映画レビュー「L.A大捜査線 狼たちの街」~暴走する正義と静かな悪


犯罪者摘発のためなら手段を選ばない暴走刑事、そして偽札づくりに対して職人的なこだわりを持つ犯罪者の物語。


監督は「フレンチ・コネクション」「エクソシスト」のウィリアム・フリードキン。主演はウィリアム・ピーターセン、ウィレム・デフォー。

全盛期よフリードキンは現在では絶対許されないタイプの、倫理性に大きな問題を抱えた映画監督。(ちょっとググれば真偽のわからない逸話がボロボロ出てくる)
そんな彼が手がけた中でも特に印象深いのがこの一本。

物語を動かすのは、同僚の仇討ちに燃える捜査官と、紙幣偽造組織のリーダー。

ウィリアム・ピーターセン演ずる捜査官は悪を破滅させるためにはまったく手段を問わない。ストリッパーを脅して情報を引き出し、組織の大金を強盗のように強奪。末端の人間ですら執拗以上に追いかけ回し、遂にはハイウェイを大逆走。おおよそまっとうな人物とは言えない。

方やウィレム・デフォー演じる組織のボスは寡黙で冷静沈着。自らニセ札づくりに携わり、工芸品のようにひとつひとつ丹念に仕上げていく。一見まともではあるが、偽造紙幣で世の中を腐らせる大悪党。

暴走する捜査官が、あらゆる暴力を尽くして悪の親玉の首を追い、立ち塞がったものをすべて破壊していく。その先に待ち受けるラストは強烈であり、フリードキン映画の中でも特に印象的。

全力疾走の追跡劇、危険度特大のカーアクションなど、サスペンスだけでなく迫力も満点な刑事映画の異端児にして傑作。

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