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幸せの花束を君に

『見て見て!クジラいる!!』
「ほんとだ、すげ」

君と出会ったのは、15年前の中学校の入学式だった。
あの日の君はどんな感じだったっけ、よく覚えてないや。
人生ってどうなるか分からないよね、ほんとに。


『石田くんだっけ、元気ない?大丈夫?』

にぱーと笑う君。君のその笑顔は、僕の人生を変えたのかもしれない。内気で弱かった僕を。

「石田○○です、よろしくお願いします」
『私は丹生明里!よろしくね!!』
○「...」
明『え!?』
○「な、なんですか...?」
明『終わり!?もうお話終わりなの!?』
○「えぇ...」
明『明里と話そうよ!小学校どこ?』
○「△小学校、群馬県から引っ越してきたんです」
明『そうなんだ〜!明里見たことないからびっくりしたよ〜』
○「...」
明『これから1年間仲良くしてね〜!』
○「は、はぁ...」

君と出会った時の僕への第一印象は最悪だったと思う。僕はこの時もう話さないだろうなと思っていた。

でも、君は毎朝すごい笑顔で『おはよう!』って言ってくれたり、休み時間に話しかけてくれたりしてくれた。

それからなのかな、君には徐々に僕というものを見せれるようになったのは。

多分クラスの皆は君が僕に話しかけてるのを同情してあげてると思ってるのだろう。僕も初めはそう思っていた。

その考えを変えたのはあの日、君と出会って初めてのクリスマスの日。
その一週間前の帰り道のこと。僕と明里は家が近かったからか、一緒に帰っていた。

明『ねね!○○君ってクリスマス暇?』
○「まぁ、暇だけど」
僕はそう返すと、君はにぱーと笑い
明『その日、よかったらお出かけしない?』
○「え?」
明『○○くんとお出かけしてみたいなって思って』
僕は混乱した、明里とは週1のペースで家の近くで遊ぶが、遠くには行ったことがない。
何故、このタイミングに?
断ろうかと思ったが、理由も考えつかなかったので
○「いいよ、どこ行くの?」
いいよと言ってしまった。これが後々良い判断になるとはこの時は微塵も思っていなかった。
明『やったぁ!場所は内緒!』
後でLINEするね!と言い、君は家に入っていった。

そして迎えたクリスマス当日
明里と待ち合わせしたのは、最寄り駅で昼の1時。
○「ちょっと早めに着きすぎたかも」
待ち合わせの30分前に着いた僕は携帯ゲームをしようとしていた。しようと思ってると
『○○くん!お待たせ〜!』
声が聞こえるので振り返ると、そこにはモコモコの服を身にまとった明里がいた。
○「お待たせって、まだ30分も前だよ」
明『○○くんと会うのが楽しみで早くつきすぎちゃった!』
○「そっか、それでどこに行くの?」
明『東京!!』
○「は?」
僕は開いた口が塞がらなかった。東京?何を馬鹿なこと言ってるんだと思った。
東京にはここから各駅で3時間くらいかかる。
僕は嫌な予感がした。
明『特急に乗っていこ!』
そのまさかだった。特急を使えば2時間かからないくらいで着くので、特急を使うとか言い出さないだろうなとは思ってたが、当たってしまった。

さすがにここまで来て断ることの出来なかった僕は特急券を買い、君と特急に乗り東京を目指した。
電車の中では窓を覗いて"わぁ..."と目を輝かせる明里がいた。いつの間にか、僕は彼女に見とれていた。

〜間もなく、東京〜
車内アナウンスが流れると明里は直ぐに僕に向かって
明『これ降りたら山手線に乗ろ!』
と言ってきた。山手線?渋谷にでも行くのだろうか。
中学一年生の男女が行く場所では無いのでは?とは思っていたが、ここまで来たら行く以外の選択肢はないのだと思い
○「わかった」
とだけ返事をして、明里と電車を降りた。

