[連載小説]episode.2 Intimacy and Integrity
矛盾しているようだが、予感していたけれど予想外、というのが一番しっくりくる説明のような気がした。
川瀬さんと会った時、リコはいずれこうなるだろうと思っていた。この人なら、リコをわかってくれると思った。リコもまた、この人を理解できると思った。
考えとか意見とか、理屈じゃなくてもっとーすっと流れ込んでくるみたいに、もっと深いところで共鳴するみたいに、つながれる気がしたのだ。
そしてそれはきっと心だけじゃないと。気持ちだけじゃなくて、二人の身体はきっとぴったり合うだろうと思った。パズルのピースみたいにしっくり馴染んで、ぴったりくっついて溶け合って、境目が曖昧になるくらいに。皮膚がーなくなるみたいに。
根拠のない確信があった。だけどそれでも川瀬さんがリコの気持ちに応えたのは予想外だったのだ。
気づくとドアの前に立っていて、リコはもう一度深呼吸をする。インターホンを押してから、重厚なブラウンのドアが開くまでに一世紀が過ぎた気がした。
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