガス代、MINT、LISTってなんだ?と思った方の為に、以前の記事を貼っておきます!

「独自のスマートコントラクトの要否」

こちらも、上記に貼った記事にある、ChocomintやRaribleでのオリジナルコントラクト又はコレクションの作成ということに繋がるのですが。
今回の話に絞って考えると、OpenSeaでNFTをMINTすると、OpenSeaのコントラクトアドレス上に、NFTを作成することになります。

今回既に取り下げられているため、オークションに出ていた作品は既に存在しないのですが、代わりに謝罪絵文字が説明コメントと共にNFT化されていたため、それを例に取り上げます。

Description(詳細)のところに、Instagramの投稿にもあった今回の経緯の説明。
そして、チェーン情報のところに、Contract Address, Token ID, Blockchainというフィールドがあるかと思います。

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これは、イーサリウム上の、このContract Addressに、このToken IDでNFTが発行されていますよという事がわかります。
このNFTで言うと、Contract Addressは, 

0x495f947276749Ce646f68AC8c248420045cb7b5e


になっています。
このアドレスは、リンクになっているのでクリックして頂けると分かるのですが、"OpenSea Shared Storefront (OPENSTORE)"と書いてあるように、OpenSeaでMINTされた全てのアーティストのNFTが入っている箱のようなものです。

つまり、OpenSea上で何番目に村上隆さんが発行したNFTですよという情報ですね。

一方で、僕がChocomintを使い、独自コントラクトで発行したNFTを見て見ましょう。

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Contract Address : 0xE6fEC9617e0165e558c2573bca575aA41b285CE9
Token ID : 6
Blockchain : Ethreum

とあります。
この、Contract Addressを、上記のリンクからクリックしてみると、

画像3

と表示されているかと思います。これは、Saru Token という名前で、SARUというシンボル(米ドルだとUSDのようなもの)のコントラクト(コレクション)という箱にある、6番目に発行された作品ですよと記載されています。

村上隆さんのNFTと比べて違うところは、OpenSeaというマーケットプレイス上で何番目に発行されたではなく、Saruというアーティストが、Saru Tokenというコレクションの中で6番目に発行しましたよと明示されている点ですね。

ちなみに、OpenSea上では、このコレクションは、下記のリンクのように見えます。

前回の記事でも紹介したようにRaribleというマーケットプレイスでは、オリジナルのコントラクトを発行可能ですが、ガス代が半端なく高いです。(記事執筆時で5-8万)

また、Foundationなど招待制NFTオークションサイトでも、それぞれのプラットフォームのコントラクト上になります。

「独自ストアフロント構築の要否」

正直話しますと、この部分はOpenSea上だけで言うと、特に差異は無いかと思うのですが、他マーケットプレイスや独自ウェブサイトでストアを作成しようとすると問題になってきます。

上記の、独自のコントラクトアドレスと深く関係があるのですが、基本的にほかマーケットプレイス上で、コレクションを作成する際に、コントラクトアドレスが必要になります。

1コントラクトアドレス=1コレクション

その為、村上隆さんのNFTは、他マーケットプレイス上では、OpenSeaコレクションのこの作品という見え方になってしまいます。

反対に、Saru Tokenを別マーケットプレイスのRaribleで見てみると

このように、Saru Tokenコレクションの作品しか表示されないようになっています。

独自コントラクトアドレス(スマートコントラクト)にてNFTを発行することで、独自のストアフロントを、OpenSea以外のマーケットプレイス上でも展開出来る

「IPFSの要否」

IPFSという横文字がまた出てきましたね笑

IPFS = 分散型クラウドストレージ

クラウドストレージと言うと、Google Driveのようなものを想像するかと思いますが、IPFSの違うところは、分散型という部分です。

ブロックチェーンと同じような定義ですが、中央集権的にあるデータ(ファイル)を保存しているクラウドストレージと違い、様々な場所に分散してデータを保管しています。また、いつ誰がどのファイルを保存したかという、唯一無二性、所有権をしっかりと担保された仕組みです。

Google Driveの場合、万が一、Googleが倒産、又はサービスを停止した場合、そのデータは失われることになります。

しかし、IPFSは、その仕組自体が破綻しない限り、永続性が担保される事になります。

今回の例で説明すると、OpenSeaは、オフチェーンつまりOpenSeaが所有しているストレージに全てのデータを保管しているため、OpenSeaがサービスを停止した際には、そのデータが失われる可能性が高いという事になります。(何かしらの対策を出してくる可能性は0ではないですが、保証はされていない)

その為、将来的にコレクターの方が所有している村上隆さんの作品は、所有者情報は残っても、NFTの実際のデータが消えてしまう可能性があるということですね。

ちなみに、RaribleやFoundationは、コントラクト自体は、プラットフォームに紐付いていても、データの保存先にはIPFSを利用しています。
その為、各サービスが停止しても、IPFSに定期的にアーティストが手数料(現状では各マーケットプレイスが手数料の支払いをし管理)を払い続ける限り、データは失われないことになります。

IPFS上にデータを置く事による、データの(ほぼ)永続性を担保出来る

まとめ

このオークション中止の4つの理由の中で、重要であったことは、以下の3つということになると思います。

1:ERC1155で作品をMINTしたこと
2:OpenSeaのコントラクト上にMINTしたこと
3:オリジナルのデータが、IPFSではなく、OpenSeaのオフチェーンサーバーに保存されていること。

言い換えると

唯一無二の証明、各マーケットプレイス上でのブランディング、NFT(作品データ)の永続性の担保をしっかりと整備するために、一旦、OpenSeaからオークションを取り下げた

ということかなと、僕は考えています。

前回の記事でもNFTの作り方の部分で取り上げさせて頂いた、Chocomint AppさんのChoco Factoryというサービスを利用すると、ガス代は安く、独自コントラクトで、IPFSにも対応してMINTできるので、今回の件は全て解決できるのではないかなと思います。

追記:ちょっとChocomintに関して少しだけわかりにくい点があるとアドバイスいただいたので、追記します。
Chocomintは現状デフォルトでは、データ自体はIPFS上にありますが、メタデータの格納先は、IPFSではなくChocofactory側のサーバーで管理されています。(手動で、書き換えることは可能なので、IPFS上でメタデータも管理したい場合は、自己責任で変更も可能)
細かいメリットやデメリット、そして今後のロードマップに関しては、公式の記事を確認頂ければと思います!

もし、ご不明点や間違いなどございましたら、DiscordやTwitterにてご連絡頂けますと幸いです。

※筆者の執筆時点での調査をもとに書いた備忘録のようなものなので、参考程度に思って頂き、一度ご自身で最新の情報を調べてから、実行して頂くことを強くおすすめします。






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