ここからは早かった。
渋谷へ行き、上野、池袋と回り、気付けば6時になっていた。
この時期、6時でも真っ暗になってしまう。
でも、東京は明るかった。ネオンと言えばいいのだろうか、ビルが連なりビルの明かりによってとても明るい。そんな光景に僕達は目を奪われている中、先に口を開いたのは君の方だった。
明『○○くん、代々木行かない?』
○「いいよ」
この会話をして、僕達は代々木に向かった。
改札を出て、少し歩くと僕達はまたも目を奪われることになる。

○・明「うぉ『わぁ...!』」
そこに広がるのは青に光る一本道、通称"青の洞窟"。
明『綺麗...』
○「ほんとに綺麗だ」
明『ねぇ、○○くん』
○「ん、どうしたの?」
明『私がなんでここに誘ったか、わかる...?』
○「え、来たかったから?」
明『わからないんだ、明里勇気出したのになぁ』
○「教えてよ、知りたい」
明『○○くんのことが好きだからって言ったら嫌?』
○「え...?」
明『だーかーら!○○くんのことが好きなの!明里は!』
○「...」
明『明里は○○くんのことが好きで、2人で来たかったの!』
○「...」
明『○○くん...?』
○「そう、なんだ...」

君の口から、想像もしてなかった言葉が出てきてなんとも言えない気持ちになった。
僕は思った。最近、明里が誰かと話してるのを見ると胸が苦しくなる、特に男子と話してる時に。
これってなんだろうとずっと思ってた。
"恋"なんだ。気づかないうちに僕は明里に恋をしてた。そんな明里が僕のことを好きと言ってくれている。
その時、何かが聞こえた気がした。
"こういう時くらい、勇気出したらいいんじゃない?内気な自分を卒業しなよ"と。
そうだ、僕は明里が好きだ。明里の彼氏になれるかもしれないチャンスが今、起こっている。
好きな人に想いを伝えることなんて、これから先あるか分からない。だからこそ、今日言わないと。
僕は覚悟を決めた。

○「明里」
明『なぁに?』
○「僕も、明里のことが好き。だから...」
明『えっっ...』
○「僕の彼女になってください」

やっと言えた。その時の明里の顔を僕は今でも覚えている。

ぱぁっと明るくなった明里は僕に
明『明里の彼氏になってくれるの?』
と聞いてきた。僕は恥ずかしくなった、いつかの小説で読んだあるものを思い出した。
キスで応えたという文章を。
僕は明里の唇を奪った。

○「ねぇ、これが答え。僕の気持ち」
明『嬉しい』

明里の顔は赤く染まっていた。
中学一年生が生意気だなんて言わせない、恋愛は年齢関係ないんだ。
僕は明里に手を差し伸べた。

○「手、繋ご?」

その時の明里の顔は過去一の笑顔で『うんっ!』と頷き、手を繋ぎ歩き出した。

これが僕たちの出会い、そして付き合い始め。

その後の僕らは中学を卒業し、同じ高校へ行き、大学は違ったものの同棲を始めた。

そして、今に至る。


明『見て見て!クジラいる!!』
○「ほんとだ、すげ」

僕達は、旅行に来ていた。
クルーズツアーのため、船にいる。
今日僕は、中学一年生の時を越えようとしていた。

○「なぁ、明里?」
明『なぁに?』

トコトコと来た君は、あの頃を彷彿とさせる。
今は、あの時と違う。今度は僕から言わなくちゃ。

小さな箱を開けて、僕は君に言った。

○「これからもさ、明里と人生を歩んでいきたい。何があっても、明里を支えたいんだ。だから、僕と結婚してください。」

明里は何も言わなかった。僕は失敗したかと思った。
だが、明里の目からは涙が流れていた。

○「明里...?」
明『ようやく聞けた...その言葉...』
○「え?」
明『私の事をこれからもよろしくね?○○』

僕は変われた。君のおかげでここまできた。
付き合ってる途中から気づいてたんだ、君に、いや、明里に、、、、

幸せの花束を君に渡すのは僕なんだ。って

END

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