1分小説

【掌編小説】探偵の才能

職業柄、胡散臭い連中には慣れていたー。

その男、荒城国之の職業は、探偵だった。
荒城は調査依頼の一環で、都心部のある地域にここのところよく出向いていた。

再開発が進んだこの街は、行くたびに店構えが変わっている。
よくもまあこの短期間のうちに古い馴染みの店が潰れ、新しい店やサービスが生まれるものだ。荒城は雑踏を歩きながら、人々の栄衰について思いを馳せた。
メインストリートから一本外れた裏通りを歩

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書きあぐねている人のための小説入門

ブックオフで『書きあぐねている人のための小説入門』という文庫本を買った。

 読んでいたら、
「とりあえず書きあぐねている場合じゃないからさっさと紙に書け」と言われた。

次の日、僕はその文庫本をブックオフに売った。
大丈夫、元は取れた。きっと名著に違いない。

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【1分小説】Brand new Account

湯沢茜は、時々、素の自分とVtuber「木南アカ」の境界線が分からなくなることがあった。

都内のマンションの一室。スタジオ、といってしまえば格好がつくが、それは自宅の寝室を防音仕様にした簡易な作りだった。

事務所の人からはもっと広くて、撮影に専念できるような物件に引っ越したら、なんて言われているけど、やっぱり今の場所が落ち着くし、裸一貫で金を稼いでいる感じが心地良くて、アカウントを作った5年

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アイロン掛けと給与計算

「アイロン掛けと給与計算は似ている」

給与計算がどんな仕事か聞かれたら
ワイシャツにアイロンを掛けるようなものと答えるようにしている

単調だけど 一定のリズムがあり
ひとつずつ物事をあるべきかたちに
もしくはあるべき場所に整えていく

いくつかの工程があり
決して一気にぱりっと綺麗にならないけれど
時間を掛けて 丁寧に折り目を正していく

ボタンのないエレベーターの中で
左右のポケット

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◆1分で読める小説◆ 改宗

宗教を変更することは、許されるのだろうか?
この国に来るまでは、そのようなことは、全く考えなかった。
むしろこれまでは、多くの我々の先人の方々が改宗したことを聞いて、信じられない思いをしていたものだ。
そう、この国に来るまでは。

我々は、生活の全て、いや、人生の全てが、その戒律の下にある。
つまり、厳しい戒律がないと、社会の安全が保てないのだ。
戒律の一部を紹介すると、
 ・殺してはならない
 

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ありがとう! ^ - ^
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【1分小説】胎動

目の見えない暗闇の中でも、羊水に浸かったままでも、母の身に危機が迫っていることは直感で分かった。

渋滞による寝不足のためだろう。
居眠り運転の中型トラックがスピードを出したまま横断歩道に近づいてくる気配がした。

父と母はゆっくりと横断歩道を渡ろうとしている。名も無き胎児は、頭を抱えるようにして、ぐっと身体に力を込める。

間に合え。間に合え。

ポコポコ    ぐにゅー    とんとん
ぷく

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【一分連載】タクシーを止めるな!第三話「見えてこない謎」

第一、二話はこちら

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お乗せして10分以上は経っただろうか、
すでに新宿も目と鼻の先まで来ている。
男は何度も「止めるな」と言っていたが、ここからは進むことが困難になる。
明治通りは、新宿が近づく場所で渋滞することが多い。
普段ならそんな予想するどころか、新宿に行ってほしいと聞いただけで渋滞を思い起こせるほど通りたいとは思えない場所だが、今回はすっかり忘れてしまっていた。

あの急ブレー

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いつか、僕のタクシーに乗ることがあったらその時は。
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下着どろぼう 476

2019/09/15 23:19 ブラジャーとショーツの泥棒
 
  ママの仕事は、ブラジャーの製品開発の仕事だ。どんな可愛いブラジャーが売れるかの、かっこよく言えば「アパレル関係」である。天使のブラ、ユニクロのワイヤレスブラ、コープ(生協)のブラ、ワコールのブラ、、、なんでもかんでもママは持っている。
  
  はだかブラというものまであって、付けている感覚もないブラジャーもある。ファッションセ

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牛丼のふくろのおふくろ

2019/09/15 牛丼のふくろのおふくろ
 ぼくのお父ちゃんは、ギャンブラーである。毎日、競馬に行っていて、ろくに働いたりしてない。ぼくが小学5年生になって、初めてお母ちゃんがくれた「おこづかいの千円」も競馬に使われてしまった。

お母ちゃん、なぜ、あんな男性と結婚して、ぼくをがんばって育ててくれているの?お父ちゃんは、2~3週間くらいも平気で家に帰ってこない。

お母ちゃんは、ぼくが小さく子

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誰かわたしを知りませんか?

2019/09/12 23:06 誰かわたしを知りませんか
 誰かわたしを知りませんか?
わたしは遠い国からやってきたのだと思うのですが、ここは日本というところの東京ですよね?たくさんの高層ビルとたくさんの駅。
たくさんの夢を持ってきたアーティストやミュージシャン、お金を儲けようとしたひとたち、大学で花を咲かせたい若い女の子。
 わたしは一体、だれなのでしょう。
眠ってばかりいたので、目が覚めたら

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