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パンドロデヴ/Pain de Lodeve

パンドロデヴ(Pain de Lodeve)というパンは、私の中で特別な存在と言えます

そこには、私が神戸に本社のあるドンクさんでパンをイチから習い、独立まで17年間お世話になった経緯が大きく背景としてあります

ロデブは、かつての上司で、私の憧れの存在である仁瓶利夫さんが、フランスのロデヴ地方で焼かれていたパンドパイヤス(Pain de paillasse)というパンをもとに、日本のベーカリー向けにアレンジを施し落とし込んだものと、私は解釈しています

小麦の甘さや香りを最大限に引き出すイースト(ルヴュール/levure)の良さを最大限に活かした、スタンダードなバゲットのスペシャリストとして有名な仁瓶さんですが

一方で、小麦やライ麦から起こす、自家培養の酵母の種(ルヴァン/levain)の発酵や熟成を活かした、独特の酸味と旨みを持つパンオルヴァン(Pain au levain)も、氏のスペシャリテでした

この両方の良さを併せ持つのが、イーストとルヴァンを併用するパンドロデヴといえます

実は、私がドンクさんに在籍していた頃は、まだパンドロデヴはごく一部の人の間でだけ知られていた存在でした

私が習ったのは、まだこれからパンドロデヴを広めていく種蒔きを、氏が直接指導できる範囲で伝え始めた、そんな頃でした

だから、私も作り方を直接教えていただいたものの、実際に現場で焼く機会は殆ど無かったんです

その後、私は退社、自身の店を持ち、そこでパンドロデヴをスペシャリテ、いや、もっと安直だったな、いわゆる推しパンとして焼き始めました

だけど、ほんのさわりを習っただけ過ぎなかった事と、その本質を全く理解していなかった事、そして目先の売上を追いかけていた事から

あまりにも勝手なアレンジを施して、かけ離れた商品として販売していました

それは、私の中で大きな悔いとなっています

そこから紆余曲折あり(先のクラウドファンディングでもこの流れは書きましたが)

お店の体制が今の状態に近くなっても、まだなお、バゲットやパンドロデヴについて理解していないことの方が多かった

バゲットやパンドロデヴについて、真剣に理解をしたいと思うようになったのは、この一年と少し前

余りにも遠回りでしたが、独立からそれまでの11年ほどは、今に至る為に必要な期間でした

この一年と少しの間で、本当に沢山の情報に触れ、食べ、考え、悩み、整理してきました

それでも今なお、本質が理解できたとか、それに相応しいものが焼けているわけでは決して無いなと思ってます

仁瓶さんやドンクさんの過去のパンや資料を眺めていても、明らかに変化をしてきているのがわかります

だからずっとそこを追いかけるのも、もしかしたら違うのかも、なんて思っている自分も、今いる

パンは、パンだけを見ていてもわからないんですよね

パンだけじゃ無くて、暮らしも文化も人との関わりも、そして自分が歳をとっていくことも

いろんなことを通して、パンを焼いていく中で、その時思う姿をカタチにしていく努力ができていれば

それが正解なんじゃないかなって思う

今、そんなところです

先だって亡くなられた仁瓶利夫さん

まだ何処か信じられなくて

バゲットやロデブと向き合う中で、恩返しをしたいなと思ってます

#パンドロデヴ
#仁瓶利夫
#ドンク
#和歌山パン屋

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